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農薬:防除学習帖

果樹の防除12【防除学習帖】第101回2021年5月21日

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前回までに果樹の防除暦を紐解きながら、果樹栽培における病害虫防除のポイントを紹介した。病害虫であれば、防除暦の記載事項を正しく実行すれば、最も安全に高い防除効果が得られ、品質の良い果樹が生産できると紹介した。それは、防除暦が時期別(生育ステージ別)や樹種別に、地域における気象や病害虫雑草の発生状況や防除効果などのデータをよく吟味して作成されているからであった。
ところが、雑草の場合は、前年の発生具合や温度、湿度などの気象条件によって発生時期や量が決まり、基本的に園地ごとに発生状況が異なる。このため、地域で統一した“除草暦”なるものは存在せず、防除暦の一部分に、除草のポイントが紹介されている程度である。
また、発生する雑草は、畑地と同様のありとあらゆる雑草が生えてくるので、自分の園地にどんな雑草が優先しているのかまず把握し、それに応じた除草を行うようにする。
今回は、果樹における除草のポイントを紹介する。

1.果樹の雑草防除のポイント

(1) 耕種的防除

最も一般的な基本的には、草刈機で刈り払うことである。近年は、ロボット草刈機も登場し、平地での刈払作業は楽にできる技術も出てきたが、傾斜地であったり、広い面積を行うと、まだかなりの時間と労力がかかるのが課題である。

小面積であれば除草シートで行う方法もあるので、適宜活用する。

その他、草生栽培(後に紹介)を行うことで雑草をコントロールする方法もある。

(2) 除草剤のよる防除

畑地同様に、園地で発生する雑草に効果のある登録除草剤を使用することである。

使用にあたっては、それぞれのラベルをよく良い、それに従って正しく使用する。

果樹の場合、畑作物ほど激しい薬害が起こることはないが、誤った使用方法によって、樹勢の劣化などの影響が出る場合があるので、使用上の注意事項も含め正しく使用する。当たり前といえば当たり前であるが、登録内容を遵守した使用を心掛けること。

また、雑草でも、除草剤抵抗性雑草が発生しているので、もし除草剤の効きが甘く、処理量や処理時期など使用方法に間違いがなければ抵抗性雑草の発生を疑い、指導機関などの指導を仰ぐようにしてほしい。除草剤の場合、使用時期(雑草の葉令など)や処理量などの処理方法が除草効果を左右するので、必ずラベルに従って正しく使用するようにしてほしい。

(3) 下草除草による害虫発生抑制効果

果樹栽培では、ハダニなど果樹が生育期を迎えると移動して果樹の葉や果実に被害を与える微小害虫の被害は大きい。これらは、果樹の葉などが出てくる前までは、下草に潜んでいることがおおい。このため、微小害虫の最初の住処を奪うことで、果樹での発生を少なくし、被害を軽減できるので、害虫防除の観点でも果樹の下草除草は重要である。

2.草生栽培による雑草管理

雑草は、永年作物の果樹においても養分収奪が少なからず起こるし、何より下草が繁茂していると管理作業の邪魔になり、作業の不効率化を招く。ところが、果樹の場合には、適度な下草は水分保持や根圏維持などのメリットがあるため、「作業の邪魔にならない程度の長さの下草を生やして管理するのが草生栽培である。以下、そのポイントを紹介する。

(1) 草生栽培のメリット

草生栽培のメリットは4つあるといわれている。

まず1つ目が、土壌浸食防止に役立つことである。雑草を完全に枯らして土壌面を露出させていると、どうしても風雨による土壌浸食が起こる。特に果樹にとって地力そのものである表土が土壌浸食によって失われるのは大きな損失であるし、また、根が露出すると樹勢に影響が出てしまうこともある。下草が、土壌表面を覆っていれば、雨が土壌に直接あたることは無く、浸食を防いでくれる。

2つ目が、中耕効果である。雑草の根は草種によって深さは異なるが、園地の土壌に根をはびこらせていく。これが耕す効果を発揮し、排水性をよくする効果がある。

3つ目が、有機物補給効果である。雑草など下草の多くは一年生であり、生育期間が過ぎれば枯れて有機物として園地の土壌に供給される。つまり、他から堆肥などの有機物を持ち込むことなく、土づくりに必要な有機物投入ができることになる。もちろん、土壌の状況によっては量的に不十分なことはあるが、少なく十園地の外から入れる有機物の量を減らすことができる。

4つ目が雑草抑制効果である。植物の世界では様々な競合が起こっており、特に太陽光の競合は植物にとって死活問題である。つまり、先に繁茂したものが勝ちであり、後から来たものは十分な光を得ることができずに十分な生育ができない。下草が繁茂していれば、あとからやってくる雑草などが先住民を追い越して繁茂することはできない。この下草には一部の雑草を利用する場合や、イタリアンライグラスなどいわゆるカバープランツを利用する場合がある。背があまり大きくならないカバープランツを一面に繁茂させれば除草などの下草管理の手間が省ける。

(2) 草生栽培実施のポイント

自然に発生する雑草を草生栽培に使用する場合、様々な背丈の雑草が生えてくるので、伸びすぎて作業の邪魔にならないように、適宜、刈払機やロボット草刈機等による管理が必要である。このため、夏場などは頻繁に下草管理を行う必要があり、結構な重労働となる。

カバープランツを使う場合、緑肥効果も考えて栽植すると良い。多くは、イタリアンライグラスなどの1年生イネ科雑草、ヘアリーベッチなどのマメ科一年生雑草が多く使われる。カバープランツは、播種時期が決まっているので、種の特性を事前によく把握し、適期を逃さないように播種する必要がある。播種後も管理方法を指示通りに行うことを心掛ける。種苗会社や指導機関からの発行資料などに詳しいので、事前に入手して正しく活用する。

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