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農薬:現場で役立つ農薬の基礎知識 2014

【現場で役立つ農薬の基礎知識 2014】[9]土壌病害虫を一網打尽 連作障害防ぐ2014年6月25日

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・連作障害はどうして起こるのか?
・土壌消毒による連作障害の回避
・太陽熱消毒土壌内を60℃に
・土壌還元消毒法日照少ない地域で有効
・蒸気・熱水消毒地域一体の取り組みで
・土壌消毒剤による消毒

 梅雨入りしたものの、大雨だったり夏日だったりと通常の梅雨とは異なる気象状況が続いている。偏西風の蛇行による気圧配置の異変が主な要因とのことであるが、このような状況からすると、熱帯のような夏になるのではないだろうかと心配している。農業にとっては本当に難しい気象状況になったものである。とはいえ、夏が来れば土壌消毒のことを思い出していただきたいものである。なぜなら、連作障害の原因となっている土壌病害虫を一網打尽にするのにちょうどよい季節でもあるからである。
 特に、同一作物を毎年つくるような産地の場合、どうしても特定の病害虫が多くなってしまい、年々作物の生育が悪くなり収量や品質が落ちる連作障害を招く結果となってしまう。これは、優良産地であればあるほど、避けることのできない大きな問題である。連作障害には、肥料成分や微量要素の不足などにより発生するものもあるが、今回は、病害虫によっておこる障害に絞り、それに合致した土壌消毒法を紹介したい。

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◆連作障害はどうして起こるのか?

連作障害で枯れたトマト 同一の作物を作付し続けると、同一の作物を好む土壌病原菌や土壌害虫が選択的に大量に増殖し、そのことが原因で連作障害が起こる。これを防ぐためには、農作物の種類を変える輪作が効果的であるが、輪作が効果を発揮するには、土壌病害虫の生存年限を超えた転作期間が必要であり時間がかかる。さらに、作物の供給量を確保するためには、仕方なく連作をしなければならない状況もあり、他の作物で長期に経営が成り立つような輪作体系はなかなか確立しづらいというのが現状である。

(写真)
連作障害で枯れたトマト

 

◆土壌消毒による連作障害の回避

 多くの場合、障害の原因となっている病害虫を駆除することで連作障害を回避できる。その方法として一般的なのが土壌消毒である。一口に土壌消毒といっても、太陽熱消毒など熱を使うものや、土壌消毒剤を使うものまで様々である。それらの中から、土壌の質や被害の状況、日照時間など圃場の条件によって、効果の面や対象の病害虫に違いがあるので、一番適した消毒法を選ぶ必要がある。以下に、主な土壌消毒法をご紹介する。

 

【太陽熱消毒】
土壌内を60℃に

太陽熱を利用した消毒法や防除技術は施設栽培には有効 土壌に十分な水分を入れ、ビニルなどで被覆して太陽光を当て、土壌の温度を上昇させることで、中にいる土壌病害虫を死滅させる方法である。
 この方法を成功させるためには、土壌内部の温度をどれだけ上昇させることができるかが鍵である。連作障害を起こすたいがいの病害虫は、およそ60℃の温度で死滅してしまうため、いかに土壌内部の温度を60℃に到達させることができるかどうかで成否が分かれる。
 太陽光でこの温度まで上昇させるためには、施設を密閉して十分な太陽光を当てる必要があり、夏場でも日射量が少ないところでは60℃に達するまでいかない場合もある。また、土壌病害虫がどのくらいの深さに存在しているかも重要だ。病原菌によっては、深さ50cmにも存在するものがあり、その深さを60℃以上にすることは難しい場合もある。
 このため、露地でマルチをした程度では、土壌表面の消毒にしかならず、十分な効果が期待できないことも多いので、土壌温度を上昇させやすい、夏場にカンカン照りになる西南暖地などの施設栽培向きの消毒法といえる。

(写真)
太陽熱を利用した消毒法や防除技術は施設栽培には有効

 

【土壌還元消毒法】
日照少ない地域で有効

 この方法は、フスマや米ぬかなど、分解されやすい有機物を土壌に混入した上で、土壌を水で満たし、太陽熱による加熱を行うものである。
 これにより、土壌に混入された有機物をエサにして土壌中にいる微生物が活発に増殖することで土壌の酸素を消費して還元常態にし、病原菌を窒息させて死滅させることができる。この他、有機物から出る有機酸も病原菌に影響しているとのことである。
 このため、有機物を入れない太陽熱消毒よりも低温で効果を示すので、北日本など日照の少ない地域でも利用が可能な方法である。ただし、還元作用により悪臭(どぶ臭)が出るので、住居が近接しているようなところでは注意が必要である。

【蒸気・熱水消毒】
地域一体の取り組みで

 文字通り、土壌に蒸気や熱水を注入し、土壌中の温度を上昇させて消毒する方法である。
 病害虫を死滅させる原理は太陽熱と同じで、いかに土壌内部温度を60℃にまで上昇させるかが鍵である。土壌内に効率よく蒸気や熱水を行き渡らせるために、消毒機器メーカーは様々な工夫をこらしている。

対象病害虫の死滅温度によって密閉日数は異なる ただし、この方法を実施するには、お湯や蒸気を発生させるためのボイラーや土壌に均一に注入するための設備が必要であるため、そこそこの投資と燃料代のランニングコストが発生する。このため、稼動可能な設備を共同で使用するなど、地域一体となった大掛かりな取り組みが必要となることが多い。

(写真)
対象病害虫の死滅温度によって密閉日数は異なる

 

 

【土壌消毒剤による消毒】

 現在の技術で最も一般的なのが土壌消毒剤による土壌消毒である。効果の安定性やコスト面で優位であり、消毒に必要な期間(作間が短い場合など)から考えても、作型に適合させやすい技術である。ただ、土壌消毒剤を土壌に注入する労力が負担になることや、作業者や圃場周辺の環境に十分な配慮が必要など、太陽熱消毒などには無い作業も発生する。
 土壌消毒剤の分野で長い間主流となっていた臭化メチルは収穫物用途も含め2013年に廃止された。これは、1992年にモントリオール議定書契約国会合においてオゾン層破壊物質に指定されたため、先進国では、検疫や土壌ウイルス防除など不可欠な用途を除いて05年に全廃することが決まり、その後、不可欠用途の減少に伴って、国際的に「全廃すべき」との機運が高まり、12年に土壌用の臭化メチルを使用が廃止され、13年には収穫物用途も含めて廃止されることになった。
 この臭化メチル代替として開発された技術や土壌消毒剤には、それぞれ特性があり、その特性を良く把握した上で使用しないと、効果が不安定になるなど生産者にとって不利益になることもあるので注意が必要だ。以下に、主な土壌消毒剤の成分の特性を示す。

○クロルピクリン
(商品名:クロールピクリン、ドジョウピクリンなど)

 揮発性の液体で、土壌に注入することで効果を発揮する。激しい刺激臭がするので、使用時は、防毒マスク、保護メガネ、ゴム手袋など保護具の着用が必須である。その反面、ガス抜けが早いので、ガス抜き作業が基本的に不要なのが特徴である。最近では、灌注機や同時マルチ機などが普及し、より安全により楽に処理できるようになっているので可能であれば利用したい。
 クロルピクリン剤PVAフィルムに封入し、土壌に埋設するだけの簡単処理ができるようにしたクロピクテープやクロピク錠剤があるので適宜使用するとよい。主に、フザリウム病など土壌病害に効果を発揮する。

○D-D
(商品名:D-D、DC油剤、テロン)

 主に、土壌センチュウに効果を発揮する。クロルピクリンに比べ、ガス抜けが悪いので、丁寧に耕起して、ガス抜き期間3?4日を確実において作付けに移る。ガス抜きが不十分だと薬害が起こるので注意が必要。

○クロルピクリン・D-D混合剤
(商品名:ソイリーン、ダブルストッパー)

 前述のクロルピクリンとD-Dを効果的に配合し、土壌病害から土壌害虫、畑地一年生雑草など、守備範囲が広く効果の面で使いやすい土壌消毒剤である。また、若干ではあるが、クロルピクリン単剤よりも刺激臭の低減が図られているのも特長だ。ガス抜きの期間は、D-Dの日数に合わせる必要があるので、ガス抜きは丁寧に行う必要がある。

○ダゾメット
(商品名:ガスタード微粒剤、バスアミド微粒剤)

 微粒剤を土壌に均一散布し、土壌の水分に反応して、有効成分であるMITC(メチルイソシアネート)を出して効果を発揮する。そのため、処理時には適度な水分が必要であり、ガス抜きも10?14日と比較的長い期間が必要である。主に土壌病害に効果を示す。

主な土壌消毒剤の特性一覧

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