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農薬:現場で役立つ農薬の基礎知識2015

【現場で役立つ農薬の基礎知識2015】秋冬野菜の病害虫防除2015年7月30日

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適期逃さず素早く確実に

・発生状況をつかみ的確に防除
・主な問題病害虫とその防除対策

 夏から秋にかけてオオタバコガやハスモンヨトウなど大型害虫の発生が多くなる時期であり、秋冬野菜では特に被害が大きいので早めに防除の準備をしておきたい。防除全般にいえることだが、効率よく防除するためには、病害虫の生態や薬剤の特性をきちんとおさえた上で防除を組み立てると良い。今回、主要な病害虫防除のポイントと基礎的な知識を取材したので参考にしてほしい。また、文中に薬剤を紹介したり、主要な病害虫防除剤の適用農薬一覧を添付しているが、これらは薬剤を選ぶ際のヒントを示しているのみであり、紙面の関係上、希釈倍率などの実際の使用場面で必要なラベル情報は省いてあるので、実際に使用する際には、農薬のラベルの内容をよく確認してから使用していただきたい。

※この記事は2015年に掲載した内容です。最新記事はこちらをご覧ください。

現場で役立つ農薬の基礎知識「最新記事」はこちら

◆発生状況をつかみ的確に防除

 病害虫の発生様相はそれぞれ異なっており、それぞれで防除適期も異なる。さらに、農薬もそれぞれに特性(浸透移行力や幼虫にしか効かないものなど)があり、上手に防除するには、それらの個性を十分に把握した上で、それぞれに合った使い方の選択が必要になる。
 例えば、害虫が小さい時に散布しないと効きが悪い農薬の場合、対象害虫が既に大きくなってしまった時に使用しても効き目が薄くて効率が悪いし、病害が発生する前に散布しなければ効かない農薬を病害の発生後にいくら散布しても効果がなく、無駄な散布になってしまうので、このようなことがないよう注意が必要である。
 そのため、防除の前後には病害虫がどんな状況かをよく観察した上で防除対策を組み立てるのが望ましい。もちろん、毎年発生する病害虫で防除暦が定められているような場合には、それに従って適期を逃さず散布すればいいが、気候の影響等で発生の状況が変化した場合などは、発生状況の観察がとても重要であり、発生状況を確実につかみ、防除適期を逃さないようにしてほしい。


◆主な問題病害虫とその防除対策

【オオタバコガ】発生の初期に駆除

 オオタバコガは、ナス科やウリ科、アブラナ科、レタスその他多くの野菜や花卉を食い荒らす非常にやっかいな害虫である。盛夏から初秋にかけて被害が大きくなるので、オオタバコガの発生初期を逃さず防除し、発生期間を通じて定期的な薬剤散布が重要だ。特に果菜類では、食い入られる前に防ぐことができるようにする必要があり、発生予察情報に注意しつつ食い入り前に定期的な散布となるように心がけたい。
 効果のある薬剤としては、フェニックス顆粒水和剤やアファーム乳剤、スピノエース顆粒水和剤、トルネードフロアブル、プレオフロアブル、プレバソン顆粒水和剤の評判がよい。
 さらに最近ではキャベツやレタスなどの苗を植え付けてから1カ月近くも効果を発揮するセル苗灌注処理法が注目されている。この方法は、本圃前半の防除作業が省略でき、労力が軽減できる方法でセル苗を導入している場合は一度検討してみるとよい。

(表)オオタバコガ防除薬剤一覧(PDF:53KB)
(表)コナガ防除剤一覧PDF:70KB)

【ハスモンヨトウ】幼虫時徹底的に

 ハスモンヨトウは、ありとあらゆる作物を食い荒らす多食性の大変厄介な害虫である。年に5~6回も発生し、施設内であれば越冬できるので、冬でも発生することがある。
 時期的には8月~10月の被害が特に大きいので、これからの季節は最重点で防除に取り組んでほしい。
 この害虫の厄介なところは、6回ほど脱皮して蛹・成虫となる際に、齢期が進むにつれて薬剤が効きにくくなることである。特に最終の6齢幼虫だと防除が難しくなる上、食害量も多くなるので大きくなる前にしっかりとした防除が必要である。
 このため、薬剤がよく効く幼虫がまだ小さい時期からの徹底防除が重要で、発生初期からの発生期間を通じた定期的な防除が必要となってくる。
 指導機関等の資料で防除薬剤としての評価が高いのは、フェニックス顆粒水和剤、プレオフロアブル、プレバソン顆粒水和剤の3剤であり、古くからの薬剤では、アファーム乳剤、オルトラン水和剤、コテツフロアブル、ジェイエース水溶剤、ランネート45DFなども高評価である。

(表)ハスモンヨトウ防除薬剤一覧PDF:57KB)


【ナモグリバエ】育苗期が"要注意"

 ナモグリバエは、多くの葉菜類に寄生し葉に絵かき症状を示す害虫である。特に、レタスでは心葉への加害で枯死など大きな被害を起こすことも多いので、常に発生する地域では、育苗期や発生初期の徹底した防除が必要である。
 防除薬剤では、モスピラン粒剤などの植穴処理やリーフガード顆粒水和剤やアファーム乳剤などは散布効果が高い。特に植え付け初期の被害を防ぎたい場合は、ジュリボフロアブルなどを育苗期後半にセルトレイに処理する方法も登場しているので、一度試してみるとよい。

(表)ナモグリバエ防除薬剤一覧(54KB)


【ネコブセンチュウ】耕種的防除も採用

 土壌中にいるセンチュウが野菜の根に寄生して根にコブを形成させ、根の機能を低下させることにより、生育不良や葉の黄変などを起こす。トマトやサツマイモなどの被害が多く、被害の多くはサツマイモネコブセンチュウによるものである。
 防除対策としては、センチュウの密度がまだ少ない時には、ネマトリンのような土壌処理粒剤の効果が高く、散布労力も少なくて済む。しかし、密度が高くなってくると土壌処理粒剤でも効果が減ってくるので、その場合には、ソイリーンなど土壌消毒剤による徹底防除が必要になってくる。
 しかし、センチュウは土壌の深いところに生存している場合もあり、根絶させるのは難しい。このため、対抗植物「マリーゴールド」の作付や太陽熱消毒など耕種的防除と組み合わせて総合的な防除が行うように心がけたい。


【根こぶ病】排水の良い圃場に

 根っこに大・小不揃いのコブをつくり、根っこの機能を低下させ、生育不良やひどい場合には枯死させる病害で、アブラナ科全般に発生する。病原菌は、耐久体をつくって土中に5~6年という長期間生存する厄介な病害で、アブラナ科を連作する限り病原菌が土壌中に増え続け、なかなか減らない。土壌水分が多く、酸性圃場での発生が多いので、排水をよくして土壌の水分を下げたり、石灰窒素や石灰の施用による土壌のアルカリ化が防除の基本だ。
 防除薬剤には、作条土壌処理もしくは全面土壌処理を行うものにフロンサイド粉剤やネビジン粉剤、ネビリュウ、あるいは新剤であるオラクル粉剤などがある。
 その他、セル苗灌注によって定植初期の根こぶ病感染を防ぎ、被害を少なくできる方法がある。これは、散布の手間が省け、使用する薬量も少なくて済むので省力的な方法だ。

(表)根こぶ病防除薬剤一覧PDF:52KB)


【べと病】早めに薬剤散布を

 葉に、黄色~淡褐色(ハクサイ)や淡黄緑色(キャベツ)、淡黄褐色(ブロッコリー)の葉脈に囲まれた不整形病斑をつくり、秋~冬の多湿時に発生が多くなる。
 病原菌は、べん毛菌類と呼ばれる湿度を好むカビで、感染から発病までの期間が短く、気付いた時には既にかなりの範囲で病気が広がっている可能性が多いので、発生が多い時期には、丁寧な観察が必要だ。
 このため、病気が発生する前の予防的散布の効果が最も高いので、発生前から定期的な散布を心がけ、もし初期病斑を発見したら、発病初期に徹底して防除を行うことが重要だ。
 散布の際には、葉の裏にもしっかりと薬剤が届くよう丁寧に散布し、特に降雨など湿度が増す恐れがある場合などは、早め早めに薬剤散布を行うことを心がける。
 薬剤防除は、予防効果に優れ残効も長い保護殺菌剤(ジマンダイセン、ダコニール、ペンコゼブなど)をローテーション散布の基本として、少しでも病勢が進むようなら速やかに治療効果が期待できる薬剤(アミスターフロアブルやリドミルMZ)などを使用して、病勢を止めるようにするとよい。ただし、治療効果が期待できる薬剤は、耐性菌発生のリスクがあるので、指導機関の指導に従って注意して使ってほしい。

(表)黒腐病防除薬剤一覧PDF:53KB)

(表)べと病防除薬剤一覧PDF:83KB)

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