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農薬:現場で役立つ農薬の基礎知識 2013

【現場で役立つ農薬の基礎知識 2013】[17]冬のトマト施設栽培2013年9月30日

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・施設内は病害虫にとって快適な空間
・灰色かび病果実が腐敗し、商品価値が低下
・疫病低温・多湿状態で多く発生
・黄化葉巻病世界中のトマト農家が恐
・オオタバコガ果実に穴を開けて侵入する

 近年、トマトの元気がいい。スーパーなどの野菜売り場を覘いてみると、従来の大玉系の他に、中玉(ミディ)や小玉(ミニ)などサイズも多彩だが、糖度が8を超えるフルーツトマトなど食味の良さをアピールするものや、赤や黄色をミックスしたカラフルで洒落たパッケージの高級感のあるものなど、様々なコンセプトのトマトがところ狭しと並んでいる。
 トマトに多く含まれるリコピンが体に良いとのことで、ヘルシーなイメージも人気に拍車をかけている要因のようだ。
 夏場の暑い時期というのは、樹が過繁茂になったり着花数が減ったりして、品質のよいトマトで収量をあげるのは難しいものだ。その夏の暑さが去り、いよいよトマトの栽培に適した時期が到来し、張り切っておられる方も多いだろう。
 ただし、この時期には夏場とは違った病害虫の発生もあり、この時期なりの病害虫防除対策が必要だ。今回は、この時期なりの防除のポイントを探ってみた。

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適切な防除で品質を守る

◆施設内は病害虫にとって快適な空間

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 秋から冬にかけては、オオタバコガなどの大型チョウ目害虫の発生が多く、冬から春にかけては、低温を好む病害の発生が多くなるのが一般的なようだ。
 ただし、施設栽培では、トマトにとって快適な条件となるように設定・管理されるので、病害虫にとっても快適であることは間違いない。そのため、うどんこ病など1年を通じて発生する病害も少なくないので、自分の畑で年中発生する病害虫がある場合は、それらの防除を中心に組み立てるとよい。
 以下、主な病害虫の防除のポイントを整理した。なお、トマトに登録のある主な農薬を別表のとおり整理した(本文末参照)。この表は、農薬名の他に有効成分の名前がわかるように種類名を加えた。この種類名は、有効成分名と登録上の剤型を組み合わせてつくられているので、農薬に含まれる有効成分を知るのには便利だ。
 農薬名が違っても有効成分が同じ場合があったりするので、ローテーション散布の検討や有効成分別使用回数を確認する場合には、必ず有効成分名を確認するようにしていただきたい。

【灰色かび病】
果実が腐敗し、商品価値が低下

 トマトの果実では花落部付近から侵入して、灰色のかびが発生し、果実も腐敗して商品価値が著しく低下する病害である。多湿時に多く発生するので、防湿ファンを設置するなど通気をよくするだけで随分と発病が減る。防除薬剤はたくさんあるが、その多くに耐性菌が発生しているので、指導機関によく確認して薬剤を選択するようにしてほしい。
 防除対策としては、フルピカやベルクートなど保護殺菌剤の定期的散布を中心にして、適宜、高い防除効果を示すセイビアーやカンタス、スミブレンド、ゲッターなどを適宜ローテーションで使用するとよいようだ。
 最近では、エコショットやインプレッションといったバチルスを主成分にした生物農薬が多数登場し、耐性菌対策と使用回数制限が無いことから、上手に組み合わせて使用する生産者も増えているとのこと。
 ボトキラーなどは、暖房用のダクトに投入するといったユニークな省力的散布方法もあるので、灰色かび病が常に発生しているような施設では検討してみてはいかがか。

【疫病】
低温・多湿状態で多く発生

 比較的低温で多湿状態の時に多く発生する。葉を中心にトマトの各部位に発生し、被害も大きい病害だ。灰色かび病と同様に乾燥気味にすることで発病を減らすことができる。
 最近、疫病に登録のある新規薬剤も増えたので、系統の異なる薬剤をローテーションで使用するようにしたい。この病害も、ペンコゼブやダコニールなど保護殺菌剤を防除の主体にし、適宜、プロポーズ顆粒水和剤やリドミルゴールMZやホライズンドライフロアブルなど、効果に定評のある薬剤を組み合わせて使用するとよいようだ。

疫病(奈良県病害虫防除所提供))

(写真は、疫病(奈良県病害虫防除所提供))

【黄化葉巻病】
世界中のトマト農家が恐れる

 近年トマト栽培で大きな問題となっているのはシルバーリーフコナジラミが媒介するトマト黄化葉巻病である。この病害は、トマト黄化葉巻病ウイルス(TYLCV)によって起こり、新葉が巻いたり、小葉化、黄化などの症状が起こり、株全体が萎縮する。
 短期間にシルバーリーフコナジラミがほ場全体に病原ウイルスを伝播して発病させるため、収量が激減し、世界中のトマト農家に恐れられている。
 トマト黄化葉巻病の発生を防ぐためには、側窓・入口・天窓への防虫ネット(0.4mm目)の設置や苗での防除の徹底、植付時の殺虫粒剤の使用による初期防除、栽培終了後の施設の蒸しこみ処理、地域一斉対策(野良トマトの除去、周辺雑草の防除、家庭菜園への防除依頼など)などがあるが、実施可能なことはできるかぎり全部実行したい。
 もし発病した場合は、ウイルスの伝搬元を無くす意味で速やかに抜き取る勇気も必要である。
 指導機関等が出している情報によれば、タバココナジラミに効果の高い薬剤は、サンマイトフロアブル、スタークル顆粒水溶剤、ベストガード水溶剤の3剤である。これらよりは落ちるが、モスピラン水溶剤やアドマイヤー顆粒水和剤やアクタラ顆粒水和剤、ダントツ水溶剤、ハチハチ乳剤なども効果があるとのこと。地域の指導情報などを参考に防除対策を組み立ててほしい。

【オオタバコガ】
果実に穴を開けて侵入する

オオタバコガ(奈良県病害虫防除所提供)

 盛夏から初秋にかけて被害が大きくなり、ナス科やウリ科、アブラナ科、レタスその他多くの野菜や花きを食い荒らす。トマトでは、果実に穴を開けて侵入して商品価値ゼロにしてしまうので被害が特に大きい。
 防除対策としては、効果のある薬剤を、オオタバコガの発生初期を逃さず防除し、発生期間を通じて定期的に薬剤散布すると良い。特に果菜類では、食い入られる前に防ぐことができるように発生予察情報に注意してほしい。
 効果のある薬剤としては、アファーム乳剤、スピノエース顆粒水和剤、トルネードエースDF、フェニックス顆粒水和剤、プレオフロアブル、プレバソンフロアブル5の評判がよい。

(写真は、オオタバコガ(奈良県病害虫防除所提供))

https://www.jacom.or.jp/series/images/seri1309300801.pdf

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