農薬:防除学習帖
畑地雑草の防除3【防除学習帖】第79回2020年11月27日
畑地除草剤は、処理方法によって大きく、土壌処理除草剤、茎葉処理除草剤、非選択性茎葉処理除草剤の3つに分けられ、前回は土壌処理剤を紹介したので、今回は茎葉処理除草剤の上手な使い方について紹介する。
1.茎葉処理除草剤の特性を把握する
茎葉処理除草剤は、雑草の生育期に雑草の茎葉に処理する除草剤のことをいう。単に茎葉処理除草剤といった時は、得意とする雑草に制限がある選択性の除草剤のことを指し、どんな雑草も枯らす非選択性茎葉処理除草剤とは区別されている。
茎葉処理除草剤は、基本的に水和剤やフロアブル、乳剤といった水に希釈する剤型の除草剤を用い、噴霧器等を使用して雑草の茎葉を目掛けて散布する。茎葉処理除草剤は、当然ながら、薬液が付着しなかった場合には効果は期待できないので、雑草の茎葉を目掛け、均一に、丁寧に散布する必要がある。
この時、作物に安全で除草剤の能力を最大限に発揮させるためには、製品のラベルをよく読んで、「使用時期」と「10アール当たり使用量(薬量ミリリットル,希釈水量リットル)」を守って使用することである。
2.「使用時期」を守る
「使用時期」は、効果試験の結果をもとに一番効果のある雑草の生育ステージを指定してある。例えば、「イネ科雑草3~5葉期まで」と書いてあれば、イネ科の5葉期までは枯らすことができるということである。雑草も生育に連れて抵抗力も増してくるので、この除草剤の場合、イネ科雑草5葉期を超えると、葉令があがるごとに効果が低くなってくる。
このため、この使用時期を確実に守ることがコツである。
この時に是非とも意識してほしいことがある。それは、「畑全体では雑草の生育ステージは揃っていない」ということである。
畑を観察したとき、目の前の雑草の葉齢が適期であっても、もしかしたら、目の届かないところには適期を超えている雑草があるかもしれない。この適期を超えた雑草が存在する場合は、茎葉処理除草剤を使用しても取りこぼす可能性が高くなる。これを避けるためには、畑全体を観察し雑草の発育具合をくまなく確認すればいいのだが、実際には時間的にも労力的にも難しいことが多い。このため、日頃より雑草の発生具合を確認しておき、畑の中の平均的な発生具合を示す位置を把握しておき、その位置に生えている雑草が適期の下限(例示の除草剤の場合、イネ科3葉期)に達したら、畑全体に均一に散布するようにするとよい。こうすることで、適期を過ぎた雑草が減るため、取りこぼしも少なく効率的な雑草防除ができるようになる。
もちろん除草剤は、適期以下の小さな雑草(例示の場合2葉期以下の雑草)には高い効果を発揮するので、早目の散布で効果が高くなるが、あまりに早いとまだ雑草が生えそろっていない可能性があり、その場合、散布後に発生してきた雑草は取りこぼすことになる。茎葉処理除草剤は、「一番早く発生した雑草が使用適期内で、かつ畑全体に雑草が生えそろったタイミング」で使用すると、最も多くの雑草に茎葉散布を適期に散布できるため、結果として除草効果も安定するようになることを知っておいてほしい。
3.「10アール当たり使用量」を守る
次に、「10アール当たり使用量(薬量ミリリットル,希釈水量リットル)」のことである。殺虫剤や殺菌剤と異なり、希釈倍数が示されていることは少ないので、初めて使用する場合は戸惑うかもしれないが、逆に一番わかりやすいかもしれない。
薬量ミリリットルとは除草剤のボトルに入っている原液をどれだけの量を散布するかを示し、希釈水量リットルとは散布する水量そのものとなる。
例えば、「10アール当たり薬量50ml、希釈水量100l」と登録されている除草剤を10アールに散布する場合、浄水100リットルをタンクに用意し、除草剤50ミリリットルを除草剤製品ボトルから取り出してタンクに入れてよくかき混ぜて、均一に散布すればよい。もし、畑の面積が5アールの場合は、半分の量でよく、浄水50リットルをタンクに用意し、除草剤25ミリリットルを除草剤製品ボトルから取り出してタンクに入れれば5アール分の散布液ができるので、それを均一に散布する。つまり、対象とする面積に合わせて水と除草剤の量を調整すればよいので、殺菌剤や殺虫剤のように使用する希釈倍数と散布水量に応じて薬量計算しなければならないケースはごく少ない。
4.雑草の選択性
除草剤の成分によって、枯らすことができる雑草(草種)が異なる。草種は、大きく分けてイネ科雑草とそれ以外の広葉雑草とに分けられるが、表に示したようにイネ科雑草のみに効果を示すもの、広葉雑草に効果を示すものがある。畑では、色々な雑草が生えてくるので一概に言えないが、イネ科雑草が優先的に生える畑ではイネ科に強い除草剤を選ぶなど、雑草の発生状況に合わせて除草剤を選ぶようにする。ただし、茎葉処理除草剤を使用する場面では、作付されている作物の生育期であるため、もし作物にかかっても薬害が起こらないことが前提となる。このため、登録ラベルでは使用できる作物が明記されているので、必ず適用作物を守って使用するよう必要がある。もし、イネ科雑草に効く除草剤をイネ科の作物が作付けされた畑に散布した場合、多くの作物では激しい薬害を起こし、ひどい場合は枯死することもある。
なので、茎葉処理除草剤を使用する場合は、対象の作物と枯らすことができる雑草をよく確認して、ラベルどおりに正しく使うように心掛けてほしい。
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