戦略の継続性、長期的投資が可能に シンジェンタがChemChinaによる買収で2016年2月16日
中国の大手化学企業・ChemChina(中国化工集団)の買収提案をシンジェンタ(本社・スイス)取締役会が受け入れたことについて、2月15日、シンジェンタジャパン(株)の篠原聡明社長が同社本社で記者会見を行った。
会見の冒頭で篠原社長は、今回の買収金額は時価総額(スイス銀行ウェッブサイトによる2月1日の為替レート)430億ドル(約5兆3000億円)となり、中国企業による最大の買収金額であること。買収の成立には、株主の2/3の合意と規制当局の承認が条件となると説明した。
規制当局の承認で一番問題となりそうなのは米国における国家安全保障上の問題だが、篠原社長によれば「米国の安全保障にかかわることはなく、大きな問題はないと認識している」という。したがって株式公開買付が順調に進めば、今年中には買収が完了する予定だ。
シンジェンタがChemChina買収提案を受け入れた理由として、まず、ChemChinaが「シンジェンタの優れたポートフォリオ、市場での地位および社員の質を認めた企業評価」をしたことをあげた。
この背景には、昨年モンサント社による買収問題があり不調となっていることがある。モンサント社とは、重複する製品群や市場があり、買収された場合は重複する製品の整理や売却が必要になるが、ChemChinaの場合には「そうした問題がない」。さらに重複する製品を開発・製造・販売しているために過剰人員が生じ「社員の削減」が経営的には必要になり、現在のシンジェンタ社員の雇用が守れない可能性があるが、今回の買収ではそうした懸念がないという。
二つ目の大きな理由は、農薬などの開発には10年以上の長期的な投資が必要だが、最近は世界的に経営環境が厳しくなってきている。このため「ものいう株主」からの意見が強くなり、長期的な戦略の継続が難しくなったりするが、今回の買収によってシンジェンタは「一つの株主になり、非公開」なので「戦略の継続性と革新的技術に対する長期的投資が可能になる」ことだ。
三つ目の理由は「新興市場、特に中国におけるさらなる拡大が可能になる」ことがあげられている。シンジェンタの技術を活用することで、中国農業の近代化に貢献できる。また世界の食料・環境問題にも貢献できるということだ。
また、「高い企業ガバナンス基準の維持:数年内の新規株式公開を視野」にいれていることを四つ目の理由としてあげている。
そのうえで「シンジェンタはスイスに本社を置くグローバル企業として今後も事業運営を行う」ことになり、「シンジェンタがシンジェンタとして、継続的な戦略で従来通りのビジネス展開ができる」と篠原社長は語った。
さらにシンジェンタジャパンとして、昨年話題となった「花と野菜の種子の売却」が今回の買収でなくなり、「種子事業も継続してできるようになり喜ばしい」とも語った。
中国企業による買収ということで、大きな話題となったが、生産者サイドからみれば「大きな変化はなく、従来通り」ということのようだ。
(写真)記者会見する篠原社長
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