農薬:現場で役立つ農薬の基礎知識 2014
【現場で役立つ農薬の基礎知識 2014】[11]秋冬野菜の病害虫防除2014年8月20日
・農薬は時期と発生状況に合わせて選ぶ
・主な問題病害虫とその防除対策
秋冬野菜では、オオタバコガやハスモンヨトウなど大型害虫の発生が多くなる時期であり、これらは被害も大きいので、早めに準備をしておきたい。以下、主要な病害虫の防除のポイントと防除の基礎的な知識を紹介するので参考にしてほしい。
また、文中に薬剤を紹介したり、主要な病害虫防除剤の適用農薬一覧を添付しているが、これらは薬剤を選ぶ際のヒントを示しているだけであり、紙面の関係上、希釈倍率などの実際の使用場面で必要なラベル情報は省いているので、実際に使用する際には、農薬のラベルの内容をよく確認してから使用していただきたい。
※この記事は2014年に掲載した内容です。最新記事はこちらをご覧ください。
まず敵を知り、適切な防御を
◆農薬は時期と発生状況に合わせて選ぶ
秋冬野菜に限ったことではないが、病害虫の発生様相は異なっており、その防除適期も病害虫個々で異なる。これに加えて、農薬それぞれが持つ特性(浸透移行力を持つもの、幼虫にしか効かないものなど)があり、上手に防除するには、それらの個性を十分に把握した上で、それぞれに合った使い方を選択する必要になる。
例えば、害虫が小さい時に散布しないと効きが悪い農薬の場合、対象害虫が既に大きくなってしまった時に使用しても効き目が薄くて効率が悪いし、病害が発生する前に散布しなければ効かない農薬を病害の発生後にいくら散布しても効果がなく、無駄な散布になってしまうので、このようなことがないよう注意が必要だ。
そこで、防除の前後には病害虫がどんな状況かをよく観察した上で防除薬剤を組み立ててほしい。もちろん、毎年発生する病害虫で防除暦が定められているような場合には、それに従って適期を逃さず散布すればいいが、気候の影響等で発生の状況が変化した場合などは、発生状況の観察がとても重要である。つまり、敵を知らないことには、適切な防御ができないからだ。
◆主な問題病害虫とその防除対策
【オオタバコガ】
発生の初期を逃さずに
盛夏から初秋にかけて被害が大きくなり、ナス科やウリ科、アブラナ科、レタスその他多くの野菜や花きを食い荒らす。
防除対策としては、オオタバコガの発生初期を逃さず防除し、発生期間を通じて定期的な薬剤散布が重要だ。特に果菜類では、食い入られる前に防ぐことができるようにするためには、発生予察情報に注意しつつ定期的に散布すると良い。
効果のある薬剤としては、フェニックス顆粒水和剤やアファーム乳剤、スピノエース顆粒水和剤、トルネードフロアブル、プレオフロアブル、プレバソン顆粒水和剤の評判がよい。
さらに最近ではキャベツやレタスなどの苗を植え付けてから1カ月近くも効果を発揮するセル苗灌注処理法が注目されている。この方法は、本圃前半の防除作業が省略でき、労力が軽減できる方法でセル苗を導入している場合は一度検討してみるとよい。
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【ハスモンヨトウ】
幼虫の小さな時に
とてつもなく多食性で、ありとあらゆる作物を食い荒らす多くの野菜の重要害虫である。年に5?6回発生し、施設内であれば越冬できるし、冬でも発生することがある。被害は、8月?10月が最も大きいので、これからの季節は最重点で防除に取り組んでほしい。
この害虫は、6回ほど脱皮して蛹・成虫となるが、幼虫の齢期が進むと薬剤が効きにくくなり、最終の6齢幼虫だと防除が難しくなる上、最も食べる量が多くなるので厄介である。
このため、薬剤の効き目が高い幼虫の小さい時期からの徹底防除が重要であり、発生初期からの発生期間を通じての定期的な防除が必要となってくる。
防除薬剤としては、指導機関の資料によれば、フェニックス顆粒水和剤、プレオフロアブル、プレバソン顆粒水和剤の効果が高く、古くからの薬剤では、アファーム乳剤、オルトラン水和剤、コテツフロアブル、ジェイエース水溶剤、ランネート45DFなども効果が高い。
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【ナモグリバエ】
レタスなどで要注意
多くの葉菜類に寄生し、葉に絵かき症状を示す害虫である。特に、レタスでは心葉への加害で枯死など大きな被害を起こすことも多いので、常に発生する地域では、育苗期や発生初期の徹底した防除が必要である。
防除薬剤では、モスピラン粒剤などの植穴処理やリーフガード顆粒水和剤やアファーム乳剤などの散布が効果高い。特に植え付け初期の被害を防ぎたい場合は、ジュリボフロアブルなどを育苗期後半にセルトレイに処理する方法も登場している。
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【ネコブセンチュウ】
耕種的防除と合わせて
野菜類ではサツマイモネコブセンチュウによる被害が最も多い。土壌中にいるセンチュウが作物の根に寄生し、根にコブを形成させ、数が増えると根の機能が低下し、生育不良や葉の黄変などを起こし、トマトやサツマイモなどの被害が多い。
防除対策としては、センチュウの密度が多くない時には、ネマトリンのような土壌処理粒剤の土壌散布が散布労力も少なく効果も高い。ネマトリンの効果が減るほどセンチュウ密度が多い場合は、ソイリーンなど土壌消毒剤によって徹底防除するのが一般的である。
しかし、土壌にいるセンチュウを根絶させるのは難しいので、対抗植物「マリーゴールド」の作付や太陽熱消毒など耕種的防除と組み合わせて総合的な防除が行われるようになっている。
【根こぶ病】
アブラナ科全般で注意
アブラナ科全般に発生する病害で、根っこに大、小不揃いのコブをつくり、土中に5?6年という長期間生存するので、アブラナ科が連作するとどんどん菌が土壌中に増えてくる厄介な病害だ。土壌水分が多く、酸性のほ場で発生が多いので、土壌湿度を下げたり、石灰窒素や石灰の施用による土壌のアルカリ化が防除の基本だ。
防除薬剤には、作条土壌処理もしくは全面土壌処理を行うものにフロンサイド粉剤やネビジン粉剤、ネビリュウ、あるいは新剤であるオラクル粉剤などがある。
その他、セル苗灌注によって定植初期の根こぶ病感染を防ぎ、被害を少なくできる方法がある。これは、散布の手間が省け、使用する薬量も少なくて済むので省力的な方法だ。
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