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農薬:現場で役立つ農薬の基礎知識2015

確実に雑草防除を 水稲除草剤の上手な使い方 AVH-301とMY-100を核に2015年3月20日

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・抵抗性雑草等に対する対策
・効果を上げる使用ポイント
・周辺環境に配慮して使用を

 水田雑草の防除において、除草剤、とりわけ高性能な一発処理剤が広く普及したことにより、防除作業は格段に省力化が図られ、このことが水稲作の労力削減・規模拡大にも大いに貢献している。その一方で抵抗性雑草等の蔓延や周辺環境の保全等、新たな課題も出てきている。こうしたことを中心にJA全農肥料農薬部技術対策課にまとめていただいた。

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◆抵抗性雑草等に対する対策

 スルホニルウレア(SU)系成分を含む一発剤の急速な普及の結果、アゼナ、コナギ、イヌホタルイ等で抵抗性雑草が出現し、全国的に広がっている。既にこれらの雑草対策のための有効成分を含有する一発処理剤も普及しているが、最近東日本を中心に、これまでの対策成分では効果が不十分な多年生の難防除雑草オモダカでもSU剤抵抗性雑草が発生し、問題化している。
 また最近、クサネム、アメリカセンダングサ、タウコギ、イボクサ、アシカキ等の特殊雑草も増加している。これらの草種は主に水管理や畦畔管理が不十分な水田で問題となるが、今までのSU系一発剤では雑草の発生期前後を過ぎると十分に防除できない場合がある。
 これらの抵抗性雑草に効果の高い成分が開発され、普及が始まっている。平成22年に登録認可されたテフリルトリオン(AVH―301)はSU抵抗性雑草やクサネム等の難防除雑草に対しても、生育初期まで高い効果を示すため注目されており、SU抵抗性雑草や特殊雑草対策としての活用が期待される。
 テフリルトリオンを含む除草剤としては、「エーワン」「ボデーガード」「ゲットスター」「コメット」などがあり、本年からは「カチボシ」に加え、テフリルトリオンを含む初の中後期剤である「ワイドショット」が登場する。
 また近年、ヒエの残草が多くなっているとの報告がある。オキサジクロメホン(MY―100)は長い間ヒエの発生を抑えることができる除草剤成分であり、水稲に対する安全性が高く、水溶解度が低いことから環境にやさしい成分であるといえる。
 オキサジクロメホンを含む新しい除草剤としでは、「ナギナタ」「サラブレッドKAI」などがあり、本年からは「バッチリLX」が登場する。


◆効果を上げる使用ポイント

 近年、東日本を中心にヒエ、ホタルイ等の残草が多くなっている。また中後期剤の出荷が多い傾向にあることからも、全国的にヒエや広葉雑草の残草が多くなっていることがうかがえる。
 梅雨明け以降高温・多照・少雨条件になると、雑草の発生が助長される。また、特別栽培米の栽培を長期間続けた結果、雑草密度の高い圃場が増えていることがある。
 確実な雑草防除を行うためには、雑草の発生に応じた除草剤を選択することも重要である。さらに、除草剤の効果を十分に出すためには、次のポイントにも留意して使用していただきたい。

[1]圃場の準備
 耕起・代かきをていねいにすることは、すでに発生している雑草を埋没・枯死させる、苗の植え付け精度を高める、水持ちをよくする等の効果がある。
 また田面を均平化することで、適正な水深が保てるようになり、部分的な田面露出・浅水や深水による効果不足や薬害のリスクを避けることができる。
 あぜ塗りや畦畔シートの使用等により、小動物等の穴や崩れからの漏水を防ぐことも重要である。

[2]水稲の適正な植え付け
 植え付け不良、極端な浅植えでは薬害が発生しやすいので、ていねいに耕起・代かきを行い、健苗を適正な植え付け深度で移植するようにする。また、代かき後長期間放置すると植え穴の戻りが悪くなるので注意する。

[3]除草剤の適期散布
 効果不足の原因の多くは、散布のタイミングを逸し、雑草が大きくなり過ぎてしまうケースである。ラベルで使用時期を確認し、雑草の生育状況に応じて散布する必要があるが、圃場内でも雑草の生育速度にばらつきがあるので、水深の浅いところ等の生育の進んだ雑草を目安に適期内に散布する。

[4]水管理の徹底
 除草効果の低下を防ぐため、湛水散布においては散布時に水口・水尻をしっかり止め、散布後7日間は落水、掛け流しを行わない。
 その間、自然落水により田面が露出するようになったら、土壌表面の除草剤の層を壊さないよう、ゆっくり入水する。
 また、ジャンボ剤や豆つぶ剤のように自己拡散する除草剤を散布する際、水深が浅いと薬剤の拡散が不十分となり、除草効果の低下や除草剤の投入地点での薬害発生の原因となるので5?6cmの水深を確保する。同様に、水面に藻類が多発生した場合も有効成分の拡散が妨げられるので、藻類発生前に散布する。

[5]多年生難防除 雑草の防除
 オモダカ、クログワイ等発生期間の長い難防除多年生雑草の発生が多い水田については、現在の一発処理除草剤の一回散布では完全に防除できない場合がある。
 その場合は有効な後期剤との体系処理や、ラウンドアップマックスロードの刈跡散布などにより、発生量を年々減らしていくことが重要である。

[6]田植同時散布
 近年省力化技術として普及してきている田植同時散布は、早めの散布により安定した除草効果が得られるというメリットもあるが、水稲にとって薬害の出やすい状況での使用であるため、上記の[1]?[2]のポイントにさらに留意するとともに、移植後は速やかに入水するようにする。また、残効の短い除草剤では残効切れとなることもあるので、残効の長い除草剤を選択するようにしたい。


◆周辺環境に配慮して使用を

 除草剤に限らず水田で使用される農薬は、水系への安全性を確認した上で農薬登録されているが、農薬使用後の短期間で落水や掛け流しをしてしまうと、水域の動植物に影響を与える可能性がある。
 周辺環境の保全のためにも、農薬が土壌等に落ち着くまでの7日間は、水田水を水田外に出さない水管理が一層求められている。
 なお、農薬取締法で定められているとおり、除草剤の使用に際しても、使用時期、使用量、使用回数等の使用基準を遵守する必要があるので、使用前にラベルを一読のうえ、適正使用に努める。
 移植前に使用する初期剤の使用時期は、以前は「移植4日前まで」であったが、原則として「移植7日前まで」に変更となったので、移植前に初期剤を使用する場合は十分に注意したい。

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(上の画像をクリックするとPDFファイルにリンクします。)

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