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農薬:防除学習帖

果樹の防除1【防除学習帖】第90回2021年2月19日

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永年作物である果樹。園地にどっしりと根を張り、多彩な果実を提供してくれる。

果樹は一般に背丈が高く、葉や枝が繁茂していて、防除が必要な面積も広くなるため、水稲や野菜などとは防除の仕方やコツが異なってくる。

また、果樹は部会やJAなどによって防除暦が定められていることが多い。それに従ったスケジュール散布が一般的であり、防除暦に従っていれば、一定の防除効果を得ることができる。このため、果樹防除では、防除暦の活用法を紐解きながら効率の良い防除について考えていきたい。

1.防除暦の重要性

果樹には、「いつ、何を、どれだけ散布すればよいか」を書き記した防除暦というものが作られている。この防除暦に従っていれば、一定の防除効果が期待できるものだ。

防除暦というと、「農薬メーカー等が自社の製品を売らんがために、スケジュール散布を推奨し、不必要な農薬まで散布させている」などと批判されることがあるが、とんでもない誤解である。

防除暦は、農業試験場、防除所等指導機関の指導を仰ぎながら、JAの営農指導員や県域の技術者、果樹部会などが中心となって作成されている。そのコンセプトは、病害虫雑草を効率よく防ぎ、安全・安心で品質の良い果樹を安定生産するためである。

果樹では、果実が商品であるため、果実に害虫のかじった痕や病斑などがあればそれだけで商品価値を無くしてしまう。なので、果樹の場合は、如何に病害虫の被害が起こらないようにするかが重要であり、基本的に予防が中心となる。

この予防防除をいつ行ったら一番効率が良いかを教えてくれるのが防除暦であり、高品質な果樹を安定して生産するための道しるべともいえるほど重要なものである。

2.防除暦が示す重要な情報を読み取る

では、防除暦には何が記載され、何を意味しているのか紹介する。

(1) 病害虫雑草の防除適期

病害虫雑草を防除する場合、防除効果が高くなる防除適期がある。これは、防除対象となる病害虫雑草の発生が少なく、また小さい時や若い時に防除をすると、高い効果が得られるなど、散布しようとする農薬が、能力を最大限発揮するのに適した時期のことをいう。逆に言えば、防除適期を逃してしまうと防除効果が期待したほどあがらない、または効かないなどといったことが起こるということである。

このため、防除暦では、果樹の生育ステージや病害虫雑草の発生生態に合わせて、対象とする病害虫雑草の防除適期を逃さないように、いつ頃散布すればよいかを明確にしている。

(2) 希釈倍数(使用量)、散布水量

防除暦によって書き方は異なるが、使用する農薬の希釈倍数(使用量)や散布水量が期されている。この希釈倍数は、農薬取締法上、守らなければならない事項でもあるので、事前に農薬のラベルを散布前によく確認する。その時に重要なのが散布水量である。果樹は背が高く、葉が繁茂してくるにつれて表面積が大きくなる。葉や枝に農薬をきちんと行き渡らせるようにするには、表面積の増大に応じて散布水量も多くしなければならない。このため、果樹の生育ステージに合わせて適切な散布水量が示されているので、参考にする。

(3) 散布回数

農薬の散布回数は、農薬取締法上遵守しなければならない項目である。通常、自身の散布した農薬を有効成分別に散布回数を管理しなければならないが、防除暦の場合、それが登録上の回数を超えないように農薬が配置されているので、防除暦記載のとおりに防除すれば、使用回数を超過することはない。これは、臨機防除が記載されている場合でも、有効成分の総使用回数を考慮して農薬の選択がされているので、防除暦に従っていれば散布回数超過のリスクは大幅に減らせる。

(4) 収穫前使用日数

収穫前使用日数についても遵守しなければならず、果実への残留に直結するので神経を使わなければならない項目である。防除暦では、収穫直前に使用しなければならない場合には、収穫直前まで使用できる農薬を配置するなどの工夫がされている。

(5)防除効果

地域によっては、耐性や抵抗性などのため、効果が低い農薬もある。このような場合も、地域の状況に応じて散布する農薬を選択してあるので、防除暦は最新のものを使用するように心掛ける。

以上、防除暦から読み取るべき情報を列記したが、これら以外にも防除に関する情報が記載されているので、防除暦をもらったら、一度シーズン全体をよく確認し、栽培スケジュールをイメージするようにしてほしい。次回以降、防除暦の具体例を交えながら、果樹の効率的な防除を紹介する。

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