農薬:防除学習帖
果樹の防除6【防除学習帖】第95回2021年3月26日
果樹は、ほとんどの樹種に防除暦があり、それに従って防除を行えば一定の防除効果が得られる。防除暦には、時期別(生育ステージ別)に重要な防除のコツが記されており、それらは樹種別にその対象としている地域における気象や病害虫雑草の発生状況をよく吟味して、最も安全で品質の良い果樹が得られるように作成されている。これが果樹は防除暦に従って防除すれば安心であるという理由の1つである。
前回より生育期の防除のポイントを紹介しているが、実際の防除暦に記載されている防除時期は、開花期(4月下旬)などと具体的に記載されているが、これは、その防除暦が対象とする地域に対応した時期であり、全ての地域に当てはまるものではない。この防除適期は、樹種や地域の生育状況や病害虫の発生状況によって異なってくるためである。このため、本稿では具体的な月・旬は記載していないので、このことを予めご容赦願いたい。実際の防除適期は、それぞれの地区は部会などで発行されている防除暦で確認するようにしてほしい。
1.春の防除
早春の開花時期を過ぎると気候も温かく、湿度も上昇してくるため、発生する害虫の種類が増えてくる。防除暦は防除時期を旬ごとに示していることが多いので、害虫の発生に合わせて、その旬のうちに防除を開始する。その後は、防除暦に従って定期的に防除を行ってほしい。ただし、最初の防除が旬の始めのころであったなら、次の旬の防除も旬の始めの頃に行うように心掛ける。なぜなら、農薬の残効期間は、多くが10日前後であるため、1回目が旬の始めで2回目に旬の終わりに散布すると、散布間隔が20日近くになってしまい、1回目の散布農薬の残効期間を超えてしまう場合があるからで、この際に1回目の農薬の残効が切れ、次の農薬が散布される間に病害虫の発生を許してしまう可能性があるからである。残効期間の長い農薬を使用していれば、そういったリスクも減らせるが、散布回数を考慮すると残効期間の長い農薬ばかりを使うことはできないので、できる限り旬のうちの防除時期をそろえる方が安全である。
(1)春防除の意義
春は、多くの害虫の初発生時期である。卵や幼虫、蛹、成虫など様々な形態で越冬した害虫が動き出し、まだ芽吹いて間もない果樹の葉や花などを加害し始めるのだが、まだ数が少ないため、被害が目立たず、発生を見逃しがちである。しかし、ここを逃すと越冬世代による増殖を許してしまい、害虫密度が高くなってしまう。害虫も数が少なく、害虫が若い時の方が防除効果も上がりやすいので、この時期の防除は、例え発生が見つからなくとも、防除暦記載の農薬をきっちり散布する方が良い。
病害も、赤星病や黒星病など、開花期に発生する病害を中心に発生が続くので、被害を出さないよう、確実に防除しておきたい。もし、病害の初発を許してしまった場合は、この時期に治療剤を入れて、病害の勢力が拡大しないように早目に叩いておくと良い。
(2)注意事項
この時期の防除は、アブラムシなど増殖の早い害虫が多くなる。これらは、いったん増殖を許すと、後の防除が難しくなるので、発生密度が少ないうちに徹底防除と予防防除を心掛ける。この際、害虫によっては殺虫剤抵抗性が発達していることもあるので、もし効きが甘い、いつもと違うと感じたら、速やかに指導機関の指導を仰ぐようにしてほしい。防除暦は、害虫ごとの地域における薬剤感受性を考慮して殺虫剤が選ばれているので、暦に従っていれば間違いはないのだが、まれに初発生などで従来の防除暦で対応できていない抵抗性害虫の場合もあるからである。
黒星病も同様に、殺菌剤耐性が発達している場合があるので、効きが甘い場合は、速やかに指導機関に相談すること。
2.開花期・落花期の対象病害虫と防除法
温かくなるこの時期は、発生する病害虫の種類と量が多くなる。これらは、発生が少ないうちにしっかりと防除を行うようにしてほしい。
防除について、防除暦記載の薬剤を指示された適期を逃さずに散布する。耕種的防除の記載がある場合は、できるだけ多く取り入れて実行する。
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