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農薬:防除学習帖

農薬の上手な施用法9【防除学習帖】第89回2021年2月12日

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農薬は、その有効成分が病原菌や害虫、雑草に直接作用してはじめて効果を現す。その効果を発揮するためには、有効成分を何等かの方法で作物に付着または吸収させる必要がある。作物に付着させる方法が散布であり、様々な方法がある。
前回までに水和剤や液剤、フロアブル剤など「水に希釈して散布」する方法と、粉剤や粒剤、水稲用フロアブル除草剤など「製剤をそのまま散布」するものの2つを紹介した。今回は、これまで紹介しきれなかった農薬の散布法について紹介する。

1.拡散性製剤を使用した散布

農薬は作物体上や土壌表面に均一に拡散して有効成分の層をつくって効果を現す。特に水稲で使用される農薬は、田面水を介して均一に拡がることで必要になる。その均一に拡がる力を強くすることで、10aあたりの投下製品量を減らし散布労力を減らすことに成功したのが拡散性製剤である。拡散性製剤には、ジャンボ剤や豆つぶ剤、顆粒水和剤がある。

(1) ジャンボ剤

ジャンボ剤は、10g~40g程度の拡散性製剤を水溶性フィルムで覆ったパックを10個/10a投げ入れるだけの簡単散布が魅力の製剤である。

水を湛水状態にしておけば、投げ入れるだけで農薬自身が拡散し、均一に拡がっていく。中山間など小規模水田などでの利用が多い。

これらは、水を介して均一に拡がるため、十分な水深が必要で、藻など拡散を邪魔するものがないことが、薬害もなく高い効果を発揮させるための条件となる。このため、ジャンボ剤を正しく使用するには、3~4cmの水深を保つこと、土壌の均平を保たれ田面露出などがないこと、藻などの発生がないこと、吹き寄せのゴミなどがないことといった条件を守る必要がある。

(2) 豆つぶ剤

クミアイ化学工業株式会社の製品で、豆粒大の大きな粒剤をそのまま散布する製剤である。

10aあたり250gという少量を、手やひしゃく等ですくって散布するのが一般的である。ジャンボ剤同様に畦畔からの散布だけで済み、水田内を大雑把に均一に散布すれば、あとは豆つぶ剤が自身の力で拡散していき、有効成分が水田内を均一に拡散す。水を介して拡散するため、ジャンボ剤と同様に十分な水深が必要で、藻など拡散を邪魔するものがないことが、薬害もなく高い効果を発揮させるための条件となる。ジャンボ剤と同様に3~4cmの水深を保つこと、土壌の均平を保たれ田面露出などがないこと、藻などの発生がないこと、吹き寄せのゴミなどがないことといった条件を守る必要がある。

(3) 顆粒水和剤

顆粒水和剤は一般的には、水に希釈して散布するものが多い。粉立ちが少なく希釈薬液を作るのが比較的容易な製剤である。

水稲除草剤を顆粒水和にすることで、いくつかの簡易な散布方法が可能となった。

まず、通常通り希釈して散布する方法である。300g程度の顆粒水和剤を500mlの水に希釈して、加圧式散布機に入れ、噴霧ではなく、ジェット水流で水田内に飛ばして散布するか専用のボトルに入れて原液散布するフロアブル剤と同様の散布を行う。加圧散布機でも霧を発生させる必要がないので、ドリフトもなく散布できる。

もう一つが、水口処理法である。入水の時に、流れ込む水に面積分の量の顆粒をさらさらと落とし込めば、水流にのって有効成分が拡がる方法である。散布時間を大幅に減らすことができる省力的な方法である。

ただし、この方法も水を介して拡散するため、十分な水深が必要で、藻など拡散を邪魔するものがないことが、薬害もなく高い効果を発揮させるための条件となる。薬害無く、正しく効果を発揮させるためには、3~4cmの水深を保つこと、土壌の均平を保たれ田面露出などがないこと、藻などの発生がないこと、吹き寄せのゴミなどがないことといった条件を守る必要がある。

2.無人ヘリ(産業用無人ヘリコプター)を使った散布

無人の無線操縦ヘリコプターで、通称ラジヘリと呼ばれている。正式な名称は、産業用無人ヘリコプターであり、濃厚少量(8倍液~16倍液を800ml/10a)散布や粒剤の散布が行われる。水稲での防除用とが主であるが、松くい虫防除のためにも使用される。

有人ヘリコプター散布ができない地域が多くなる中、事業防除では無人ヘリが主役になっている。値段が高く、操縦技術が必要なため、個人で所有して散布に使用する例は少なく、防除業者による委託防除が大半である。

3.ドローン(無人マルチローター)

近年、何かと話題なのがドローンである。無人ヘリに比べて安価で購入でき、騒音が少なく、狭いほ場でも機動力よく散布できることから、自身で購入して農薬散布に取り組む農家も増えている。現在、農業用に使用されるドローンは、複数社から販売されており、DJIジャパン社が大きなシェアを持っている。

ドローンは前述のようなメリットもあるが、バッテリーの持ち時間が短く飛行継続可能時間が長くて15分程度(ハイブリットドローンを除く)と短く、薬液も最大10l程度と小さいため、連続したほ場であれば、1飛行で1haが最大の面積となる。

実際には、ほ場間の移動や離着陸などでバッテリーを消費するため、実際の作業効率は悪くなる。所有するほ場の状況(面積、配置など)に応じて、使用する機種や予備バッテリーの数などを選ぶ必要がある。

現在使用できる農薬は、農薬の使用方法に「散布」と書いてあるものが使用できるが、実際には、効率性を考え、「無人ヘリ登録」のあるものが多く使用されている。

この無人ヘリ登録は、水稲には多くの登録があるが、畑作や園芸作物での登録が少ない。このため、登録要件の緩和などが行われ、畑作や園芸作物での無人ヘリ登録農薬の拡充に向けた取り組みが進んでいる。

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