農薬:防除学習帖
野菜の害虫防除4 チョウ目・1【防除学習帖】第69回2020年9月18日
野菜の害虫は、非常に多くの種類があり、野菜、特に葉菜類や果菜類で大きな被害を及ぼすのがチョウ目である。チョウ目の被害は、大半が幼虫によって起こされ、葉がかじられてボロボロになったり、果実に孔をあけて喰入り、商品価値を無くしてしまう。
また、チョウ目は、その種類によって若干の違いはあるものの、防除のポイントや使用できる殺虫剤は似かよっている。防除のポイントを考える上では、大型チョウ目と、それ以外のチョウ目にわけると整理しやすいので、今回は大型チョウ目の防除法について紹介する。
1.野菜類に発生する主な大型チョウ目害虫
被害の大きい主な害虫は、オオタバコガ、ヨトウガ、ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウの4種である。
特にオオタバコガは、食害する作物が非常に多いばかりか、幼虫が作物組織内に食入する性質から果菜類の果実に食入り被害が大きい。
また、いずれも年間の発生回数が多いので、作付時期によっては作期を通して防除が必要な重点防除対象害虫である。それぞれの害虫の生態等は表を参照願いたい。
(クリックすると全体版PDFファイルが開きます)
2.被害
被害の出方は害虫種によって若干異なる。それぞれの被害の出方を把握しておくと、ある程度見分けがつくようになる。
(1)オオタバコガ
ふ化した幼虫が花蕾や幼果を食害する。短時間のうちに果実に侵入し、内部を食い尽くすと外に出て別の果実に移動する。老齢幼虫になるまでに2~3個の果実を食害する。食害された果実には丸い孔が空いているのですぐわかる。また、この傷から腐敗や落果の原因ともなる
(2)ヨトウガ・ハスモンヨトウ
若齢期の幼虫は葉裏に群生し、葉の表皮を残して食害する。中齢期以降は、分散して加害し、葉脈や葉柄を残して食害する。ナス科野菜では、果実にも幼虫が侵入して加害する。
(3)シロイチモジヨトウ
非常に多くの野菜を加害するが、特にネギの被害が大きい。ふ化したばかりの幼虫は葉の表皮をわずかにかじって葉内に食入し、葉の表皮を残して内側を食害する。被害は、卵が産みつけられた株を中心に坪状に食害される。
3.防除法
(1) 耕種的防除法
ア.オオタバコガでは、被害果実(孔の空いたもの)を速やかに取り除きほ場外で処分する。
イ.ハウス栽培であれば、防虫ネットを張り、侵入を阻止する。
ウ.フェロモンの活用
チョウ目は、性フェロモンを活用した防除が可能な種であるので、積極的に活用する。フェロモン剤は、できるだけ広範囲で使用する方が効果があるので、地域全体など、できれば産地単位で協力して設置すると防除効果が大きくなる。
(2)薬剤防除
チョウ目害虫に効果のある(作物登録のある)有効成分は、別表のとおりである。
これは、チョウ目に適用のある有効成分を作物登録を問わずに抽出したため、実際の登録内容と異なる場合がある。このため、あくまで選択のための参考とし、実際の使用にあたっては、農薬ラベルを良く読んで、登録内容を遵守して使用すること。
(クリックすると全体版PDFファイルが開きます)
大型のチョウ目は、どんなに効果のある殺虫剤でも終齢に近い大きな幼虫ほど効きが悪くなるので、幼虫が小さい時期に着実に防除するようにする。ただ、実際の栽培現場では、色々な生育段階のものが混在するようになるため、発生のピーク時期を中心に発生期間を通じた定期散布を行うようにするとよい。その際には、薬剤の系統や残効期間を考慮して、異なる薬剤をローテーションで使用するように心がけたい。
ハスモンヨトウやシロイチモジヨトウは、卵が孵化するまでの期間が3日程度と短く、もし成虫や卵塊を見つけたら、できるだけ速やかに防除するようにしてほしい。
オオタバコガの場合、卵の期間が5日程度だが、ふ化すると早い時期に果実等に侵入し、防除薬剤が届きにくくなるので、食入する前に防除できるよう、成虫が見つかったらできるだけ速やかに防除を行うようにしてほしい。
成虫の飛来は、防除所等の予察情報を参考にするか、フェロモントラップを設置するなどしてモニタリングするようにしてほしい。
害虫種別の登録農薬は別表のとおりである。
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