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農薬:現場で役立つ農薬の基礎知識2019

【現場で役立つ農薬の基礎知識2019】いもち・ウンカ防除は計画的に2019年6月21日

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 ちょうど幼穂形成や必要茎数確保に大変重要な時期を迎えている稲作。前回は、この時期に不可欠な病害虫防除のポイントを整理したが、概念的な内容にとどまっていたので今回は、イネいもち病を例として実践的な防除のポイントを紹介する。

【いもち病】

 

◆特性と防除戦略

 まず、いもち病について復習したい。
 いもち病は、糸状菌(かび)が引き起こす病害で、25~28度の温度と高湿度を好む。また、感染には水滴が必要で、稲体に水滴が付着するような天候が長時間続くときに多く発生する。
 そのため、稲体を乾燥状態に保つことができれば発生することはほとんどなく、カラ梅雨など乾燥が続くような天候ではいもち病の心配はしなくてもよいことになる。
 しかし、実際には、しとしと雨の続く本格的な梅雨の時期に田んぼを乾燥状態にすることは絶対不可能なので、実際の田んぼでは、稲体乾燥大作戦は通用しない。
 このため、発病前の予防防除をしっかり行うことが、いもち病防除の王道である。

 

 

◆防除剤の特徴と選び方

 表(主ないもち病防除剤の特性一覧)に示したように、いもち病防除の有効成分には、8系列15有効成分(ピロキロン除放性とピロキロンを別にカウント)がある。15有効成分のうち11成分が予防的効果主体で、治療的効果を示す有効成分(発病してからも散布できる)は4成分である。
 この治療効果を示す有効成分4つのうち3つはすでに耐性菌の発生が確認されている。単成分では使用できないため、メラニン合成阻害(R)系列の有効成分との混合剤が使用されている。
 このうちストロビルリン系薬剤は、すでに多くの地区で耐性菌の発生が確認されているため、使用の際は、事前に耐性菌の発生状況を確認しておく必要がある。
 現在、よく使われている有効成分は、抵抗性誘導剤、メラニン合成阻害(R)、メラニン合成阻害(P)・抵抗性誘導の3つの系列がある。育苗箱処理で使用するものは抵抗性誘導剤を成分とするもの、本田散布では、メラニン合成阻害(R)、メラニン合成阻害(P)・抵抗性誘導の2つの系列のものが多い。

20190621 現場で役立つ農薬の基礎知識2019 いもち病図 

(1)育苗箱処理剤

 育苗箱処理は、長期に効果を持続する必要があるため、抵抗性誘導を有効成分に含むものを選定するとよい。いずれも、紋枯病や初期害虫、ウンカ類、チョウ目害虫を同時防除するために、3、4種の混合剤が主体となっているため、紋枯病や害虫の発生状況に合わせて有効成分の組み合せを選ぶようにしてほしい。

 

(2)本田処理剤

 本田処理に使う農薬は、粒剤や豆つぶ剤、ジャンボ剤、フロアブル等の水希釈で散布するものや、粉剤など様々な剤型があるので、所有している散布機器に合わせて剤型を選ぶ。豆つぶなど拡散性の高い製剤は、散布器がなくても、畦畔から製剤そのものを手や柄杓(ひしゃく)で投げ入れるだけで水田全面に拡散する。とても楽に散布できる製剤なので一度試してみるとよい。
 有効成分別では、メラニン合成阻害(R)かメラニン合成阻害(P)・抵抗性誘導を中心に選ぶようにする。いずれも予防剤なので、ラベル記載の使用方法を守って発病前に必ず散布してほしい。
 本田散布でも、いもち病防除の基本は予防散布だ。梅雨など発生が予想される時期に入る前に、ラベル記載の使用適期に合わせて確実に散布するようにしてほしい。
 特に抵抗性誘導剤の場合は、散布してから稲の抵抗性が出てくるまでに時間がかかるので、いもち病の発生が予想される時期より前のラベル記載の散布適期を逃さずに散布するようにしてほしい。
 もし、いもち病が発生してしまったら、治療効果を有する有効成分が入った農薬を選んで散布する。その際は、ウンカ類やカメムシ類、いもち病以外の病害の発生状況を確認し、それらも同時防除できる農薬を選ぶようにしてほしい。

 

【うんか等害虫】

 

20190621 現場で役立つ農薬の基礎知識2019 ウンカ等害虫図 

◆主な害虫防除剤の特性と防除戦略

 本田期に発生する害虫は、トビイロウンカなどのウンカ類、ツマグロヨコバイ、カメムシ類、イネツトムシ、ニカメイチュウ、フタオビコヤガなどが主なもの。
 それらの害虫防除に使用される有効成分は表のとおりで、9系列20成分が主なものだ。
 多くの害虫は、発生初期であれば発生を確認してからの緊急散布で間に合うことも多い。
 ところが、害虫によっては発生前に予防的に散布した方が良い場合もある。例えば、イネツトムシ(チョウ目)のように、幼虫がツトを作ってしまう前に散布しないと効果がうまく出せないもの。さらに、ウンカなどのように、いつ飛んでくるかわからず、大量に飛来されたら緊急防除をおこなってもかなりの被害を受けてしまうような害虫の場合である。
 このような害虫対策としては、予防散布をして、準備万端で迎え撃つ方が効果が安定する。特に、縞葉枯病ウイルスを保毒したヒメトビウンカがやってきた場合は、吸汁されてしまうとウイルスをうつされてしまうので、縞葉枯病の発生が多い地域では、確実に予防散布しておきたい。
 最近は、トリフルメゾピリムなど、育苗箱処理後に長期間効果が持続する成分が多数あるので、発生する害虫に合わせて、これらの剤を使うと効率の良い防除が可能となる。
 ただし、ウンカ類にはネオニコチノイド抵抗性害虫が発生している地域があるので、そのような場合の薬剤の選択は指導機関に相談してほしい。

 

◆本田処理殺虫剤の選び方

 育苗箱で長期に持続する成分が使われていると害虫の発生密度を低く抑えられるため、本田で使う農薬も効果が出やすい。このため、育苗箱で防除できる場合は、育苗箱処理と併用して防除を組み立てるとよい。
 本田処理に使う殺虫剤は、殺菌剤と同様に、粒剤や豆つぶ剤、ジャンボ剤、フロアブル等の水希釈で散布するもの、粉剤など様々な剤型があるため、所有する散布機器に合わせて剤型を選ぶ。
 害虫にも最も効果の出やすい防除適期がある。防除適期は、農薬のラベルや技術資料に詳しく書かれているので、それを十分に把握して逃さずに防除してほしい。
 残念ながら、防除適期を逃すと効果が落ちる殺虫剤も多いので、しっかりと適期を守ってほしい。
 また、ネオニコチノイド系やフィプロニルでは薬剤抵抗性が報告されているため、これらを使用するときは、指導機関等に確認するようにしてほしい。

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