農業者の負担なく防災強化 土地改良法改正案2022年2月15日
政府は「土地改良法の一部を改正する法律案」を2月4日に閣議決定して国会に提出した。ため池など農業用用排水施設の豪雨対策を迅速に行う必要があると国が判断した場合は、農家の同意と負担なく防災工事を実施できるなどの改正をする。
今回の改正は、頻発する自然災害に対して土地改良施設の安全性の向上を図る目的のほか、担い手への農用地の集積・集約化を加速させることや土地改良区の組織変更制度も創設する。
ため池などの強化といった防災事業は現行制度では農業者からの申請と同意に基づいて実施され、農業者の一定の負担もある。
近年、豪雨災害が頻発化しており、平成30年7月豪雨では広島県など6府県で32か所のため池が決壊した。また令和元年の台風19号では長野県千曲川の氾濫など多数の農地や農業用施設が被災した。
こうした事態を受けて、緊急的な防災事業を迅速に実施する必要が高まってきた。
そのため国と地方公共団体が自らの判断でため池などの脆弱性を評価し、豪雨対策など防災工事が必要と判断した場合は、農業者からの申請、同意と費用負担を求めずに工事を実施できるようする。
農地中間管理機構の事業についても、同機構が貸借権などを取得した一定のまとまりのある農地を対象に、農業者の費用負担を求めずに区画整理や農用地造成を行う現行の事業を拡充し、暗渠を入れた排水改良や、農業用道路の拡幅などの整備を実施できるよう改正する。これによって担い手への農地の集積・集約化を加速させる。
事業採択の用件は▽事業施行地域のすべての農用地について農地中間管理権を設定、▽一定規模以上の農地で面的なまとまりがある、▽農地中間管理権の設定期間が事業開始時から相当程度ある、▽事業実施により担い手への農用地の集団化が相当程度図られること、▽事業実施地域の収益性が相当程度向上すること
としている。
土地改良事業団体連合会の業務見直しも行う。改正によって全国土地改良事業団体連合会が、長期借入金・債券発行で資金を調達し土地改良区へ交付できるようにするとともに、土地改良区から委託を受けて土地改良事業を行うこともできるようにする。
土地改良には土地改良区等が毎年一定額を拠出しているが、資金積み立てを待たずに任意の時期に機動的に設備を整備できるように法改正する。
背景には、標準耐用年数を超えた農業水利施設が増えて劣化が進行しており、突発的な事故のリスクが高まっていることがある。また、自然災害に対する防災・減災対策を強化して地域の安全を確保する目的もある。
そのほか、解散を予定している土地改良区が適正な施設の維持管理などの条件のもとで、一般社団法人または許可地縁団体に組織変更することができる仕組みも創設する。
土地改良区は、土地改良事業の事業参加者を組合員として当然加入させ、必要な場合は組合員から負担金の強制徴収するなど強制力を持つが、事業範囲は土地改良事業とそれに付帯する事業に限定されている。
一方で法人化が進み、土地改良区の組合員数が一定数を下回っていたり、また、管理する施設が小規模で管理にかかる労力が小さく土地改良区の機能を活用する必要がない場合もある。
こうした実態もあることをふまえ、小規模な土地改良施設のみを管理している場合で、組織を変更しても管理体制が確保される場合に法人形態を変更することができるようにする。
たとえば、小水力発電の売電収入を地域の共同施設の維持費に当てる事業のほかに、集落のために必要な多様な事業を行うこともできるようになる。土地改良区の組合員以外の地域住民も水路清掃に参加している地域では認可地縁団体となることで法人として集落の共同活動に取り組むことができるようになる。
認可地縁団体とは、地方自治法に規定される地縁に基づいてつくられた自治会などの団体で、市の許可・告示を受けることで法人格を取得し、団体名義での不動産登記ができる。
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