農薬:防除学習帖
野菜の病害防除18 土壌病害(8)【防除学習帖】第64回2020年8月15日
土壌病害の病原菌は、多犯性(多くの作物を病害を起こす)のものが多いが、今回紹介する細菌病は特に幅広い作物に、様々な症状を起こす病害である。
防除法については、他の土壌病害同様に耕種的防除と化学的防除にわけて紹介するが、全ての土壌病害に共通する防除法である輪作、太陽熱消毒、土壌還元消毒、蒸気・熱水消毒については、以前(土壌病害(1))紹介したので、ここでは、必要な場合を除き割愛する。
1.野菜類に発生する細菌病
野菜類に発生する主な細菌病を表に示した。主な病原菌属は病原菌欄に示したとおり、Pseudomonasを初めとした合計5種類の菌によって起こる。同じ属でも病害事に名前が異なるがここでは簡便に表記した。病害名は、作物に発生する症状から命名されることが多いので、同じ属の病原菌でも作物によって異なる症状を示すことが多く、病名に「細菌」がついていない病害も多い。
2.病徴と生態
細菌病は作物によって異なる症状を示すが、軟化腐敗するもの、壊疽症状を示すもの、斑点状の病斑をつくるものに大別できる。
細菌病は、被害残渣などとともに土壌中に潜んでおり、降雨や作業中の泥はねなどによって作物に付着し発生する。糸状菌のように自身で作物に侵入する力はなく、作物体上について傷口や気孔、水口、土壌センチュウなどによる穿孔など、自然開口部から侵入する。このため、台風などで作物体に傷がつくと細菌病の発生が多くなる。
また、灌水や降雨による泥はねも病原細菌を拡散する手段となるので降雨が続くような天候の際は注意が必要である。
3.防除法
(1)湿度を下げる
土壌が湿潤している状態で発生が多くなるので、高畝にするなど排水を良くして土壌湿度を下げるようにする。
(2)マルチ、敷きわらの設置
泥はねを防ぐため、マルチや敷きわらを設置すると感染の機会を大幅に減らすことができる。
(3)害虫・土壌センチュウの防除
細菌病は作物体についた傷跡から侵入するため、害虫などの被害痕は絶好の侵入路となる。このため、害虫や土壌センチュウの防除を確実に実施し、細菌病が侵入できる傷口をできるだけつくらないようにする。
(4)抵抗性品種
作物・病害別に抵抗性品種が開発されているので適宜利用する。
(5)輪作
細菌病は長い期間土壌中で生存でき、侵すことのできる作物の範囲も広いため、輪作に有効な作物の組み合わせを指導機関などによく確認して実施する。
(6)登録農薬の使用
細菌病に登録のある農薬の一覧を表に整理したので、参考にしてほしい。
細菌病に効果のある薬剤は、銅剤、抗生物質(ストレプトマイシン、カスガマイシン、バリダマイシン)、オキソリニック酸などの一部合成農薬、および土壌消毒剤に限られる。
また、細菌病は増殖の速度が速く一旦発生すると病勢が一気に進み、治療効果のある薬剤も無いため徹底した予防防除を心がける必要がある。
このため、耕種的防除法と組み合わせて複数の防除手段を常に用いるようにする必要がある。
一覧表は選択のための参考となるように記載したので、実際の使用にあたっては、ラベル等をよく確認して、用法、用量を守って正しく使うこと。
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