農薬:防除学習帖
【防除学習帖】第25回 雑草防除の基礎知識<5>2019年11月1日
前回までに除草剤を使う上で必要な基礎知識である農薬ラベルの意味のうち、作物名から使用時期、使用回数、使用方法、使用上の注意事項について紹介した。今回は、除草剤を安全に使用する上で重要な薬害に関する注意事項について、なぜそのような注意事項がつけられているか、その理由について整理してみた。
2.農薬ラベルへの記載内容(前回からの続き)
(8)薬害に関する注意事項
例1:以下のような条件下では薬害が発生するおそれがあるので使用をさけてください。
・砂質土壌の水田および漏水田(減水深が2cm/日以上)
・軟弱苗を移植した水田
・極端な浅植えの水田および浮き苗の多い水田
(解説)
これは水稲除草剤につけられている基本的な注意事項である。
除草剤の薬害の多くは、イネの生長で最も大切な器官である根や生長点(根の基部にある)と除草剤の成分とが接触することによって発生する。
水稲除草剤は、湛水中の水田に散布され、水を介して均一に拡散し、土壌表面に除草剤の成分が均一に覆う処理層と呼ばれるものをつくって除草効果を発揮する。
田植えがきちんとなされると根や生長点は土壌の中に埋まっており、土壌表面にできた除草剤の処理層に触れることはなく、薬害が起こることはない。しかし、砂質土壌の水田および漏水田(減水深が2cm/日以上)では、水の流れに乗って除草剤成分が土壌表面から根や生長点のある土壌表面下部の方へ移動しやすく、根や生長点に除草剤の成分が触れる可能性が高くなり、薬害が発生しやすくなる。
一方、軟弱苗は、処理層に触れている茎の部分が柔らかく撥水性も少ないことから、除草剤の影響が受けやすく、薬害も出やすくなる。
また、極端な浅植えや浮き苗は、根や生長点が土壌表面に露出している可能性が高い状態であり、それらが除草剤の処理層に直接触れる機会が多くなるため薬害の発生が多くなる。
例2:直播水稲に使用する場合、以下の点に注意してください。
・発芽直後の稲に対して薬害を生じるおそれがあるので、稲の出芽が揃わない場合は、稲の不完全葉期以降に散布してください。
・稲の根が露出した条件では薬害を生じるおそれがあるので使用をさけてください。
・除草効果の低下と生育抑制の薬害が発生するおそれがあるので、水持ちの安定した後に散布してください。
(解説)
イネに限らず、種子から発生する植物の発芽間もない段階で最も影響を受けやすい時期である。特に直播であれば、根も生長点も土壌表面に近く、除草剤の処理層に触れやすい位置にある。このため、発芽が揃っていない時や根が露出しているような状況では薬害が発生する可能性が高くなるので、注意喚起されている。
例3:水に関する注意
・除草効果の低下と生育抑制の薬害が発生するおそれがあるので、水持ちの安定した後に散布してください。
・梅雨時期等、散布後に多量の降雨が予想される場合は、除草効果が低下するおそれがあるので使用をさけてください。
(解説)
水持ちが安定しないということは、水持ちが悪かったり、どこかで漏水している可能性があるということであり、水の流れにのって根や生長点に除草剤成分が触れやすくなる可能性を示している。また、除草剤は、散布後24時間~72時間かけて水田の土壌表面に処理層をつくって除草効果を発揮するので、その処理層が出来上がる前に大量の降雨などがあると、田面水とともに除草剤成分が水系に流出し、水田内に残っている除草剤成分が十分な効果を発揮する量よりも少なくなり、除草効果が低下してしまうことになる。
例4:散布後の数日間に著しい高温が続く場合、初期生育が抑制されることがあるが、一過性のもので次第に回復し、その後の生育に対する影響は認められていません。
(解説)
イネに限ったことではないが、生物は生命活動を営む適温よりも高温にさらされると正常な生命活動を維持しづらくなる。人間でいうと夏バテ状態であり、除草剤の影響を受けやすくなる。特に除草剤の散布時期というのは、まだイネが小さく弱い時期でもあって影響が大きく見えやすくなる。
例5:散布した水田の田面水を他の作物の灌水に使用しないでください。
その殺草特性から、いぐさ、れんこん、せり、くわいなどの生育を阻害するおそれがあるので、これらの作物の生育期に隣接田で使用する場合は十分に注意してください。
(解説)
近年の水稲除草剤は、低濃度で高い除草効果を発揮する有効成分が多い。そして、処理後の田面水、特に散布から72時間ころまでの田面水には、散布された除草剤の有効成分が他の作物への影響が大きい濃度で含まれる可能性が高い。
特に、この例に挙げられている作物は、水稲除草剤が防除対象としている雑草と同じ仲間でもあり、除草剤を使用した後の田面水の影響を受けやすい。もちろん、野菜など他の作物の生育にも大きな影響を与えるので、田面水を灌水には絶対に使用しないようにする。
また、水田の場合、隣の水田の水尻が隣の水田の水口であると、使用した除草剤を含む田面水が隣の水田に流れ込むことがあるし、畦畔で隔ててはいるが、隣接水田の田面水が流出している場合(ケラやアメリカザリガニ、モグラ穴など)もあるので、隣接水田に影響の大きい作物があるような場合は、十分に配慮に行うようにしたい。
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