真菌の二次代謝物に殺虫作用 環境に優しい昆虫制御型農薬へ期待 摂南大学2023年10月3日
摂南大学農学部応用生物科学科の加藤直樹准教授と筑波大学生存ダイナミクス研究センターの丹羽隆介教授、東京薬科大学生命科学部分子生命科学科の藤川雄太准教授、近畿大学農学部応用生命化学科の松田一彦教授、理化学研究所の長田裕之ユニットリーダー、高橋俊二ユニットリーダーらの共同研究グループは、真菌(カビ)の生産する二次代謝物に昆虫の発育に必須な酵素を阻害する活性があることを発見した。環境に優しい昆虫制御型の農薬開発に役立つと期待される。
デカリン含有テトラミン酸化合物の立体配置と生物活性の相関
真菌の生産するデカリン含有テトラミン酸化合物群は、テトラミン酸部位やデカリン骨格の置換基に加え、デカリンの立体配置により産み出される構造多様性を持つ。同化合物群は多様な生物活性が報告されているが、デカリンの立体配置に関する構造活性相関研究は、その収集や合成の困難さから、これまでほとんど行なわれていない。
同研究グループは、デカリン合成酵素遺伝子等を欠失・改変した遺伝子改変糸状菌を利用し、本来の生合成産物とはデカリンの立体配置が異なった誘導体の取得に成功。同研究では、収集したデカリン化合物を用いて、生物活性とデカリンの立体配置との相関について検討した。がん細胞に対する増殖阻害活性、抗菌活性、抗真菌活性、抗マラリア活性とミトコンドリア呼吸鎖阻害活性について評価したところ、デカリンの立体配置が変化することで、生物活性の強弱が変化することが分かった。
次に、デカリンの立体配置が異なるこれらの化合物群は、既知の生物活性の評価だけではなく、これまで検証されていなかった生物活性を探すのにも役立つのではないかと考え、同化合物群で報告のない昆虫酵素に対する阻害活性を検討した。デカリン骨格とエクジステロイドの構造類似性から、エクジステロイド生合成に関わるグルタチオンS-転移酵素Noppera-bo(Nobo)に対する阻害活性に着目し、その結果、cis-デカリン誘導体に阻害活性があることを見出した。
農業害虫の駆除には化学合成された殺虫剤が広く用いられているが、耐性を持つ昆虫の発生が近年問題となっている。昆虫の発育を阻害し、害虫だけに作用する新しいタイプの農薬に注目が集まっており、今回発見した化合物の阻害活性は、既知のNobo阻害剤よりも強くないものの、阻害剤としては新規骨格となる。今後、Noboとcis-デカリン化合物との共結晶構造解析を行うことで、より強力な阻害活性物質の創製が期待できる。
同研究は8月31日、米科学誌『PLOS ONE』で公開された。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(130)-改正食料・農業・農村基本法(16)-2025年2月22日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(47)【防除学習帖】第286回2025年2月22日
-
農薬の正しい使い方(20)【今さら聞けない営農情報】第286回2025年2月22日
-
全76レシピ『JA全農さんと考えた 地味弁』宝島社から25日発売2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年2月21日
-
農林中金 新理事長に北林氏 4月1日新体制2025年2月21日
-
大分いちご果実品評会・即売会開催 大分県いちご販売強化対策協議会2025年2月21日
-
大分県内の大型量販店で「甘太くんロードショー」開催 JAおおいた2025年2月21日
-
JAいわて平泉産「いちごフェア」を開催 みのるダイニング2025年2月21日
-
JA新いわて産「寒じめほうれんそう」予約受付中 JAタウン「いわて純情セレクト」2025年2月21日
-
「あきたフレッシュ大使」募集中! あきた園芸戦略対策協議会2025年2月21日
-
「eat AKITA プロジェクト」キックオフイベントを開催 JA全農あきた2025年2月21日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付、6月26日付)2025年2月21日
-
農業の構造改革に貢献できる組織に 江藤農相が農中に期待2025年2月21日
-
米の過去最高値 目詰まりの証左 米自体は間違いなくある 江藤農相2025年2月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】有明海漁業の危機~既存漁家の排除ありき2025年2月21日
-
村・町に続く中小都市そして大都市の過疎(?)化【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第329回2025年2月21日
-
(423)訪日外国人の行動とコメ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年2月21日
-
【次期酪肉近論議】畜産部会、飼料自給へ 課題噴出戸数減で経営安定対策も不十分2025年2月21日
-
「消えた米21万トン」どこに フリマへの出品も物議 備蓄米放出で米価は2025年2月21日