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農薬:防除学習帖

野菜の病害防除13 土壌病害(3)【防除学習帖】第59回2020年7月10日

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土壌病害の病原菌は、多犯性(多くの作物を病害を起こす)のものが多く、一つの病原菌が複数の作物に被害を起こすことが多い。今回紹介するバーティシリウム菌はまさに典型であり、多くの作物に被害を及ぼす。
なお、全ての土壌病害に共通する防除法である輪作、太陽熱消毒、土壌還元消毒、蒸気・熱水消毒については前回紹介したので、必要な場合を除き割愛して紹介する。

1.バーティシリウムフザリウムが起こす病害

バーティシリウム(Verticillium)は、糸状菌(かび)の仲間で、不完全菌類に分類される。野菜に重篤な病害を起こすのは、ほぼ全てVerticillium dahliae という菌である。
主な病害を表に示したので参考にしてほしい。

野菜の主なバーティシリウム病一覧


2.病徴と生態

発病に不適な環境になると、微小菌核と呼ばれる耐久体をつくり、土壌中でも3年以上、まれに12年という長い期間生き残ることができる。ほとんどがこの微小菌核による土壌伝染だが、トマトなど一部作物では種子伝染もする。土壌中では作物の根の先端部や傷口から侵入する。フザリウムと同様に一度発生するとたくさんの伝染源が長年残る厄介な病原菌である。比較的低温(25℃)で湿潤な土壌で発生が多くなる。
維管束を侵して養分や水分の転流を妨げて萎れたり、葉が黄化したりする。維管束を輪切りにしてみると、黄褐色~黒褐色に変色していることが多い。
ダイコンやカブの黒点病は、表面上の症状がほとんどなく、商品である根部を輪切りにしてはじめて維管束が黒褐色に変色しているのがわかるという厄介な病害である。

3.防除法

(1)抵抗性品種・台木の利用
 バーティシリウム菌は多くの作物に重篤な被害を及ぼすため、抵抗性品種が多数開発されている。ただし、これらの抵抗性品種は万能ではないことも多く、抵抗性品種であっても病害が発生したり、その抵抗性品種も侵すことができる病原菌が登場することがしばしばある。
このため、抵抗性品種は病害が起こりにくくなる補助的なものと割り切り、他の耕種的防除法や化学防除を組み合わせて防除を組み立てるようにするとよい。

(2)輪作
バーティシリウム菌は、微小菌核での生存期間が長いので、輪作期間も最低5~6年程度はみないと効果がないので注意が必要だ。ほとんど侵されることの無いイネ科作物との輪作が効果高い。可能であれば、時々水田化すると抑制効果が高くなる。

(3)有機物の施用
有機物の施用は、土壌の物理性を改善し、土壌微生物の多様性を増すことで病原菌の密度を下げる効果がある。バーティシリウム菌の場合も、堆肥(完熟)、バーク堆肥、鶏糞、稲わらで病害発生の軽減効果が認められている。

(4)石灰の施用
バーティシリウム病は中性~アルカリ土壌で発生が多くなるので、消石灰など石灰質資材を施用すると発病を助長する場合があるので注意が必要だ。土壌pHを計測し、作物の生育に適したpHで栽培するよう心掛ける。

(5)湿度を下げる
土壌が湿潤であると発生が多くなるので、ほ場の排水をよくする。

(6)根が傷むと菌が侵入しやすくなるので、根いたみの原因(湿害、干害、塩類集積、土壌害虫の被害、土壌センチュウの被害)を避けるよう管理する。

(7)発病した作物残渣などをほ場に残したりすき込んだりするとバーティシリウム菌の密度が増して発病が多くなるので、それらは可能な限り速やかにほ場の外に出して適切に処分すること。

(8)土壌消毒剤の使用
土壌消毒剤(クロルピクリン剤、ディトラペックス剤、ダゾメット剤)を使用し、病原菌密度を下げるようにする。その際、土壌消毒剤の使用方法を確実に守って使用すること。特に、ダゾメット剤は使用する際の土壌水分や確実なガス抜きの実施など使用方法を誤ると効果が出ないばかりか薬害が起こる可能性もあるので十分な注意が必要である。

(9)登録農薬の使用
バーティシリウム病に登録のある農薬の一覧を表に整理したので、参考にしてほしい。
バーティシリウムは土壌病害であるので、地上部に散布して防除する薬剤はなく、土壌消毒剤主なもので、一部では薬液の土壌灌注といった使い方のある薬剤もある。
表は選択するための参考となるように記載したので、実際の使用にあたっては、ラベル等をよく確認して、用法、用量を守って正しく使うこと。

(クリックでPDF)

主なバーティシリウム病防除剤一覧

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