農薬:現場で役立つ農薬の基礎知識 2013
【現場で役立つ農薬の基礎知識 2013】[4]カンキツの病害虫防除 適期防除で品質向上を2013年5月17日
カンキツの主要病害虫と防除
(1)黒点病
(2)そうか病
(3)かいよう病
(4)ミカンサビダニ
(5)アザミウマ類
(6)カイガラムシ類
ちょうどミカンの花が咲く頃となり、本年もみかん等かんきつの栽培が本格的にスタートした。これから、病害虫の発生も多くなる季節となり、それらの発生状況に合わせた適期防除が品質向上のためにも重要である。今回は、かんきつの病害虫防除について取材し整理したので、今後の防除にお役立ていただければ幸いである。
※この記事は2013年に掲載した内容です。最新記事はこちらをご覧ください。
◆カンキツの主要病害虫と防除
カンキツ栽培で重点的な防除が必要な病害虫は、病害が黒点病、そうか病、灰色かび病、貯蔵病害(青かび病、緑かび病)、かいよう病、虫害がカイガラムシ類、アザミウマ類、ミカンサビダニ、ミカンハダニ、カメムシ類である。
これらの病害虫は、防除に失敗するとカンキツの品質等への影響が大きく、防除が欠かせないものばかりである。この欠かせない防除を組み立てる際に役立つのが地域の防除暦、指導機関の防除指針である。これらは、地域の発生実態にあわせて着実に防除効果が得られるように作成されているので、防除暦に従って防除を着実にこなすのが最も大切であり、防除の基本となるものである。
ここでは、すべての病害虫について紹介することができないため、特に重要な病害虫について、防除のポイントを紹介する。
◆病害虫防除のポイント
(1)黒点病
糸状菌(かび)が病原菌で、枯れ枝に作られた胞子が、雨のたびに流れ出して感染する。その他、切り株や放置された剪定枝からも胞子が飛んで果実に感染するので、病気になった枝等の処分は確実に行う必要がある。
果実への主な感染時期は、梅雨や秋雨など長雨の時期であるので、この時期は特に徹底した防除を実施願いたい。
基本的には、指導機関や地域で作成している防除暦に従って、防除を着実に行うことが重要であるが、園地によって雨の状況が異なる場合があるので、自園地での雨量に注意し、雨量に応じて散布を行う必要がある。
また、黒点病防除薬剤にマシン油を加用すると防除効果があがる事例があるので、ミカンハダニ防除が必要な場合は、同時防除を狙った混用も有効である。
防除薬剤は、マンゼブ剤(ペンコゼブ水和剤、ジマンダイセン水和剤)の予防散布に重点を置き、次回防除が必要な雨量に達したら、速やかに次回散布を行うように心がけていただきたい。
(写真)カンキツ 黒点病
(2)そうか病
糸状菌(かび)が病原菌で、葉の病斑で越冬して、雨が降るたびに伝染し、カンキツの中でも温州みかんでの被害が大きい。
5月下旬の花が落ちたころから7月下旬までに雨が多いと発生が多くなるので、この時期の防除は特に重要である。梅雨の時期には、散布後に一定量の雨(200mm以上)があれば、再度散布するようにするとよい。防除は、雨が降る前からペンコゼブ水和剤やデランフロアブルなどの保護剤を定期的に散布し、予防散布を中心に組み立てるとよい。落弁期は、果実への感染を防ぐのに大切な時期であるので、ストロビードライフロアブルやマネージM水和剤などを使用するとよい。
(写真)カンキツ そうか病
(3)かいよう病
ネーブルや中晩柑類で多く発生し、ほとんど発生しない温州みかんでも高糖度系は比較的弱いので注意が必要である。細菌が起こす病気で、温暖多雨の年に多く発生し、気孔や傷口など開口部から侵入するので、台風などの強風があった場合やハモグリガなどの食害が発生している場合は特に注意が必要である。
細菌病の特徴でもあるが、一旦侵入を許すと防除は困難となるので、徹底した予防散布が必要である。
発芽前から5月までの防除が重要であり、特に台風が襲来した翌年には発芽前から防除を徹底する必要がある。防除薬剤は、ボルドー液など銅剤が中心となるので、クレフノンの加用を確実に行うとともに、薬害が発生しやすい時期などは指導に従って十分に注意して散布する。
(写真)カンキツ かいよう病
(4)ミカンサビダニ
成虫が芽の隙間で越冬し、6月中旬から7月上旬にかけて葉での寄生が多くなり、その後果実への移動を始め、10月?11月頃に果実での寄生が最も多くなる。このため、果実への移動を開始する6月下旬頃の防除が最も重要である。
サビダニ防除薬剤としては、サンマイト水和剤やダニカット乳剤20の効果が高いが、他の害虫が同時に発生している場合は、他の害虫に応じて薬剤を選定して散布する。例えば、ミカンキイロアザミウマとの同時防除を狙う場合は、コテツフロアブルやハチハチフロアブルなどを使用するとよいようだ。
(写真)カンキツ ミカンサビダニ
(5)アザミウマ類
果実への障害を与える害虫としては、チャノキイロアザミウマが最も厄介である。ハウスでは、ミカンキイロアザミウマが最も厄介である。いずれも年間の発生回数が多く、夏に何回かのピークがある。防除は、発生の状況をよく把握し、発生を確認したら速やかに防除を開始するのが肝要である。また、アザミウマの種類によって防除薬剤の効果が違うので、発生している種を指導機関等で確認してもらい、その種に効果の高い薬剤を選択するのが重要である。アザミウマ類防除薬剤としては、コテツフロアブルやスピノエースフロアブル、ダーズバンDF、ハチハチフロアブルなどの評価が高いようだ。
(写真)カンキツ チャノキイロアザミウマ
(6)カイガラムシ類
カンキツを加害するカイガラムシ類にはたくさんの種類があり、発生部位や害の出方など様々である。それぞれの生態に合わせて、防除対策が示されているので、それを着実に実行するようにしたい。散布時は、カイガラムシのいる樹幹に薬液が十分に達するように丁寧に散布する。フジコナカイガラムシなどのように、ヘタの周囲など薬剤がかかりにくい部分にいることが多いので、それらを目がけて丁寧な散布を心がけることが重要である。防除薬剤としては、発生を確認したら、すぐに、スプラサイド乳剤など有機リン剤を散布する。また、冬季のマシン油散布は、カイガラムシ類防除に加え、他の越冬害虫にも効果があるので発生状況などに応じて実施するとよい。
(写真)カンキツ コナカイガラムシ類
(図表はクリックするとPDF画像で見ることができます。)
(関連記事)
・最重要時期は被害を受けやすい5~6月 【ミカンの病害虫防除のポイント】(17.05.01)
・【現場で役立つ農薬の基礎知識2016】ミカンの病害虫防除 初期段階での対応がもっとも重要(16.05.11)
・【現場で役立つ農薬の基礎知識 2014】[6]ミカンの病害虫防除のポイント 田代暢哉・佐賀県上場営農センター長(14.05.21)
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