農薬:防除学習帖
野菜の病害防除17 土壌病害(7)【防除学習帖】第63回2020年8月7日
土壌病害の病原菌は、多犯性(多くの作物を病害を起こす)のものが多いが、今回紹介する根こぶ病菌は、アブラナ科のみに発生する病害である。
防除法については、他の土壌病害同様に耕種的防除と化学的防除にわけて紹介するが、全ての土壌病害に共通する防除法である輪作、太陽熱消毒、土壌還元消毒、蒸気・熱水消毒については、以前(土壌病害(1))紹介したので、ここでは、必要な場合を除き割愛する。
1.アブラナ科野菜根こぶ病
根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)は、糸状菌(かび)の仲間で、べん毛菌類に分類されるが、菌糸を作らず、作物の体内に変形体(原形質体)と呼ばれるものをつくり繁殖する。
ハクサイ、キャベツ、ダイコン、カブ、ナバナ、ワサビ等のアブラナ科野菜に発生し、ナズナやスカシタゴボウといったアブラナ科雑草にも発生する。
2.病徴と生態
根に大小コブをつくる。この病害にかかると根の活力が衰え、生育が次第に衰えていく。晴天の日中に萎れて、夕方になって葉からの蒸散が少なくなると回復するといった症状を示し、病勢が進むと株全体が黄化するようになる。pH6程度の酸性土壌で、水田裏作や水田転換畑など水はけが悪い湿潤畑で発生が多くなる。
コブの中には、おびただしい数の休眠胞子をつくり、被害残渣の中や土壌中で越冬・越夏する。作物が植え付けられると休眠胞子が発芽して、べん毛を持つ遊走子となって泳ぎまわり、根毛から侵入する。この泳ぎまわる際に水分が必要となる。
侵入後には、変形体と呼ばれるものに変化してコブを発生させ、コブ内部に休眠胞子を大量につくる。
3.防除法
(1)湿度を下げる
土壌が湿潤している状態で発生が多くなるので、高畝にするなど排水を良くして土壌湿度を下げるようにする。
(2)石灰質土壌の施用
酸性土壌(pH6程度)で発生が多くなるので、消石灰や石灰窒素など石灰質資材を施用し土壌pHを中性側に矯正すると発生を抑えられる。
(3)有機物の施用
本病は、鶏糞は発生軽減効果があるが、堆肥や牛糞などの有機物は発生の軽減効果は無いので、病害の発生軽減効果を期待して有機物を施用する場合は、有機物の種類に注意する。
(4)抵抗性品種
ハクサイやキャベツなど抵抗性品種が開発されているので適宜利用する。
(5)輪作
本病の休眠胞子の生存期間は5~6年と長い。このため、輪作期間は、最低4年間は必要で、できれば6年間あけると良い。
(6)登録農薬の使用
根こぶ菌に登録のある農薬の一覧を表に整理したので、参考にしてほしい。
本病に登録のある農薬は、土壌消毒剤、土壌本圃に処理するもの、育苗中使用するものなど多くある。しかし、本病は薬剤だけでは防除しきれないことが多いので、耕種的防除と組み合わせて総合的な防除を心がける。
表は選択するための参考となるように記載したので、実際の使用にあたっては、ラベル等をよく確認して、用法、用量を守って正しく使うこと。
アブラナ科野菜根こぶ病防除薬剤適用一覧(クリックで拡大)
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