農薬:防除学習帖
【防除学習帖】第32回 水稲の雑草防除32019年12月20日
水田雑草には、大きく分けてイネ科雑草とイネ科以外の広葉雑草があることは既に紹介した。
水田初期には、ノビエをはじめマツバイ、ホタルイ、ヘラオモダカ、ヒルムシロ、ウリカワなどが発生し、後半になってくるとホタルイやウリカワ、クログワイ、オモダカといった厄介な雑草が増えてくる。これらを退治する除草剤は、複数の雑草を退治できるよう、効果を発揮できる雑草が異なる複数の有効成分を組み合わせて作られているのが一般的だ。
それぞれの有効成分の効果の持続期間や作用性によって、初期剤であったり、一発剤、中期材、後期剤であったりと使用場面が異なってくる。
現在使用されている主な有効成分と効果を示す雑草の一覧を表にしたので参考にしてほしい(表1)。
(表1)ノビエ葉齢と有効成分名
なお、除草成分の効果を発揮する雑草の種類といった特性は、各社のHP等の情報をもとに作成しているものの、実際の製剤になった場合は対象の草種が異なる場合もあるので、必ず製品の農薬ラベルを確認して使用するようにしてほしい。
一般に、水稲除草剤を構成する除草成分は、ノビエを枯らすヒエ剤、ノビエ以外の雑草を枯らす広葉剤、少し特性が違うカヤツリ剤の3種に分けられる。一覧表もその有効成分がどの分類に属するかを分けてあるので参考にするとよい。
以下、この分類別に主な除草成分を紹介する。
1.ヒエ剤
除草剤の登録でいうノビエとは、タイヌビエ、ケイヌビエ、ヒメタイヌビエといった雑草の総称である。代かき直後から発生し始めるので、代かきから移植までの期間が開いているときなど移植時には除草剤の使用適期を超過した大きさになっている場合もあるので、そのような場合に、移植前に一度ヒエ防除を目的とした初期除草剤を使用することが多い。
特に、直播水稲などでは、イネの生育よりノビエの生育が早いとイネの初期生育に大きな影響があるので、初期のヒエ防除が欠かせない。
これらのヒエを防除するのがヒエ剤である。ヒエ剤の場合、枯らすことのできるヒエの葉齢で分けられており、その葉齢が大きいほど使える適期の期間が長くとれる。田んぼの場合、代かきや田植えから何日か過ぎると、すべてのヒエの葉齢が揃っていることは少なく、発芽したてから1.5葉のものもあれば2~3葉のものもいるのが一般的だ。このため、一般に田植えから7日を過ぎるとできるだけ高葉齢のヒエにも対応できる除草剤の方が効果は安定している。
ともかく、ヒエの防除には、処理時のヒエの葉齢を必ず意識し、その葉齢にあったヒエ剤を含有する除草剤を選択する。
もう一つ、ヒエ剤で忘れてはならない特性が残効性である。残効、つまり一度散布した除草剤がどのくらいの期間効き続けてくれるかということである。
一度散布すれば、収穫が終わるまで雑草が生えないでいてくれれば理想的だが、残念ながらそのような除草剤は存在しない。ヒエ剤の中で、一番長い残効があるといわれているのが、オキサジクロメホンであり、処理後60日程度のヒエへの残効がある。それも、田んぼの性質(水持ちがいいのか悪いのか)、腐植が多いか少ないなどでその期間は変わってくる。
ただ、処理後60日程度ヒエの発生を抑えてくれれば、その時はイネもすっかり大きくなっているので、除草剤の効果が切れたあとに生えてきたヒエに生育で負けることはない。ただし、暖地などで後発生のヒエが出穂してしまうような場合には、後発生のヒエ防除が必要になるので注意が必要だ。
重要な記事
最新の記事
-
基本法施行後初の予算増確保へ JAグループ基本農政確立全国大会に4000人 生産者から切実な訴え2024年11月22日
-
「適正な価格形成」国関与で実効的に JA群馬中央会・林会長の意見表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
JAグループ重点要望実現に全力 森山自民党幹事長が表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
農林水産省 エン・ジャパンで「総合職」の公募開始2024年11月22日
-
鳥インフル 米モンタナ州、ワシントン州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
11月29日「ノウフクの日」に制定 全国でイベント開催 農水省2024年11月22日
-
(411)「豚ホテル」の異なるベクトル【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月22日
-
名産品のキャベツを身近に「キャベツ狩り選手権」開催 JA遠州中央2024年11月22日
-
無人で水田抑草「アイガモロボ」NEWGREENと資本業務提携 JA三井リース2024年11月22日
-
みのるダイニング名古屋店開業2周年「松阪牛ステーキ定食」特別価格で提供 JA全農2024年11月22日
-
【スマート農業の風】農業アプリと地図データと筆ポリゴン・eMAFF農地ナビ2024年11月22日
-
自動運転とコスト【消費者の目・花ちゃん】2024年11月22日
-
イチゴ優良苗の大量培養技術 埼玉農業大賞「革新的農業技術部門」で大賞受賞 第一実業2024年11月22日
-
「AGRIST Aiサミット 2024」産官学金オープンイノベーションで開催2024年11月22日
-
厚木・世田谷・北海道オホーツクの3キャンパスで収穫祭を開催 東京農大2024年11月22日
-
大気中の窒素を植物に有効利用 バイオスティミュラント「エヌキャッチ」新発売 ファイトクローム2024年11月22日
-
融雪剤・沿岸地域の潮風に高い洗浄効果「MUFB温水洗浄機」網走バスに導入 丸山製作所2024年11月22日
-
農薬散布を効率化 最新ドローンなど無料実演セミナー 九州3会場で開催 セキド2024年11月22日
-
能登半島地震緊急支援募金で中間報告 生産者や支援者が現状を紹介 パルシステム連合会2024年11月22日