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農薬:現場で役立つ農薬の基礎知識 2017

最重要時期は被害を受けやすい5~6月 【ミカンの病害虫防除のポイント】2017年5月1日

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佐賀県上場営農センター田代暢哉

 ミカン(カンキツ)の病害虫防除を実施するうえで、5月から6月下旬にかけては最も重要な時期にあたる。その理由は、(1)開花期から幼果期にかけては病害虫の被害を最も受けやすい時期であること、(2)発病・発生初期段階で抑えておかないと、その後の対応が困難になるからだ。そこで、この時期を中心にしながら、ミカン(カンキツ)の病害予防や害虫駆除など、防除のポイントについて、佐賀県上場営農センターの田代暢哉氏に執筆いただいた。

※この記事は2017年に掲載した内容です。最新記事はこちらをご覧ください。

現場で役立つ農薬の基礎知識「最新記事」はこちら

◆主要病害と防除のポイント

【そうか病】
ミカン デランフロアブルの散布が基本です。デランにかぶれる場合、ストロビーやナリアWDG、ファンタジスタ顆粒水和剤を用います。落弁期以降にデランフロアブルを散布し、その後にマシン油乳剤を近接散布すると、果実に薬害を生じることがあるので注意が必要です。

【灰色かび病】
 ストロビー耐性菌が増加傾向にあります。そうか病との同時防除を兼ねて、ナリアWDGやファンタジスタ顆粒水和剤を使います。極早生品種や早生品種では落弁期頃からの黒点病対策が必要なので、マンゼブ水和剤を混用します。

【黒点病】
 耐雨性に優れるマンゼブ水和剤(ペンコゼブ、ジマンダイセン)を散布します。梅雨期の集中豪雨は一日で数百ミリに達することもあり、600倍での効果は不安定です。500倍でも600倍と同程度です。安定した効果を期待するためには、400倍で使用します。400倍ではチャノキの被害も抑制されます。なお、97%マシン油乳剤やパラフィン系展着剤のアビオンEの加用で耐雨性が高まります。
 また、9月以降の後期被害が目立っています。マンゼブ水和剤は4回までの使用に限られるので、もう使えない場合には、オキシラン水和剤やストロビーで対応します。

【褐色腐敗病】
 急激に蔓延するので、発生してからの散布では手遅れです。過去に被害を受けた園では予防策として8月下旬~9月上旬に後期黒点病との同時防除を兼ねてマンゼブ水和剤を散布します。

【かいよう病】
 本病の防除は3~5月に重点的に行っておかなければなりません。5月下旬までの散布で春葉に病斑を作らせないことが、果実発病を抑えるために必須です。果実に発病してからの対応では手遅れです。とはいっても、発生した園では被害の拡大を抑えなければなりません。
 無機銅剤のなかで効果が最も高いのはICボルドーです。果実でスターメラノーズが問題になる梅雨明け以降は希釈倍数を200倍とし、さらに炭酸カルシウム剤(クレフノン等)を200倍で加用します。
 台風の通過後に被害が拡大するので、必ず襲来前に無機銅水和剤を散布しておきます。台風が近づいてくると、他の対策に手をとられるので、早めに散布したほうが無難です。襲来一週間前の散布でも十分です。
 抗生物質剤のマイコシールドとの混用散布を行う場合は襲来3日前頃が適期です。台風が通過した後の散布では効果はありません。

【果実腐敗】
 腐敗果実の発生は取引価格の低下と産地のイメージダウンにつながるので、徹底した対応が必要です。ベンレート水和剤あるいはトップジンM水和剤とベフラン液剤25とを混用して散布します。混合剤のベフトップジンフロアブルも同様の効果があります。

◆主要害虫と防除のポイント

【果樹カメムシ類】
 山林からの飛来時期・量は地域や場所によって大きく違うので、防除所や普及センター、農協が出す情報に気を配り、飛来が予想される時期が近づくと、園内で毎日、カメムシ類の存在の有無を確かめることが大切です。園内で一頭でもカメムシ類を見つけたら直ちに薬剤散布を行います。園内にいるカメムシ類は小数でも大量飛来の呼び水になるからです。
 使用する薬剤はテルスター水和剤やマブリック水和剤、MR・ジョーカーなどの合成ピレスロイド剤またはアルバリン顆粒水和剤やスタークル顆粒水和剤などのネオニコチノイド系剤です。有機リン剤の残効は極めて短いので、大量飛来が予想されている場合は使用しません。
 なお、合成ピレスロイド剤やネオニコチノイド系剤を散布するとミカンハダニが急激に増殖するので、果実にまでミカンハダニの被害が及ぶようであれば殺ダニ剤の散布が必要です。

【ミカンサビダニ】
 梅雨明け後の散布では手遅れで、6月上旬からの早めの対応が必要です。サビダニ専用剤としてサンマイト水和剤やダニカット乳剤、オサダンフロアブルがあります。スリップス類の被害が多い園では同時防除剤としてコテツフロアブルやマッチ乳剤、ハチハチフロアブル、アニキ乳剤を用います。多発が心配される園では、8月下旬に散布する殺ダニ剤にミカンサビダニにも活性の高い種類を選びます。

【マルカイガラムシ類】
 収穫前になって被害に気づく場合が多く、手遅れになりやすい害虫です。冬季にマシン油乳剤を散布することが少なくなったこと、6月に使用される殺虫剤が有機リン剤から本種に効果の低いネオニコチノイド系剤へシフトしていること、散布ムラが多いこと(特にスプリンクラー散布やSS散布の場合)が最近の多発生の原因です。
 他のカイガラムシ類よりも早い5月下旬からの散布が必要です。8月下旬の仕上げ摘果の際に寄生果実を見つけたら、直ちに有機リン剤を散布します。

【ミカンハダニ】
 果実への寄生は商品価値を大きく低下させるので、 8月下旬から9月上旬にかけて殺ダニ剤を散布します。この時点で発生していなければその必要はありません。その後の発生に応じて対応します。殺ダニ剤の効果低下の問題は以前に比べて少なくなっており、多くの剤で安定した効果が期待できます。
 ただし、抵抗性の発達を遅らせるために、同一薬剤を毎年連続して使ってはいけません。ここ数年で使用していない殺ダニ剤を散布します。

【表1】表

表1のPDFはこちらから

【表2】表

表2のPDFはこちらから

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