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みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (36) 【防除学習帖】第275回2024年11月23日

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 令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。

 みどり戦略対策に向けたIPM防除でも、必要な場面では化学的防除を使用し、化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせて防除効果の最大化を狙うのだが、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できるようにするためには、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理すると、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道が探れると考えている。そのため、有効成分の作用機構ごとに分類し、RACコードの順番に整理を試みている。

 現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。

5.MBC殺菌剤
 (1)作用機構:[B]細胞骨格とモータータンパク質
 (2)作用点: チューブリン重合
 (3)グループ名:MBC殺菌剤(メチルベンゾイミダゾールカーバメート) [グループコード:1
 (4)殺菌剤の耐性リスク:高
 (5)耐性菌の発生状況:広範囲の病原菌に耐性菌が発生、グループ内交差耐性あり、
        N-フェニルカーバメート系(次回紹介)と負の交差耐性あり
 (6)化学グループ名・有効成分名(農薬名):
   [1]ベンゾイミダゾール・ベノミル(ベンレート水和剤など)
   [2]チオファネート・チオファネートメチル(トップジンM水和剤など)
 (7)グループの特性:
このグループは施用されると加水分解を起こして、カルベンダジムと呼ばれる成分を生じて、効果を表す。カルベンダジムは、病原菌細胞が分裂する際に必要な微小管の重合を阻害し、正常な有糸核分裂ができなくして、結果として増殖ができなくなって死滅する。
このグループは明瞭な交差耐性の関係を持っており、つまり、ベンレートが効かない耐性菌に対してはトップジンMも効かず、同様にトップジンMが効かない耐性菌に対してはベンレートも効かないという関係を持つ。このグループは浸透移行性も有しており、効果の安定に寄与すると考えられている。
両剤ともに非常に多数の登録作物および子のう菌類を中心にした多数の病害に農薬登録を有しており、耐性菌が発生していない病害・作物では、安定した効果を発揮している。
紙面上、全ての適用作物・病害を掲載することができないので、次表にはMBC剤が効果を示す病原菌を抽出して掲載したので参考にしていただきたい。

 (8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
     ベノミルおよびチオファネートメチルともにリスク換算係数は0.1と一番リスクが低いグループに分類されており、MBC殺菌剤によるリスク換算値軽減は考える必要はないだろう。
     それよりも、貴重な浸透性殺菌剤であるので、耐性菌の発達状況に注意しつつ、耐性菌対策を十分に講じながら、用法用量を守って正しく使用するように心がける方がより良いと考える。

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