販売量増加と販売価格上昇 第4四半期は堅調 2020年業績 BASF2021年3月3日
ドイツのBASF本社は2月26日、2020年の業績を発表。販売量の増加と販売価格の上昇で売上高は610億~640億ユーロとなる見通しで第4四半期は堅調を維持している。
BASFグループ2020年第4四半期の売上高は、前年同期比8%増の159億ユーロ。販売量は7%増加した。販売価格も7%上昇したが、主にサーフェステクノロジー事業セグメント、アグロソリューション事業セグメント、マテリアル事業セグメントの貢献によるもの。Solvay社からのポリアミド事業の買収によるポートフォリオの変更でプラス効果が1%、売上高に対する為替のマイナス効果が7%、それぞれ見られた。
第4四半期の特別項目控除前EBITDAは、前年同期比15%増の21億ユーロ。EBITDAは、前年同期の16億ユーロに対し、20億ユーロとなった。特別項目控除前営業利益は、前年同期比32%増の11億ユーロで主に、マテリアル事業セグメント、ケミカル事業セグメント、インダストリアル・ソリューション事業セグメントの大幅増益によるもの。その他の事業セグメントと「その他」に分類される事業の貢献減少を補ってあまりある効果があった。また、EBIT(営業利益)に含まれる特別項目は、前年同期のマイナス2億6300万ユーロに対し、マイナス1億8100万ユーロで、EBITは61%増の9億3200万ユーロ。
BASF取締役会会長Dr.マーティン・ブルーダーミュラーは「2020年は厳しい事業年度だったが、好調な状態で 1年を締めくくることができた」と述べ、2020年通期の特別項目控除前営業利益は、10月に発表した予測を上回り、アナリストのコンセンサスと反する結果となった。また、「2020年第4四半期には、すべての地域で販売量が増加。グレーターチャイナでは、販売量が引き続き2桁の伸びを見せている。第4四半期には、ほぼすべての事業セグメントで販売量が増加した」と話している。
2020年通期のBASFグループの売上高と利益
2020年通期、BASFグループの売上高は591億と、ほぼ安定した状態を維持。為替のマイナス効果や販売量減少の影響は、販売価格の上昇とポートフォリオ変更のプラス効果で相殺した。
特別項目控除前EBITDAは前年比11%減の74億ユーロ。EBITDAは前年の82億ユーロに対し、65億ユーロだった。2020年の特別項目控除前営業利益は前年比23%減の36億ユーロ。コロナ禍の影響を受け、インダストリアル・ソリューション事業セグメントを除く全事業セグメントで減益となった。
インダストリアル・ソリューション事業セグメントでは、2019年と同水準の特別項目控除前営業利益を達成したが、ケミカル事業セグメント、マテリアル事業セグメントにおける川上事業からの貢献が大幅に減少したことで、BASFグループ全体としては減益。とりわけ自動車産業からの大幅な需要減少が、サーフェステクノロジー事業セグメントの利益を圧迫した。
2020年のEBITは前年の42億ユーロから減少し、マイナス1億9100万ユーロ。EBITに含まれる特別項目は、前年のマイナス4億4200万ユーロに対し、マイナス 38億ユーロ。この特別費用の増加は主に、2020年第3四半期に現金に影響を及ぼさない、有形および無形固定資産の減損処理を行ったことによるもの。
2020年通年のBASFグループのキャッシュフロー
営業活動によるキャッシュフローは、前年の75億ユーロに対して54億ユーロ。 最高財務責任者のDr.ハンス‐ウルリッヒ・エンゲル氏は、「コロナ禍が当社事業にマイナスの影響を及ぼすなか、前年の37億ユーロから減少したものの、2020年は23億ユーロという堅調なフリー・キャッシュフローを確保できた」と述べている。この減少は主に、純利益の減少と正味運転資本にかかる現金の増加によるもの。無形および有形固定資産支払額の減少が、これを一部相殺するかたちとなった。
非財務面での目標の達成
同社は2030年までにカーボンニュートラルな成長を実現し、生産拠点やエネルギー購入からの温室効果ガスの排出を2018年の水準で安定的に維持しながら、生産量の増加をめざしている。
2018年の排出量は、CO2換算で2190万トン。2020年には、CO2換算で2080万トンでこれは、前年比では3.5%増だった。エネルギー効率向上やプロセス最適化などの対策、生産量の減少により、排出量は減少したが、2020年1月にSolvay社から買収したポリアミド事業を統合したことで、相殺された。
さらに同社は、2025年までにバリューチェーンにおいてアクセラレーター製品(サステナビリティに大きく貢献すると判断された製品群)で220億ユーロの売上高達成を目指している。これらの2020年の売上高は167億ユーロで、前年の売上高150億ユーロから11%増。この増収は、サーフェステクノロジー事業セグメント、およびアグロソリューション事業セグメントで、アクセラレーター製品の売上高が増加したことによる。
サステナビリティの分野における地位をさらに強化
カーボンマネジメント・プログラムの一環として、BASFはメタン熱分解反応器を使用したパイロットプラントを始動。ブルーダーミュラー氏は「これは二酸化炭素の排出を伴わない、水素の大量生産に向けた重要な一歩。中期的には水電解に代わる、よりエネルギー効率の高い生産手段となる」と述べている。
テキサス州にある同社の2拠点(フリーポートとパサデナ)では、再生可能エネルギーの利用が可能になり、世界の19拠点を、部分的または全面的に再生可能エネルギーで稼働させている。また、サーキュラー・エコノミープログラムの一環として、ケミカルリサイクルされた原料を用いた「Ccycled」製品の商業生産を開始。今年、生産量はさらに増加する予定。
BASFグループの2021年の見通し
同社は、コロナ禍による急激な景気後退を経て、2021年は世界経済が回復すると期待しているが、今後も非常に不透明な状況が続くと見ている。予測には世界のサプライチェーンが再び大きな混乱に陥るリスクや、それに伴う経済全体への悪影響を幅広く考慮に含めたが、ブルーダーミュラーは「そのようなマイナスの影響がなければ、利益は予測範囲の上端まで達する」と確信している。
顧客産業でも自動車産業の成長を想定しており、世界経済は2020年比で4.3%の大幅な成長が見込まれる。世界の化学品生産は4.4%増と、前年を大幅に上回る見通し。平均ブレント原油価格は、1バレル50ドル、ユーロ/ドルの平均為替レートは1ユーロ=1.18ドルを予測している。
こうした想定内容に基づき、BASFは売上高目標を610億~640億ユーロとし、同グループの特別項目控除前営業利益は、41億~50億ユーロの見込み。投下資本利益率(ROCE)は8.0%~9.2 %と予想している。
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