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農薬:現場で役立つ農薬の基礎知識2015

【現場で役立つ農薬の基礎知識 2015】土壌病害虫 確実に退治 連作障害を防ぐ2015年6月24日

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・連作障害はどうして起こるのか
・土壌消毒による連作障害の回避
・太陽熱消毒
・土壌還元消毒
・蒸気・熱水消毒
・土壌消毒剤による消毒

 昨今の栽培技術や流通技術の進歩により、新鮮な農産物が一年中入手できることも多くなった。そのおかげか、いわゆる旬を感じる機会が少なくなっているようであるが、その裏側では、同じ作物を同一の圃場で生産を続ける連作が常態化し、しばしば連作障害が発生し問題となっている。基幹的農業者の減少も一因となって、特定の産地に生産を集中せざるを得ず、一定の生産量を確保し続けるためには連作に頼らなければならないのも事実である。
 連作障害は、様々な対策や技術が普及している現代においても避けることのできない大きな問題として立ちはだかっている。その主な原因は特定の土壌病害虫の優占化であるため、土壌消毒による原因病害虫の防除が最も効率的で有効な連作障害回避法である。そこで、どのような土壌消毒方法があり、その効率的な実施方法について取材したので以下に紹介する。

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◆連作障害はどうして起こるのか

 病害虫による連作障害は、同一の作物を作付けし続けることで、その同一の作物を好む土壌病原菌や土壌害虫が選択的に大量に増殖することによって起こる。
 つまり、土壌病害虫にとって快適な環境が続くため、他の土壌微生物や昆虫たちよりも土壌病害虫が優占化した結果発生する。
 これを防ぐためには、農作物の種類を変える輪作が効果的であるが、求められる供給量を確保するために、輪作だけでは収量が確保できない場合も多く、連作を余儀なくされる場合も多くなっている。


◆土壌消毒による連作障害の回避

 病害虫による連作障害は、その原因となっている病害虫を防除することで回避できる。その方法として一般的なのが土壌消毒である。一口に土壌消毒といっても、太陽熱消毒など熱を使うものや、土壌消毒剤を使うものまで様々であるが、効果の面や土壌病害虫の種類によって効果があったりなかったりする。以下に、主な土壌消毒法を紹介する。


◆太陽熱消毒

 土壌に十分な水分を入れ、ビニールなどで被覆して太陽光を当て、土壌の温度を上昇させることで、中にいる土壌病害虫を死滅させる方法である。
 この方法を成功させるためには、土壌内部の温度をどれだけ上昇させることができるかが鍵である。連作障害を起こすたいがいの病害虫は、およそ60℃の温度で死滅してしまうため、いかに土壌内部の温度を60℃に到達させることができるかどうかで成否が分かれる。
 太陽光でこの温度まで上昇させるためには、施設を密閉して十分な太陽光を当てる必要があり、夏場でも日射量が少ないところでは60℃に達するまでいかない場合もある。このため、露地でマルチをした程度では、土壌表面の消毒にしかならず、土の中の深い所にいる病害虫には十分な効果が期待できないことも多い。
 このため、夏場にカンカン照りになる西南暖地などの施設栽培向きの消毒法といえる。


◆土壌還元消毒

 この方法は、フスマや米ぬかなど、分解されやすい有機物を土壌に混入した上で、土壌を水で満たし、太陽熱による加熱を行うものである。これにより、土壌に混入された有機物をエサにして土壌中にいる微生物が活発に増殖することで土壌の酸素を消費して還元常態にし、病原菌を窒息させて死滅させることができる。
 この他、有機物から出る有機酸も病原菌に影響している。このため、有機物を入れない太陽熱消毒よりも低温で効果を示すので、北日本など日照の少ない地域でも利用が可能な方法である。ただし、還元作用により悪臭(どぶ臭)が出るので、住居が近接しているようなところでは注意が必要である。

(表)主な土壌消毒剤の特徴

主な土壌消毒剤の特徴


◆蒸気・熱水消毒

 文字通り、土壌に蒸気や熱水を注入し、土壌中の温度を上昇させて消毒する方法である。病害虫を死滅させる原理は太陽熱と同じで、いかに土壌内部温度を60℃にまで上昇させるかが鍵である。
 この方法を実施するには、お湯や蒸気を発生させるためのボイラーや土壌に均一に注入するための設備や装置が必要であり、加えて土壌内に効率よく蒸気や熱水を行き渡らせるための工夫や技術が必要になる。課題は、導入のための設備投資と大量に消費する燃料のコストであるため、個人の導入というより、共同利用など地域一体となった大掛かりな取り組み向けの技術といえるだろう。


◆土壌消毒剤による消毒

 効果の安定性やコスト面から考えても、現在の技術で最も一般的なのが土壌消毒剤の使用による土壌消毒である。
 土壌消毒剤では、長い間臭化メチルが主流であった。しかし、1992年にモントリオール議定書契約国会合においてオゾン層破壊物質に指定されたため、先進国では、検疫や土壌ウイルス防除など不可欠な用途を除いて2005年に全廃することになった。その後、不可欠用途の許可数量は減り続け、国際的に「全廃すべき」との機運が高まり、12年に土壌用の臭化メチル使用の廃止が決定され、13年に土壌消毒用の臭化メチルは、日本国内からは例外なく姿を消した。
 その後は、指導機関等の努力によって、各地で開発が進められていた臭化メチル代替技術が普及されるようになった。その代替技術の主流となっている土壌消毒剤について、その特性を整理したので、それらを良く把握した上で、効率よく安全に利用願いたい。
 なお、臭化メチルと同様の活性を示し期待されたヨウ化メチルは、現在では土壌用途が登録失効となり検疫用(クリおよび木材関連)に限った登録となっているので、今回の紹介からは省いた。
 以下に主な成分の特性を示す。

【クロルピクリン】
商品名:クロールピクリン、ドジョウピクリンなど

 揮発性の液体で、土壌に注入することで効果を発揮する。激しい刺激臭がするので、使用時は、防毒マスク、保護メガネ、ゴム手袋など保護具の着用が必須である。その反面、ガス抜けが早いので、ガス抜き作業が基本的に不要なのが特徴である。最近では、灌注機や同時マルチ機などが普及し、より安全により楽に処理できるようになっているので可能であれば利用したい。クロルピクリン剤PVAフィルムに封入し、土壌に埋設するだけの簡単処理ができるようにしたクロピクテープやクロピク錠剤があるので適宜使用するとよい。主に、フザリウム病など土壌病害に効果を発揮する。

【D―D】
商品名:D―D、DC油剤、テロン

 主に、土壌センチュウに効果を発揮する。クロルピクリンに比べ、ガス抜けが悪いので、丁寧に耕起して、ガス抜き期間3?4日を確実において作付けに移る。ガス抜きが不十分だと薬害が起こるので注意が必要。

【クロルピクリン・D―D剤】
商品名:ソイリーン、ダブルストッパー

 クロルピクリンとD―Dを効率的に配合し、両成分の長所を活かした製剤とすることで幅広い病害虫雑草に効果を示す。刺激臭も、有効成分単剤のものより少なくなっており、比較的扱いやすい土壌消毒剤である。D―D同様、ラベル記載とおりのガス抜き期間をきちんと取る必要がある。

【ダゾメット】
商品名:ガスタード微粒剤、バスアミド微粒剤

 微粒剤を土壌に均一散布し、土壌の水分に反応して、有効成分であるMITC(メチルイソシアネート)を出して効果を発揮する。そのため、処理時には適度な水分が必要であり、ガス抜きも10?14日と比較的長い期間が必要である。主に土壌病害に効果を示す。

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