農薬:防除学習帖
【防除学習帖】第23回 雑草防除の基礎知識<3>2019年10月18日
農作物を耕作する際に常に悩まされるのが雑草。前回までに雑草の種類とその生理について紹介した。これらを把握した上で、それぞれにあった除草方法を選択していくことになるが、今現在で“除草”を最も効率的に行うことができるのは、除草剤である。今回は除草剤を使う上で必要な基礎知識である農薬ラベルの意味について整理する。
1.農薬ラベルとは
除草剤に限らず全ての農薬は、毒性試験や生物効果試験、薬害試験など数々の試験をこなしてデータを取得し、それを国に申請し、適用作物と適用病害虫草、使用方法、使用回数など、正しい使い方について認可・登録を受けて初めて農耕地で使うことができる。
この適用作物や適用病害虫などが記載されたものが俗にいう農薬ラベルである。
【適用雑草及び使用方法】(農薬ラベルの例)
この農薬ラベルは、(公財)日本植物調節剤研究協会や各都道府県の農業試験センター等が実施した試験データをもとに、最も効率的かつ高い効果が得られる使用方法が記載されている。また、農薬取締法上も守らなければならないものであるので、農薬ラベルの意味を良く理解し、その内容に従って正しく使う必要がある。
2.農薬ラベルへの記載内容
では、除草剤の農薬ラベルに記載されている内容と実際に使用する場合の注意点を紹介する。
(1)適用作物名
この欄にはその除草剤を使用できる作物名が書かれている。例にある、移植水稲、直播水稲の他、麦、大豆、各種野菜など、文字通りその除草剤が農薬登録を取得し、使っても良い作物名が並んでいる。まずは使いたい作物で登録があるか確認する。
(2)適用雑草名
実際の試験で、示された使用方法で十分な除草効果のあった雑草が記入されている。使える草種が多い場合は、水田一年生雑草とか、一年生イネ科雑草、一年生広葉雑草、畑地一年生イネ科雑草、畑地一年生広葉雑草などと、ひとくくりで書いてある場合もある。除草剤によっては、イネ科雑草が得意とか広葉雑草が得意といった特徴があり、枯らすことができる雑草が限られていることがあるので、枯らしたい雑草が含まれているかは、ここで確認する。
水田の多年生雑草は、除草剤ごとに効く効かないが分かれることが多いため、枯らすことのできる雑草がずらりと書かれていることが多い。
(3)使用量
基本的に10アール(1反)あたりに散布する量が書かれており、粒剤の場合はここに書かれている数量を10アールに均一に散布する。例では、水稲で使う1キロ粒剤なので、10アールに1キロの粒剤を均一に散布する。
これが、液状で散布する除草剤(液体の除草剤を水に希釈して散布するもの)の場合は、少し表記が違うので注意が必要だ。この場合、使用量欄が2つに分かれ、使用量と希釈水量という書き方になっている。
○使用量:10アールに投下するボトルに入っている希釈前の原液の量
○希釈水量:希釈後の除草剤希釈液を10アールに何リットル散布するかを示している。
例えば、登録が使用量200~500m?/10a 希釈水量50~100?/10aという除草剤で散布の実際例を示す。
まず希釈水量(=散布水量)を決めると良い。どれだけの散布水量とすればいいかは、使用する除草剤や雑草の発生状況(発生前なのか生育期なのか)によって増減しなければならないが、一般的に10アールに100リットルの水量があれば、その面積全体の土壌表面に均一あるいは生えている雑草にたっぷりかけられるだけの水量となる。ここでは、散布量を少な目に50リットルの希釈水量を散布しようとすると、使用量下限の場合は200ミリリットルの原液を50リットルに、使用量上限の場合は500ミリリットルの原液を50リットルに希釈して、その希釈水量を10アールに撒ききれば良い。
(4)使用時期
使用時期は、その除草剤が一番効果を発揮する時期でもあるので、この時期を逃さず使用するようにする。
例では、移植水稲の使用時期:移植直後~ノビエ3葉期(ただし、移植後30日まで)の場合、ノビエが3葉期に達するまでの間に必ず使うようにする。
何故なら、除草剤は、ノビエの葉齢によって効く効かないがあり、どの葉齢までを枯らせるかを葉齢限界といっている。この例による除草剤の場合、ノビエの3葉期までは枯らせるが
、それを超えると枯らせない(取りこぼす)ことが多くなるという意味になる。現在、初中期一発型といわれる除草剤のヒエの葉齢限界は2.5葉が目安である。(図参照)
近年、温暖化によってヒエの葉齢が早く進むことが多いので、出来るだけ早く(この例の場合は移植直後)に散布すると効果も安定する。近年の除草剤は残効も長いので、散布適期が遅れて取りこぼすよりも、使用時期での早めの散布で確実に除草した方が効率良い。
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