農薬:防除学習帖
IPM防除7【防除学習帖】第108回2021年7月2日
防除学習帖では、「みどりの食料システム戦略」で重要な革新的技術として取り上げられたIPM技術について、その具体的な技術の内容を紹介しており、前回病害の物理的防除を紹介したので今回は、害虫の物理的防除法を紹介する。
害虫の物理的防除法は、表にあるとおりネットを張って侵入を阻止したり、シルバーマルチの忌避効果を利用する、手で害虫を捕殺するなどがある。以下、詳細を紹介する。
1.害虫の物理的防除
(1)捕殺
もっとも単純な物理的防除は捕殺である。文字のごとく、害虫をみつけたら捕まえて殺す方法である。これができるのは、チョウ目害虫などある程度大型なものでないと使えない。ギリギリ、アブラムシ程度まで使えるが、広範囲に発生が拡がっていると手間ばかりかかって防除効率が悪い方法である。また、ダニやサビダニなどごく小さかったり、ハモグリバエやアザミウマなど作物の隙間に入り込んでいるような害虫もこの方法での防除は難しい。あくまで、補完的な方法である。
(2)熱を利用する物理的防除の技術的概要
害虫も生物なので、一定の温度以上で行動が停止し、致死温度に達すると死亡する。
土壌にいる土壌線虫などの防除は、病害の防除方法と変わりない。
これに加えて、害虫の場合、ハウス蒸し込みという技術がある。トマトの黄化葉巻病などを媒介するコナジラミ類の殺滅に使用されるもので、被害残渣など全てをハウスの中に重ね、ハウスを密閉して、ハウス内を蒸し風呂状態にすることである。高温多湿下で害虫も死滅するし、作物体内に残る病原ウイルスも不活性化させることができる。温度が均一になるよう、残渣はできるだけ重なりが少なくなるようにすると良いようだ。ただし、日中の日差しが十分にないと温度が上昇しきれないので注意が必要だ。
(3)侵入防止ネット
施設栽培などで、害虫が侵入するのを防ぐ技術である。対象とする害虫によって網目を調整する。ただし、換気用の開口部や入口の開き閉め時の対応、網目が細かい時の通風不足による温度上昇など注意点もある。対象の害虫の大きさを栽培管理をよく考慮して網目を選ぶようにする必要がある。
(4)着色粘着板
昆虫は色によって誘因される性質を持っている。ハエ目は黄色、アザミウマは青色などであるが、これを利用する。着色した粘着板を圃場のあちこちにおいて、色でおびき寄せて防除する方法である。設置数が少なければ、十分な防除効果が得られないことも多いので、製品のラベルをよく読み推奨の設置数をよく守るようにすることが重要だ。
(5)忌避効果
アブラムシ類は銀色を嫌う性格がある。このため、マルチに銀色を使用するとアブラムシ類の抑制効果がある。太陽光を反射するため、黒色ほどの保温効果はないので、マルチの使用目的により適宜使い分ける必要がある。
(6)越冬場所の除去
害虫の種類によっては、冬に越冬場所にじっとして耐え、翌年温かくなったころ活動するものが多い。特に果樹の害虫などでは、樹皮の下などで越冬するものも多い。このような、害虫が越冬しそうな場所を減らすことで、翌年の害虫密度を減らすことができる。
(7)気門封鎖剤
でんぷんなどねっとりした液体を散布し、害虫の気門を塞ぐ資材を使用する方法である。天然物が原料であることが多く、農薬登録を受けてはいるが使用回数を気にせず使えるものである。ただし、害虫の気門に十分量が付着するように丁寧に散布する。
(8)高濃度炭酸ガス
倉庫など密閉空間にできる場所で使用する方法。炭酸ガスを充満させて窒息死させる方法である。
2.今後の活用
物理的防除も生物的防除と同様に、「みどりの食糧システム戦略」でいうところの、化学農薬削減、有機農業の拡大、技術革新に資する防除法である。IPM防除の技術革新を行うためには、これらの防除法をいかに効率よく組み合わせるかが重要である。
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