農薬:防除学習帖
果樹の防除3【防除学習帖】第92回2021年3月5日
果樹は、ほとんどの樹種に防除暦があり、それに従って防除を行えば一定の防除効果が得られる。ただ、防除暦に従って防除を行う際に、「何故この時期に防除が必要なのか」、「何故この薬剤が選ばれているか」と設定されている理由を知ったうえで行うのと、そうでないのとでは防除効率に差が出てくる。この理由を紐解きながら、果樹における上手な防除法やコツを探っていきたい。
1.一般的な防除暦に表記されている項目
前回からの続きで、防除暦に記載されている基本的項目を紹介する。
(4)散布薬剤・使用方法
指定された散布時期に散布する農薬名が剤型を含む商品名で書かれていることが多い。
使用方法も希釈倍数だけでなく、単位散布液量あたり農薬量(製剤の量)を書かれている防除暦もある。ここで重要なことは、指定されている希釈倍数を確実に守るようにすることだ。希釈倍数は農薬取締法上で遵守すべき項目でもあり、また果樹の場合は作製する希釈液量が大きいので、間違えた時の補正が大変であるので、間違いの無いよう十分に注意して作業する。希釈倍数は農薬のラベルを確認し、その倍数に必要な薬量は、散布水量に基づいて計算する。多くの薬剤で場合、希釈早見表(表の例を参照)が用意されているので、適宜活用すると楽である。希釈早見表は、希釈倍数から探す形態のものが多いが、散布水量から探すもの、手元にある農薬の量から探すものなどいくつかの形態があるので、自分にとってわかりやすいものを選ぶようにする。最近は、希釈間違いを無くすために、タンク容量に合わせて、「1000倍の場合はタンクに農薬製品1袋、500倍の場合は2袋」といった風に、軽量が楽なように工夫した製品もあるので、適宜使用するとよい。
ただし、その場合でも、薬液をつくる前に、(1)つくる希釈液量(散布水量)、(2)希釈倍数をよく確認し、間違えないように十分に注意してほしい。
(5)散布水量(/10a)
散布水量は、10aあたりの水量で示されており、果樹の繁茂状況により調整されている。散布した時に、葉であれば表裏に十分量の農薬が付着するよう試験データなどをもとに決められている。発芽仕立ての頃は少量で、新梢が伸び、葉が多くなった時には当然多めの散布量が、時期別に示されているので、散布量を守って散布するようにする。
(6)注意事項
防除暦に記載の注意事項は、病害虫の発生が多い年など防除暦で記載されている防除だけでは防ぎきれない恐れがあるときや、薬害が心配な時期など、通常と異なることの発生を想定して、その対処法が書かれていることが多い。また、新たな病害虫の発生や規制が変わった場合などに対応し、防除暦も毎年進化するので、新しい防除暦をもらったら、一度注意事項を含む隅々までよく読んで、シーズンを通じた防除全体をイメージ化しておくようにしてほしい。
<防除暦の例>
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