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農薬:防除学習帖

【防除学習帖】第33回 水稲の雑草防除42019年12月27日

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 前回までに水田初期に使う初期剤について紹介した。今回は、現在の水田雑草防除の主流である一発除草剤について。

 一発剤が登場する前は、水田雑草防除の主流は、初期剤+中期剤の体系処理だった。その後、枯らせる雑草が多く、長く効く有効成分が開発され、水稲初期に1剤だけを使っても、体系処理並の効果を発揮する除草剤が登場した。それが一発剤である。

 一発剤は、基本的にヒエ剤+広葉剤の組み合わせでつくられており、含有しているヒエ剤の性能によって、使用時期が異なってくる。一般にヒエの2葉期までを枯らし移植後5日~7日後くらいまでに使用するものを初期一発剤、ヒエの2.5葉期以上を枯らし、移植後14日後位までに使用するもの(移植後20日頃でも使用できるものもある)を初中期一発剤という。ただし、ヒエ剤の項でも紹介したが、除草剤は雑草の発生前に処理する方が効果は安定するので、田植後に日にちが経っても(ヒエの高葉齢でも)使える除草剤であっても、できるだけ早く使う方が良い。なぜなら、広い田んぼの中では、ヒエの葉齢を確認した場所以外で、一部では既に除草剤の葉齢限界を超えているヒエがいるかもしれないからである。取りこぼしを減らし、確実に効かせるために、早めの使用を心がけるようにすると良い。また、一発剤の残効は、含まれる除草成分の性能にもよるが、だいたい40日~50日程度のものが多い。
 一発剤に含まれる広葉剤は、大きく分けて4-HPPD阻害剤(白化剤)とALS阻害剤に分けられ、現在、両剤ともに多くの除草成分が開発され、多くの製品が供給されている。
 以下、それぞれの剤の概要を紹介するが、主な広葉剤の特性については、一覧表を確認してほしい。なお、除草成分の効果を発揮する雑草の種類といった特性は、各社のHP等の情報をもとに作成しているものの、実際の製剤になった場合は対象の草種が異なる場合もあるので、必ず製品の農薬ラベルを確認して使うようにしてほしい。

1.4-HPPD阻害剤
 雑草の体内では、光合成に必要な物質をつくる働きをする4-HPPD(p-ヒドロキシフェニルピルビン酸デオキシゲナーゼ)という酵素がある。この酵素の働きを阻害(邪魔)することで、光合成に必要な細胞内の機能が奪われ、生育抑制や白化という症状が起こり、やがて枯死に至る。この系統の除草剤が枯らすことのできる雑草の範囲は広く、スルホニルウレア系除草剤抵抗性雑草はもちろん、オモダカ、ホタルイといった多年生雑草にも効果を示す他、近年問題となっているイボクサやクサネム、アメリカセンダングサなどにも効果を示すものもある。
 この系統の除草剤の歴史は古く、一発剤の創成期に登場したピラゾレート(ウリホスなど)やピラゾキシフェン(ワンオールなど)、スルホニルウレア系除草剤抵抗性雑草剤として広く使われたベンゾビシクロン(シリウスエグザ、イネキングなど)、ベンゾフェナップ(スマート、ピラクロエースなど)などがある。
 その後、新世代の4-HPPD剤としてテフリルトリオン(ジェイフレンド、ボデーガードなど)やメソトリオン(アピロトップMX、アピロキリオMXなど)が登場し、現在の主流となっている。
 さらに、従来と作用性の異なる新しい4-HPPD剤としてフェンキノトリオン(ベルーガ、エンペラー)といったものも登場してきた。現在、この系統の除草剤は数多くあるので、残効性や田んぼに生える雑草の種類などを考慮して選択するようにしたい。
 なお、この系統の除草剤は、従来品種への安全性は高いが、新規需要米向け水稲品種「ハバタキ」「タカナリ」「モミロマン」「ミズホチカラ」「ルリアオバ」「おどろきもち」「兵庫牛若丸」に対して、特異的に強い生育抑制を起こし、収量減などの被害が起こるので、これらの品種を作付けする場合には使用することはできない。(ただし、新規のフェンキノトリオンの場合は使える品種もあるので、農薬ラベル等でよく確認してほしい)

2.ALS阻害剤
 生物である雑草には、生きていくために必要な必須アミノ酸というものがある。雑草体内で、このアミノ酸を生合成する時に働くのがアセトラクテート合成酵素(ALS)であり、ALS阻害剤は、この酵素の働きを阻害(邪魔)することで必須アミノ酸を造らせなくする。その結果、雑草は、細胞分裂が阻害されて、生育が停止し、枯死に至る。
 このため、ALS阻害剤の処理時に生えていた雑草はすぐには枯れず、一旦生育が停止してだんだん枯れていくといった過程を踏むのが特徴だ。
 日本で最初に水稲除草剤として登場したのが、ベンスルフロンメチル(ザーク、トップガンなど)であり、その後、ピラゾスルフロンエチル(シリウス、スパークスターなど)、イマゾスルフロン(バッチリ、サラブレッドなど)が登場し、一発剤の大部分がこれらによって占められた。当初、それらの除草剤に共通する基本構造からスルホニルウレア系除草剤と呼ばれ、ALS阻害の第1世代といわれている。
 その後、20年以上に渡って連用された結果、スルホニルウレア系除草剤抵抗性のアゼナやコナギ、ホタルイなどが全国各地で発生が確認されるようになってしまった。この抵抗性雑草対策で様々な開発が行われ、スルホニルウレア系除草剤抵抗性雑草にも効果を示す第2世代のALS阻害剤や新規のHPPD阻害剤に主力が移っていった。
 第2世代のALS阻害剤は、同じ酵素の活性阻害であっても、酵素が活性化する過程で、第1世代とは異なる部分を阻害することで、第1世代抵抗性雑草にも除草効果を示すものである。第2世代のALS阻害剤には、ピリミスルファン(ナギナタ、ガンガンなど)、プロピリスルフロン(ビクトリーZ、メガゼータなど)、メタゾスルフロン(コメット、銀河など)などがある。
 近年は、この第2世代のALS阻害剤と4-HPPD阻害剤とを組み合わせ、より幅広い雑草に長く効かせる除草剤も登場してきており、それらの除草剤が出そろう頃は、より除草剤作業の効率化に役立つものと期待されている。


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