農薬:現場で役立つ農薬の基礎知識 2013
【現場で役立つ農薬の基礎知識 2013】[16]イチゴの施設栽培防除2013年9月20日
・発生状況に応じた対策を
・商品価値なくすうどんこ病
・胞子が伝染源灰色かび病
・発生初期の防除を徹底ハダニ類
・早めの防除で収量確保イチゴネアブラムシ
台風18号が全国に猛威を振るい、広範な地域に痛い傷跡が残った。特に、その雨量はすさまじく、あちこちの田畑やハウスで冠水などの被害を起こした。被害にあわれた方々には心よりお見舞い申し上げたい。
そんな台風一過も一因かもしれないが、暑さ寒さも彼岸までとの言葉通り、これまでの猛暑が影をひそめ、すっかり秋らしい気候になってきた。これから冬場に向けた、イチゴ栽培では、うどんこ病や灰色かび病など比較的低温を好む病害の発生が多くなるなど、暑い時期とは異なる防除対策が必要だ。そこで、冬場のイチゴ施設栽培に絞って、その防除対策を取材した。
確実な防除で生育・品質を守る
◆発生状況に応じた対策を
冬場の施設イチゴにおいて、病気では、比較的低温で発生が多くなるうどんこ病や灰色かび病など、害虫では、一年中発生するイチゴネアブラムシや2月下旬ころより発生が増加するナミハダニやカンザワハダニが要防除対象だ。いずれも、果実の生育や品質に大きく影響するので、発生状況に応じて、確実に防除したいものである。
以下、主要病害虫毎に防除対策を記すので参考にしていただきたい。なお、本文中や一覧表で使用できる農薬を紹介しているが、選択の参考になる情報に絞って記載しているため、実際に使用する際には、使用する農薬のラベルをよく確認し、正しく使用してほしい。特に、開花後に農薬を使用する際には、ミツバチの安全使用基準をよく確認し、影響のないよう十分に注意してほしい。
(写真)
イチゴ(とちおとめ)
◆商品価値なくすうどんこ病
果実、葉、茎などイチゴのあちこちの部位に白い粉状のかびが発生する。特に果実に発生した場合は、商品価値がなくなり、被害が大きい。
周年発生し、多湿でも乾燥でも発生するので、冬場のハウスでは発生が多くなる。空気伝染し、一度発生すると多くの場所に拡散するので、発生前に重点をおき、予防散布を心がけたい。
薬剤は、パンチョTFやバイコラールなどのEBI系やストロビーなどのストロビルリン系、その他系列のモレスタンやフルピカなどの効果が高いが、EBI系やストロビルリン系など強い耐性菌が発生している場合が多いので、異なる系統の薬剤をローテーションで使用し、使用する薬剤も指導機関の指導に従って選ぶようにしてほしい。
その点、新規に登場したガッテン乳剤は、新規有効成分で前述の耐性菌にも効果が高く、残効も長いと評価されており、うどんこ病にお困りの場合は、一度試してみる価値がありそうだ。
その他、ケイ酸カリ肥料の施用など効果的な耕種的防除法も紹介されているので試してみるとよい。
(写真)
うどんこ病(奈良県病害虫防除所提供)
◆胞子が伝染源 灰色かび病
葉や果梗にも発生するが、主に果実に発生するので、被害が大きい。下葉の枯死した部分や花弁などでいったん増殖し、これが伝染源となって、胞子を飛散させ蔓延していく。
低温多湿条件で多く発生するので、防湿ファンを回すなどハウスを乾燥状態にするとかなり発生を抑えられる。
薬剤防除は、発病初期に重点をおいて、系統の異なる薬剤を果実を中心に丁寧にローテーション散布する。
この病害も、多くの薬剤に耐性菌が発生しているので、指導機関の情報に従って薬剤を選んでほしい。カンタス顆粒水和剤やスミレックス水和剤、ロブラール水和剤、フルピカフロアブル、アミスター20フロアブルなどが主な使用薬剤である。
バチルス属細菌が灰色かび病に効果のあることから、同菌を成分とする生物農薬も登場している。しかし、効果を安定させるためには、繰り返しの散布が必要なため、近年は、生物農薬の効果を補完し、他の病害にも効果を示すようバチルス菌に銅剤を加えた薬剤(クリーンカップなど)も登場している。成分に銅を含むため、薬害に一定の注意が必要だが、回数制限のない有効剤として好評とのことだ。
◆発生初期の防除を徹底 ハダニ類
主な発生種は、ナミハダニとカンザワハダニである。いずれも休眠性があり、ハウス栽培ではだいたい2月下旬ころから発生が多くなる。この時期が近づいたら、注意深く葉裏などを確認し、発生初期での防除を徹底してほしい。古い下葉や周辺の雑草などが発生源となるので、これらをきちんと取り除くことで、かなり発生が減らせる。
防除薬剤は、バロックフロアブルやコテツフロアブル、ダニサラバフロアブル、スターマイトフロアブルなど定評があるが、バロックフロブアルは卵と若虫にしか効かないなどダニのステージ毎に得手不得手があるので、説明書を良く読み、特性に合わせて使ってほしい。
また、抵抗性の発達したダニもいるので、指導機関の情報・指導に従って正しい薬剤を選ぶようにしたい。
最近では、ダニの気門を物理的に塞いで窒息させる還元澱粉糖化物(水飴)を主成分とする薬剤(エコピタなど)をダニの密度が低い時に使って密度増加を抑えつつ、もし密度が増えてきたら、成虫にも効果のあるダニ剤で一気にたたく方法が効果的のようである。
(写真)
イチゴハウスのようす
◆早めの防除で収量確保 イチゴネアブラムシ
この害虫は地際の茎や根冠部に集団で一年中寄生して青緑色をしている。イチゴの生育が悪くなり、収量や品質を低下させる被害が起こるので、発生をみたら早めの防除が必要だ。
アクタラ粒剤やアドマイヤー粒剤、モスピラン粒剤などネオニコチノイド系の粒剤を定植時に処理し、その上で、マブリック水和剤やチェス顆粒水和剤、ウララDFなどの散布剤を必要に応じて散布するとよい。
ただし、散布剤をミツバチを導入する時期に使用する場合は、安全日数を十分に考慮して使用してほしい。
(上表はクリックすると、大きなPDFファイルが開きます)
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