農薬:防除学習帖
野菜の害虫防除2【防除学習帖】第67回2020年9月4日
野菜の害虫は、非常に多くの種類があり、作物への加害方法(被害部位)も種類によって異なる。これらの詳細は、防除学習帖No.10~14に詳細を掲載したので参照してほしい。
害虫は、害虫種によって、生態や作物への加害の仕方が異なるため防除のポイントも異なるが、同じ種類であれば防除法や使用できる薬剤も似かよっているので、防除学習帖では害虫別に防除法を整理している。
今回は、アザミウマ類の防除を紹介する。
1.野菜類に発生する主なアザミウマ類と生態
アザミウマ類は、スリップスとも呼ばれ、作物に口吻を突き刺して作物の汁を吸う害虫である。主なものは、表のとおりであるが、それぞれに寄生する場所が異なるので、防除の時意識しておく。
また、アザミウマ類は、トマト黄化えそウイルスやピーマン斑紋ウイルスといったウイルス病を媒介するので、特に、ウイルス病が発生している地帯ではより徹底した防除が必要である。
2.被害
アザミウマ類は、葉や実への直接被害、ウイルス病を媒介する間接被害の両方を起こす。
アザミウマ類の被害は、作物の種類や部位ごとに異なる。どの種も、葉に発生すると白斑がみられ、果実では、へた部の褐変や傷果、白ぶくれ、着色不良といった症状を起こす。特に果実での被害は、品質の低下が著しいので早めの防除が望ましい。
3.防除法
(1) 耕種的防除法
アザミウマは増殖が速いため、発見したらできるだけ早く駆除する必要がある。主な防除は農薬で行うことになるが、以下に示す耕種的防除を組み合わせ、できるだけアザミウマの密度を低くしてから農薬を使用するとより効果も安定する。
ア.周辺雑草・被害残渣の除去
アザミウマは、一旦ハウス周辺の雑草で増殖してほ場に侵入してくるので、ほ場周辺の雑草はきれいに除草しておくと害虫密度を下げる効果がある。また、収穫後の作物残渣などが残っているとそれが発生源になることがあるので、前作の残渣はできるだけきれいに取り除くとよい。
イ.紫外線除去フィルムの使用
アザミウマ類は、紫外線除去フィルム下では発生密度が低下することが知られているので活用する。ただし、ナスでは同フィルムの使用により着色不良を起こすので注意が必要である。
ウ.寒冷紗
寒冷紗で被覆すると侵入阻止効果があるので、栽培様式で利用か可能な場合は活用する。
エ.色の利用
アザミウマ類は、青色に誘引される性質があるので、青色の粘着シートを使用することで捕殺効果が期待できる(ただし発生初期)。
(2)薬剤防除
アザアミウマ類に効果のある有効成分および作物別登録農薬一覧は別紙のとおり。参考にしてほしい。
アザミウマ類は、増殖が速いので、一旦発生すると急速に被害が大きくなる。このため、発生初期での徹底防除が重要であり、できれば、耕種的防除と組み合わせ、発生前からの定期的薬剤散布を行うようにする。
薬剤は、育苗期後半に苗箱灌注処理剤を使用して本圃への持ち込みを防ぐとともに、定植前か定植時の株元粒剤散布によって生育期前半の防除を確実に行い、密度を徹底して低下させると良い。
茎葉散布では、アザミウマの違いによって薬剤の効果が異なるので発生しているアザミウマが何かによって戦略が異なる。
ミナミキイロアザミウマは、薬剤に対して強いので、散布ムラが無いように丁寧に、発生盛期には、1週間間隔で2~3回繰り返し散布する。
ネギアザミウマは、発生が多くなると効果が劣るので、発生初期を逃さず丁寧に散布する。
ミカンキイロアザミウマは、ネオニコチノイド系の薬剤の効果が低いのでマクロライド系など他の系統の薬剤を使用する。
ヒラズハナアザミウマは、どの登録農薬もよく効くが、薬剤がかかりにくい花の奥深くに潜んでいるので、浸透移行のある薬剤を開花期に丁寧に散布するとよい。
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また、アザミウマ類も薬剤抵抗性の発達が早く、既に多くの害虫に抵抗性の発達事例があるので、抵抗性の発達状況は使用する前に指導機関等に確認するようにしてほしい。優れた農薬を長く使用できるようにするためにも、系統の異なる薬剤をローテーションで使用するなど、抵抗性発達対策を確実に行ってほしい。
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