農薬:防除学習帖
野菜の病害防除15 土壌病害(5)【防除学習帖】第61回2020年7月24日
土壌病害の病原菌は、多犯性(多くの作物を病害を起こす)のものが多いが、今回紹介するピシウム菌も多くの作物に被害を及ぼし、各種野菜の苗立枯病の主要な病原菌である。
防除法については、他の土壌病害同様に耕種的防除と化学的防除にわけて紹介するが、全ての土壌病害に共通する防除法である輪作、太陽熱消毒、土壌還元消毒、蒸気・熱水消毒については、以前(土壌病害(1))紹介したので、ここでは、必要な場合を除き割愛する。
1.ピシウムが起こす病害
ピシウム(Pyhium)菌は、糸状菌(かび)の仲間で、べん毛菌類に分類され、多雨など湿度が高く、水滴が発生するような湿潤条件で発生が多くなる。
この菌は、野菜の苗立枯病の主要な病原菌であるので、苗の段階から防除が必要な菌である。
次表に、同菌が起こす主な病害を表に示したので参考にしてほしい。
2.病徴と生態
28~30℃前後程度でよく発生し、一般的に高温多湿(多雨)な条件で発病が多くなる。
土壌中、被害残渣とともに遊走のうや菌糸の形で残り発生源となる。遊走のうは、水中で発芽して、遊走子を放出し、遊走子が泳いで拡散・蔓延していく。
耐久体として、卵胞子と呼ばれるものをつくり、土壌中で2~3年間生存できる。
地際部など土壌と接している部位に水浸状で軟化する病斑をつくることが多いので、ダイコンやショウガなど根部(根茎)を食する野菜での被害が大きい。
3.防除法
(1)輪作
ピシウム菌卵胞子の生存期間は2~3年であるので、通常は2~3年の輪作期間で良いが、わずかな菌密度でも速やかに大量増殖する場合があるため、発生の多かったほ場では輪作期間を長め(最大6年程度)取る必要がある。
(2)湿度を下げる
土壌が湿潤であると発生が多くなるので、ほ場の排水をよくする。特に、降雨の影響を受けるため、高畝にし、排水路を設ける。
(3)発病した作物残渣などをほ場に残したりすき込んだりすると翌年の発生源になるのでなるので、それらは可能な限り速やかにほ場の外に出して適切に処分すること。
(4)土壌消毒剤の使用
土壌消毒剤(クロルピクリン剤、ダゾメット剤など)を使用し、病原菌密度を下げるようにする。その際、土壌消毒剤の使用方法を確実に守って使用すること。特に、ダゾメット剤は使用する際の土壌水分や確実なガス抜きの実施など使用方法を誤ると効果が出ないばかりか薬害が起こる可能性もあるので十分な注意が必要である。
(5)登録農薬の使用
ピシウム菌に登録のある農薬の一覧を表に整理したので、参考にしてほしい。
表は選択するための参考となるように記載したので、実際の使用にあたっては、ラベル等をよく確認して、用法、用量を守って正しく使うこと。
主なピシウム病防除剤一覧(クリックでPDFファイルをダウンロード)
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