マラリアを媒介する蚊へのネオニコチノイド系殺虫剤 作用機構を解析 近畿大学2024年8月6日
近畿大学農学部 応用生命化学科教授・近畿大学アグリ技術革新研究所の松田一彦所長らの研究グループは、大阪大学産業科学研究所、岡山大学薬学部、ロンドン大学、リバプール熱帯医学校と共同で、マラリアを媒介するガンビエハマダラカ対する、ネオニコチノイド系殺虫剤の作用機構を解析した。今後、有効な殺虫剤の開発による、マラリア・デング熱の感染抑制につながると期待される。
ネオニコチノイド系殺虫剤の作用機構の概要図
マラリアへの対抗策として、ワクチン投与による化学療法、殺虫剤を処理した蚊帳の設置、原虫を仲介する蚊の殺虫剤散布などが挙げられる。そのなかで特に殺虫剤は効果があるとされるが、一方で、世界的に使用されている合成ピレスロイド等の殺虫剤に対する抵抗性を獲得したガンビエハマダラカが増加。その影響で感染者数が増えているため、世界保健機構を中
心に、ピレスロイドとは作用機構が異なる「ネオニコチノイド系殺虫剤」を、ガンビエハマダラカなどのマラリア媒介昆虫種の防除に利用する方法が検討されている。
ネオニコチノイド系殺虫剤は、昆虫の中枢神経に存在するニコチン性アセチルコリン受容体3の機能を阻害することで行動に影響を与え、殺虫効果をもたらす。研究グループは、2020年に、ニコチン性アセチルコリン受容体の異所発現技術を開発した。
同研究では、この異所発現技術を用いて、ガンビエハマダラカの神経伝達に重要な13種のニコチン性アセチルコリン受容体のサブタイプに対する、6種類のネオニコチノイド系殺虫剤の作用メカニズムを解析。その結果、受容体のサブタイプごとに6種類の殺虫剤の効き方が異なることを見出し、うち1種類の殺虫剤については、受容体に対する結合のメカニズムを結晶構造により明らかにした。
ネオニコチノイド系殺虫剤は、ガンビエハマダラカの雌成虫に対して、飛翔能力を阻害するノックダウン活性を示す。研究グループは、このノックダウン活性が作用する際に、特に強く影響を受けるニコチン性アセチルコリン受容体のサブタイプを推定することにも成功した。
同研究成果は、ガンビエハマダラカの防除に有効な殺虫剤の開発を促し、マラリアの抑制のみならず日本での拡大が懸念されるデング熱の抑制にも利用可能であると期待される。
この件に関する論文は7月24日、遺伝学やゲノミクスに関する国際的な学術誌『Open Biology(オープン バイオロジー)』に掲載された。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(131)-改正食料・農業・農村基本法(16)-2025年3月1日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(48)【防除学習帖】第287回2025年3月1日
-
農薬の正しい使い方(21)【今さら聞けない営農情報】第287回2025年3月1日
-
【青年大会特集座談会】国の礎「食」を支える自負を(2)京大藤井聡教授・田中均組合長・久保田治己氏2025年2月28日
-
【青年大会特集座談会】国の礎「食」を支える自負を(3)京大藤井聡教授・田中均組合長・久保田治己氏2025年2月28日
-
【米の食味ランキング】猛暑・残暑で西日本のランク落ち目立つ 徳島南部コシヒカリは初の「特A」2025年2月28日
-
【JA全国青年大会】JA青年の主張 最優秀賞に谷本弾さん(JAあきた北青年部)2025年2月28日
-
全農 政府備蓄米入札への応札方針決める2025年2月28日
-
(424)「米国農務省の長期見通し」雑感【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年2月28日
-
大谷翔平選手が「ファミリーマートおむすびアンバサダー」就任「ぼんご監修おむすび」新発売2025年2月28日
-
東北農林専門職大学、南東北クボタと「スマート農林業」で連携協定締結 山形県新庄市2025年2月28日
-
【役員人事】JA三井リース(4月1日付)2025年2月28日
-
「令和7年2月17日からの大雪」農業経営収入保険の支払い期限を延長 NOSAI全国連2025年2月28日
-
宮崎ガス「カーボン・オフセット都市ガス」のJクレジットを媒介 農林中金2025年2月28日
-
農機の装備や販社連携、オンライン企画一体で農作業安全を推進 クボタ2025年2月28日
-
チラシやHP、SNSで農作業の安全を啓発 体験型研修も実施 ヤンマーアグリ2025年2月28日
-
安全装置を採用、機種別広報で農作業安全を啓発 三菱マヒンドラ農機2025年2月28日
-
農業女子プロジェクトや社外研修でも農作業安全を啓発 井関農機2025年2月28日
-
農業用窒素固定菌資材「エヌキャッチ」 キャンペーン ファイトクローム2025年2月28日
-
【役員人事】雪印メグミルク(4月1日付)2025年2月28日