農薬:防除学習帖
防除暦3【防除学習帖】第116回2021年9月10日
前回よりホウレンソウの防除暦作成に取り組んでおり、防除暦作成の手順や防除手段選択の考え方を示しながら、防除の組み立て方法について紹介している。
前回は、防除暦に掲載する病害虫雑草を選ぶために、登録農薬と適用病害虫雑草を整理してみた。通常はこの中から、その防除暦が使用される地域で発生する病害虫雑草を選択して掲載することになるのであるが、本稿では、登録のある病害虫雑草を全て掲載した防除暦を作成してみたいと思う。
題材として選んだホウレンソウは、一般的に、春、夏、秋に播種(はしゅ)ができて、それから約1カ月、寒い時期であれば2カ月位で収穫できる作期が短い作物である。この播種をいつ行うかによって、気温や雨量が異なり、防除の対象と防除法が異なってくるため、本稿では、関東地域の春まき、夏まき、秋まきの3種類の防除暦を作成してみたい。
1.圃場の準備
播種をいつにするかに関わらず必ず必要になるのが圃場の準備である。ホウレンソウの場合、畝=播種床になるので、土づくりを含め、圃場(ほじょう)の準備は丁寧に行いたい。ここでは、播種前に行う防除関連の作業について紹介する。
(1) 除草作業
ホンレンソウは、栽培期間が短いとはいえ、やはり雑草があると養分の収奪や微小害虫の住処になったりして、収量や品質に悪影響があるので、できるだけ綺麗(きれい)に除草した上で播種したいものである。
しかし、ホウレンソウの場合、播種後に使用できる除草剤が少ないので、播種前・定植前に雑草を処理しておくほうが効率も良い。
雑草が少なければ耕耘・畝立てを行うことで除草作業が済むが、雑草が多ければ、耕耘(こううん)前に非選択性茎葉処理除草剤で枯らしてから耕耘する方が、播種後の雑草発生量も少くなるので好都合である。
雑草が多い場合やある程度大きくなっている場合には、雑草を枯らさないで耕耘すると、時期によっては雑草のタネや地下茎といった次の雑草のもとになるものを大量にほ場にばら撒くことにもなるので、非選択性茎葉処理除草剤を使用する場合にも、雑草の草丈が30cm以内の時に散布するように心掛ける。
播種・定植前に使える非選択性除草剤は、グリホサートかグルホシネート、あるいはパラコート・ジクワットを有効成分とするものがある(商品名は表参照)。
グリホサートやグルホシネートは、雑草茎葉に散布することで根まで枯らしてくれるので、除草効果も長く続く。しかし、除草が完了するまでに時間がかかるので、遅くとも播種・定植予定日から7日前までに使用する必要がある。
これに対し、パラコート・ジクワットの場合は、枯らす速度が早く耕耘前の前日でも使用できるが、根までは枯らさず、再生も早い。
圃場準備段階での除草剤選びは耕起・定植までの日数で判断するとよく、耕起・定植までに時間的余裕がある場合は、グリホサートかグルホシネートを、耕起・定植前7日を切っている場合は、抑草期間は短いが、パラコート・ジクワットを使用するようにする。
ホウレンソウの場合、栽培期間が短いので、除草剤の違いによる差はさほどないが、やはり根まで枯らしているかいないかで、播種・定植後の除草作業量に差が出てくるので、非選択性除草剤を使用する場合は、作業期間に余裕をもって、グリホサートかグルホシネートを使用する方が良いようだ。
このグリホサートかグルホシネートを使用する場合は、散布水量で、通常散布と少水量散布とがある。通常散布の場合は、10aあたりの散布水量が100リットル程度であるのに対し、少水量散布は、25~50リットルとなる。つまり、100リットル散布と25リットル散布を比べた場合、25リットル散布は濃いめの薬液を1/4の水量で散布することで、効果が同じながら、散布時間は短くなるので、労力軽減につながる。少水量散布用ノズルを使用する必要があるが、作業効率の面でお勧めできるので、少水量の登録がある場合は、ぜひ試してみると良い。
また、パラコート・ジクワットは、製品が毒物指定されているため、購入にも手続きが必要であるのに加え、使用時の注意や保管に際し、厳密に守らなければならない制限があるので十分な注意が必要な除草剤である。
このように取り扱いに注意が必要な農薬を防除暦に載せる際には、その旨をきちんと明記し、防除暦を頼りに防除作業をする農家が誤った使い方をしないように配慮する必要がある。
(2)土壌病害防除作業
ホウレンソウ立枯病や根腐病が発生する場合は、播種3日前までにタチガレエース粉剤を40kg/10アール、全面土壌混和を行う。土壌に混和して使用する殺菌剤はこの剤しかなく、立枯病や根腐病が発生していて、かつ土壌消毒を行わない場合は必ず使用するようにした方が良い。
次回、圃場の準備で大きな仕事である土壌消毒について紹介する。
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