農薬:防除学習帖
【防除学習帖】第39回 水稲の防除<7> 本田期の害虫防除2020年2月14日
前回、ウンカ・ヨコバイ類、チョウ目、カメムシ類の防除のポイントについて紹介した。本田期に問題となる害虫は前回紹介した害虫がほとんどだが、その他注意が必要な害虫はイネアザミウマとスクミリンゴガイである。
1.イネアザミウマ
成虫の体長は1.5mm程度で細長く、非常に小さく見つけにくい害虫である。この害虫が出穂期に発生すると、開花期に籾に侵入して頴の内側を食害し、不稔やくず米、変色米(黒点米)を生じ等級を下げる原因となる。
被害を少なくするには、頴に侵入させないように開花直前の防除が重要な時期であり、この時期にパダン(粒剤・粉剤DL)、パダントレボン(粉剤DL)などで確実に防除を行う。
2.スクミリンゴガイ
別名ジャンボタニシと呼ばれる大型の巻貝で、6葉期頃までのイネを加害し、イネ株が食い荒らされて成長できなくなって欠株となったりして減収に結び付く。
もともとは、1981年頃より養殖用として輸入されたが、広東住血線虫が寄生することから増殖・販売が禁止された。このことから管理の悪い養殖場から逃げ出したり、直接水路廃棄されたりして、水田に侵入し、特にイネが幼い時であれば、欠株などの大きな被害を及ぼすようになった。
防除は、産卵直後の卵塊をかき落とす方法が手っ取り早いが、かなり手間がかかり、実用的ではない。主に、スクミノン粒剤(メタアルデヒド剤)を水面施用することが効果が高い。登録ではパダン粒剤4の登録もあるが、主には忌避効果であり、殺貝効果はないので、密度を下げることにはならない。
3.気候変動に伴う害虫防除の考え方
(1)予防散布が効率的な防除法
害虫の防除は、害虫の発生に合わせて、害虫の発生前か密度がごく少ない時に適切に行うことで最大の効果を発揮する。近年は、気候変動が激しく、それに応じて、毎年病害虫の初発時期や増殖速度が異なることが多くなっており、例年どおりの防除を行っても適期を逃すケースが増えている。このため、害虫の発生に合わせて防除を組み立てることが難しくなっており、気づいた時には手遅れといったケースもしばしば起こっている。
このような場合に一番効果のある防除法は、発生の可能性がある害虫については、「長期に持続する有効成分で予防的な防除を行う」ことである。これなら、多少の初発生時期がずれたり、例年と異なる時期に増殖に適した気候になったとしても、害虫の発生前に迎え撃つことが確実にできる。十分な防除効果が期待でき、結果的に防除回数も減らすことができる。
近年の農業経営規模の大規模化は、管理するほ場すべての害虫発生状況を逐次把握することを難しくさせており、実行しようとするとかなりの労力と経費がかかってしまうので、発生する可能性がある害虫については、害虫の発生前に予防剤を使用しておくことが経営的にもプラスになる。
もちろん、地域単位で全く発生しない害虫の防除は必要ないが、地域で毎年発生する害虫に対しては、できれば地域全体で長期持続型農薬での予防散布が実行されるとさらに効果があがる。
(2)具体的な予防散布の方法
最も効率的な予防散布は、長期持続型の育苗箱処理剤を使用することである。
この長期持続型の有効成分を含む育苗箱処理剤は、育苗箱に予め処理しておくことで長期に安定した防除効果を発揮する。
育苗箱処理剤に関する詳細は、本稿第28回や第29回を参考にしてほしい。
本シリーズの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
【防除学習帖】
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】水稲の斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 山口県2025年7月8日
-
なぜ米がないのか? なぜ誰も怒らないのか? 令和の米騒動を考える2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【立憲民主党】「食農支払」で農地と農業者を守る 野田佳彦代表2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【自由民主党】別枠予算で農業を成長産業に 宮下一郎総合農林政策調査会長2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【日本共産党】価格保障・所得補償で家族農業守る 田村貴昭衆議院議員2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【れいわ新選組】農業予算倍増で所得補償・備蓄増を やはた愛議員2025年7月8日
-
【第46回農協人文化賞】集落と農地 地域の要 営農事業部門・広島市農協組合長、広島県農協中央会会長 吉川清二氏2025年7月8日
-
【第46回農協人文化賞】若者を育てる農協に 営農事業部門・北海道農協中央会前会長、常呂町農協前会長 小野寺俊幸氏2025年7月8日
-
小泉農相 随契米放出に「政策効果」 市場落ち着けば備蓄水準戻す2025年7月8日
-
トランプ政権の移民摘発 収穫できず腐る野菜「農家に大きな打撃」2025年7月8日
-
【第46回農協人文化賞】常に農協、農家のため 営農事業部門・全農鳥取県本部上席主管 尾崎博章氏2025年7月8日
-
150年間受渡し不履行がなかった堂島米市場【熊野孝文・米マーケット情報】2025年7月8日
-
2025参院選・各党の農政公約まとめ2025年7月8日
-
米価 6週連続低下 3600円台に2025年7月8日
-
【JA人事】JA秋田しんせい(秋田県)佐藤茂良組合長を再任(6月27日)2025年7月8日
-
【JA人事】JA北九(福岡県) 新組合長に織田孝文氏(6月27日)2025年7月8日
-
【JA人事】JAかながわ西湘(神奈川県)天野信一組合長を再任(6月26日)2025年7月8日
-
【JA人事】JAえひめ中央(愛媛県)新理事長に武市佳久氏(6月24日)2025年7月8日
-
宇都宮市に刈払機を寄贈 みずほの自然の森公園へ感謝と地域貢献の一環 JA全農とちぎ2025年7月8日
-
岡山の農業を楽しく学ぶ 夏休み特別企画「食の学校2025」 JA全農おかやま2025年7月8日