全農とデュポンがウンカ専用剤を共同開発 平成30年の販売めざす2013年2月15日
JA全農とデュポン社は2月14日に共同記者会見を開き、新規水稲用殺虫剤を共同開発することを発表した。
◆"最強"の箱処理剤をめざす
![共同開発に向けて握手する神出専務(左)と田中社長](https://www.jacom.or.jp/agribiz/images/agur1302151101.jpg)
新剤は吸汁害に加えてウイルス病などを媒介するウンカ類専用の殺虫剤だ。ウンカ類は西日本で抵抗性を有するものが確認され、大きな被害が出ている。さらに関東や新潟県でもウンカ注意報が発令されるなど東日本への被害が懸念されている。
JAの営農指導員など生産現場から「ウンカに効果のある剤を出してほしい」というニーズを受けたJA全農が、特許情報や開発薬剤などを調査した結果、デュポンが保有している化合物に着目。日本国内メーカーとの普及・販売でのパートナーシップの維持・発展をめざす同社との思惑が一致し、新剤を共同開発することが決まった。
JA全農が新剤開発に踏み切ったのは、このままでは水稲栽培に深刻な影響をもたらすからだ。
会見でJA全農の神出元一代表理事専務は新剤について、「JA全農の農薬事業としては、近年では、水稲用除草剤のAVH-301、果樹用殺虫剤のスプラサイドに続く、第3弾の大型品目にしたい」との目標を掲げるとともに、デュポン社が持つ殺虫剤や殺菌剤と組み合わせることで「最強の育苗箱処理剤の創成をめざす」と決意表明した。
デュポンの田中能之代表取締役社長は、「今回の共同開発を通じて、日本の、ひいては世界の食糧の安定供給に向けて貢献したい」との期待を述べた。
◆抵抗性ウンカの被害が拡大
ウンカ類は、主にベトナムで発生し偏西風で中国南部に移動、さらに偏西風に乗って日本に飛来してくる害虫だ。
米を吸汁し害を与えるほか、イネ南方黒すじ萎縮病やイネ縞葉枯病などウイルスによる伝染病を媒介するため、米の重要害虫の一つだ。
現在、国内ではトビイロウンカ、セジロウンカ、ヒメトビウンカの3種類が確認されているが、それぞれ異なるウイルスを媒介し、ヒメトビイロウンカは日本で越冬もできる。3種類ともそれぞれ異なる薬剤への抵抗性を持っていることから、すべてのウンカ類に対する特効薬が切望されていた。
デュポン社が保持している化合物は、これまでのウンカ剤とはまったく形質が異なる独特の殺虫スペクトラムがあり、すべてのウンカ類に対して卓効を示すという。また、長期の残効があり、水稲への安全性も高いことから、育苗箱処理剤として高い効果を発揮することが期待されている。
JA全農の上園孝雄肥料農薬部長は新剤の目標普及面積について、「登録までの4、5年間でウンカの被害がどれほど広がるか予測できない部分はある」と前置きした上で、「最大で40万haほどの需要があるだろう」と見ている。
今年からZDI-2501のコード名で委託試験をスタートし、26年末には農薬登録を申請、30年からの製品販売をめざす。
なお、この共同開発の資金の一部は全農の「農薬開発積立金」が使われる予定だ。
(写真)
共同開発に向けて握手する神出専務(左)と田中社長
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