農薬:防除学習帖
野菜の害虫防除3【防除学習帖】第68回2020年9月11日
野菜の害虫は、非常に多くの種類があり、作物への加害方法(被害部位)も種類によって異なる。これらの詳細は、防除学習帖No.10~14に詳細を掲載したので参照してほしい。
害虫は、害虫種によって、生態や作物への加害の仕方が異なるため防除のポイントも異なるが、同じ種類であれば防除法や使用できる薬剤も似かよっているので、防除学習帖では害虫別に防除法を整理している。
今回は、コナジラミ類の防除を紹介する。
1.野菜類に発生する主なコナジラミ類と生態
コナジラミ類は、カメムシ目コナジラミ科に属する害虫で、体長が1mm程度の極微細な害虫である。キュウリなどの栽培中に作物に近づくと小さな粉状のものが飛び回ることがあるが、あれがコナジラミである。
野菜に発生するコナジラミは、オンシツコナジラミとタバココナジラミの2種である。
成虫の翅の納め方や幼虫や卵の形状で見分けがつくものの、微細なので肉眼で見分けることは難しい。オンシツコナジラミは、暑さに弱く夏場には数が減り、薬剤がよく効く。
これに対しタバココナジラミは、暑さに強くて夏場でも旺盛に増殖し、薬剤が効きにくい性質がある。このため、細かい形態を観察できない場合でも、そういった点で区別がつく。
また、タバココナジラミには、形態が一緒だが遺伝子が異なる40ものバイオタイプが存在し、主なものはバイオタイプBやQと呼ばれるものがあり、薬剤の効き具合も異なるので注意が必要だ。
コナジラミ類もウイルス病を媒介する。オンシツコナジラミは、キュウリ黄化病やメロン黄化病、トマト黄化病ウイルスを、タバココナジラミはトマトの黄化葉巻病やキュウリ・メロン退緑黄化病ウイルスを媒介するので、特に、ウイルス病が発生している地帯ではより徹底した防除が必要である。
2.被害
コナジラミ類は、幼虫が葉表面にとりついて吸汁する直接被害よりも、すす病の発生やウイルス病の媒介といった間接被害の問題が大きい。また、タバココナジラミバイオタイプBは、カボチャ葉やミツバ、セロリーの白化症やトマト果実の着色異常などを引き起こす。このため、昔はシルバーリーフコナジラミを呼ばれていた。
3.防除法
(1) 耕種的防除法
コナジラミは増殖が速いため、発見したらできるだけ早く駆除する必要がある。主な防除は農薬で行うことになるが、以下に示す耕種的防除を組み合わせ、できるだけコナジラミの密度を低く抑えるよう工夫が必要だ。密度が低いと農薬の効果も安定する。
ア.施設の側窓や出入り口に0.4mm目以下の防虫ネットを張って、侵入を阻止する。
イ.ハウス周辺の雑草が発生源となるので、周辺雑草の除草を丁寧に行う。
ウ.コナジラミがついた作物残渣を丁寧にほ場外に出して処分するか、夏場であれば栽培終了後にハウスを密閉して高温蒸しこみ処理を行うことで密度をさげられる。
エ.コナジラミ類は、黄色に誘引される性質があるので、黄色の粘着シートを使用することで捕殺効果が期待できる(ただし発生初期)。
(2)薬剤防除
コナジラミ類に効果のある有効成分および作物別登録農薬一覧は別紙のとおり。
効果のある有効成分は、カメムシ目に適用のある有効成分を作物登録を問わずに抽出したため、実際の登録内容と異なる場合がある。このため、あくまで選択のための参考とし、実際の使用にあたっては、農薬ラベルを良く読んで、登録内容を遵守して使用すること。
コナジラミ類は、増殖が速いので、一旦発生すると急速に被害が大きくなる。このため、発生初期での徹底防除が重要であり、できれば、耕種的防除と組み合わせ、発生前からの定期的薬剤散布を行うようにする。
ほ場への害虫の持ち込みを減らすため、育苗期の灌注処理剤を使用して本圃への持ち込みを防ぐとともに、定植前か定植時の株元粒剤散布によって生育期前半の防除を確実に行い、密度を徹底して低下させると良い。
カメムシ目に適用のある有効成分一覧(クリックでPDFをダウンロード)
作物別コナジラミ類登録農薬一覧(クリックでPDFをダウンロード)
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