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水田除草「楽して楽しく」 拡散型製剤「楽粒®」登場 北興化学工業2022年3月22日

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1haの大区画ほ場でも、水田に入らず、けい畔から散布するだけで高い除草効果が得られる新しい拡散型製剤「サキガケ®楽粒®」を北興化学工業株式会社が開発した。農業労働力不足が深刻になるなか、同剤は農薬散布の省力化への貢献が期待できる。2022年度は全国各地で試験を実施する。開発の経緯や商品の特徴などを同社の担当者に聞いた。

ゆっくり溶けて遠くへ

農家の高齢化とともに、地域の担い手に農地が預けられ、一方では大規模化も進行している。1ha区画に基盤整備された水田地帯も多く、担い手にとって農薬散布は大きな労力を必要とする。

水稲除草剤は粒剤、フロアブル剤、ジャンボ剤の三つの剤型が主流になっているが、広いほ場では中に入って散布する必要がある。

秋山製剤研究部長秋山製剤研究部長

同社の開発研究所製剤研究部の秋山正樹部長は「散布で田んぼの中に入るだけでも大変な重労働、そこに機材を背負って歩くことでさらに苦労をする。労力をいかに軽減できるか、私たちは1haのほ場でも中に入らなくて散布できる水稲除草剤の開発をめざしました」と話す。

軽く扱いやすく省力化を"形"に

そのためには製剤の拡散力をアップさせることが課題となった。従来のジャンボ剤にも拡散力はあるため、それを指標にして、さらに成分をほ場の隅々にまで行き渡らせる拡散性を得るための研究に取り組んだ。

「水に浮かびやすく、広がりやすくするためには、どんな粒の形がいいのか、平らが良いのか、それとも細長いものがいいのかなど、様々な試行錯誤を続けました」と話すのは開発を担当した入波平治副主任研究員だ。

入波平副主任研究員入波平副主任研究員

製剤のカタチだけではなく、水に漂わせるため界面活性剤を含めて補助剤から見直し、試作と試験を繰り返した。その結果分かったことは「粒形を不ぞろいにすると拡散力が強くなる」ことや「粒が崩壊するまでの時間が長いほど、遠くまで拡散する」などだった。

1キロ粒剤はムラが出ないように均一に粒を揃えて製剤されている。散布後は粒が田面まで沈み、その場で粒が溶けていく。そのため散布は均一にまくことが求められる。

また、ジャンボ剤は成分がきれいに溶けていく特徴はあるものの、普通は10aあたり10個を水田に均一に投げ込む必要がある。

試行錯誤の結果、開発された「楽粒」は1キロ粒剤より粒は数倍大きく、水面で浮遊するようにかさも大きく、さらに粒形は不ぞろいとなっている。

水田に散布すると瞬時に界面活性剤が全体に広がり、その広がりに乗り有効成分も拡散する。散布された楽粒は水面に浮き、徐々に溶けて約30分で溶解する。ゆっくり溶けることで成分を遠くへ、自由に満遍なく拡散させる。水田を吹き抜ける風や水の流れなども利用して広がっていく。

永遠のテーマとなっていた均一に散布する必要がなくなり、広いほ場では中に入る必要がなくなった。

「持続力があって成分を遠くまで運んでいく。楽粒は、たとえればマラソンランナーのようなものです」と技術普及担当する小野文彦技術チームマネージャーは話す。

小野チームマネージャー小野チームマネージャー

3成分で安定した除草効果

新規の拡散型製剤「楽粒」をもとに製造された水稲一発処理除草剤が「サキガケ楽粒」だ。

ノビエに長期残効を示すイプフェンカルバゾン、広葉雑草に高い効果のあるテフリルトリオン、新規骨格を有する合成オーキシンでノビエ、広葉雑草、一部のカヤツリグサ科雑草に高い効果を発揮するフロルピラウキシフェンベンジルの3成分をバランスよく配合した。1年生雑草から広葉雑草まで幅広い雑草に高い効果を示す。ノビエのほか、抵抗性雑草(ホタルイ、コナギ、アゼナ類)にも高い効果を示す。オモダカ、ミズアオイ、イボクサなど問題雑草の対策剤としても有効だという。

10a当たり250g処理となっており、省力化が図られている。

スマート農業にも対応

拡散性を生かしたさまざまな散布も可能だ。水田に入らずけい畔から袋のまま散布することでも効果が得られるため特別な器具は必要としない。もちろんオイルジョッキ散布やひしゃく散布、さらに現在使用している動力散布機や、ラジコンボート、ドローン散布にも対応する。

省力化という点では水口施用や、ほ場の一辺だけでの散布でも効果があることが示されている。同社の試験では、1haのほ場で風上側のけい畔から一辺処理したところ、48時間後には成分がほ場全体に拡散したことが確認されている。

新出営業部長新出営業部長

新出守営業部長は2022年度は「全国各地で試験をして評価をしてもらう年にしたい。省力化に貢献することは必ず分かってもらえると思っています」と話す。楽粒の楽には「楽して、楽しく」の意味を込めたという。省力化への貢献と同時に、国の「みどりの食料システム戦略」で掲げた持続可能な食料生産をイノベーションで実現するという課題にも貢献する新技術と言えそうだ。

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