農薬:防除学習帖
【防除学習帖】第43回 水稲後期の雑草防除2020年3月13日
水稲後期は、収量や品質に影響を及ぼす雑草が発生するため、この時期の除草は、発生状況を見ながら的確に行う。
以下、主な雑草とその防除のポイントを紹介する。それぞれの除草剤の選択は、一覧表を参考にしてほしい。
1.後発生のヒエ除草一発剤などで、しっかりと除草できている田んぼでも、中干しを過ぎ、出穂を迎えるころになると、ノビエが発生していることがある。
これは、一発剤の効果不足ではなく、中干し後に新たに発生したヒエが生育したことが原因である。この時期のヒエは、収穫時に邪魔になったり、籾に混ざってしまったり、翌年の発生源になったりするので、確実に除草しておく必要がある。
除草方法は、中干後の入水時に追加の除草剤を散布することで効率よく除草できる。
この時期は、気温も高く、高葉齢のヒエも交じっているため、高葉齢のヒエにも効果のある有効成分を含有するヒエ剤を選んで使用する。
ヒエだけが発生している場合は「ヒエクリーン」などのヒエ単剤が効果的だが、多年生雑草なども発生している場合は、高葉齢のヒエを枯らす成分が入った中後期剤を選ぶようにすると良い。
2.ホタルイ
ホタルイはカヤツリグサ科の一年生雑草で、水田では種子繁殖する。7~8月に茎の先に小さいホタルのような小穂がつき、1株あたり100粒程度の種子をつくる。
この種子の発芽能力は、10~20年と長いため、長期にわたって発生源となる。発生することにより、減収も大きくなるので、できるだけ発生密度を減らすようにしっかりと防除したい雑草である。厄介な雑草なので、毎年発生するような水田では、初期剤+一発剤+中後期剤の体系で確実に防除してほしい。
3.クログワイ
ホタルイに似ているが、難防除の多年生雑草で、地下部にある塊茎(小さいイモ状のもの)によって繁殖する。
この塊茎は、寿命が5~7年と長く、地下10~40cmまで広く分布し、深いところにある塊茎は水田後期に発生してくる。塊茎の形成は夏から秋にかけて行われるため、発生量を減らすためには、水稲後期の除草が重要である。
クログワイの防除は難しく、初期剤+一発除草剤+後期除草剤の体系でしっかりと防除したい。また、刈り取り後に発生してきた株に対し、ラウンドアップマックスロードのような浸透移行の強い茎葉処理除草剤を使用すると、地下部の塊茎を枯らし、翌年の発生を減らすことができるので、多発水田などでは是非試してほしい。
また、秋起こしなどで、塊茎を表面に露出させると、寒さと乾燥で塊茎を死滅させることができるので、徹底除草を行う場合には、このような方法も合わせて行うと良い。
4.オモダカの防除
オモダカも地下の塊茎で発生する多年生雑草である。矢尻葉と呼ばれる特徴的な葉を出すので見分けがつけやすい雑草である。他の雑草よりも、後期にダラダラと長期に発生するため防除が難しく、発生の多い水田では、体系除草が必要になる。
塊茎の寿命は1年程度と短いが、1株で150個程度の塊茎をつくる能力があるため、次年度の発生を減らすためにも、塊茎をつくらせないように除草する必要がある。
オモダカも他の多年生雑草同様に体系処理を行うことが必要である。
オモダカの塊茎も低温と乾燥に弱いため、秋起こしなどで、塊茎を表面にさらすようにすると発生量を減らすことができる。
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