農薬:防除学習帖
トマトの防除暦2【防除学習帖】第136回2022年2月4日
前回より防除すべき病害虫や防除用資材も多いトマトを題材に防除暦の作成に取り組んでいる。
病害虫雑草は、地域や場合によっては、ほ場単位で発生する種類、程度、時期等が異なっているので、本稿では、できるだけ共通する病害虫や問題病害虫を取り上げ、活用できる全ての防除法を並べながら、有効活用の仕方を探っている。栽培開始から発生する順に発生する病害虫を取り上げ、それぞれの防除で使えそうな技術を紹介していきたい。まずは、は種時に発生する苗立枯病から紹介する。
1.トマト苗立枯病の病原菌の生態
トマトで発生する苗立枯病は、リゾクトニア菌とピシウム菌の2種が問題となる。
下表のようにいずれも糸状菌であるが、その生態(性質)は大きく異なり、防除対策も異なることも多い。リゾクトニアは、不完全菌(有性世代が発見されていない糸状菌)であるが、他の病害で完全世代であるThanatephoruscucumeris(担子菌類)が発見されており、防除対策を考える場合は担子菌類として考える。両菌ともに高温・多湿条件で多発生するが、リゾクトニアは25度だが、ピシウムはさらに高温の28度から多発するなど菌によって好みの温度が異なる。また、どちらも多湿条件で発生するが、ピシウムは水滴がつくような湿潤条件で多発する。
2.耕種的防除法
(1)温度
徒長していない、がっしりとした良いトマト苗を育てるには、日中25~30度、夜間10~15度で管理するのが良いとされている。苗立枯病の発生リスクを低くする温度を病原菌の多発条件から考えると、日中25度、夜間10度で管理できるとベストである。温度設定ができる育苗施設であれば問題ないが、一般のパイプハウス等で育苗する場合は、できるだけこの最適条件に近づけるような管理を行うことで発病リスクを減らすことができる。
(2)湿度
湿度が高いと苗立枯病が発生しやすくなるので、育苗施設の湿度を下げることで病害の発生リスクを低下させることができる。
(3)育苗用土の蒸気消毒
病原菌は、土壌に存在する耐久体(菌核や卵胞子など)が発芽することによって発生する。この耐久体を60度・10分以上の温度をかけて菌を死滅させる方法である。蒸気処理機によって方法は異なるが、シート上に蒸気を噴出するパイプを置き、その上に育苗用土を積み上げてビニル被覆し、蒸気をパイプに流して消毒する。土壌の温度をまんべんなく60度以上にすることが重要である。
3.薬剤防除
(1)土壌消毒剤による育苗用土の消毒
土壌に潜む病原菌の耐久体を死滅させる方法であり、ピシウム菌、リゾクトニア菌の両方に効果がある方法であり、クロルピクリンやクロピクテープ、クロルピクリン錠剤で育苗用土を消毒できる。クロルピクリンの場合、育苗用土を30センチの高さに積み上げてビニル被覆し、被覆の上から30×30センチごとに1穴・2~3ミリリットルを注入する。クロピクテープの場合、積み上げた育苗用土1平方メートルあたり2.2メートルのテープ状の錠剤を埋設してビニール被覆する。クロルピクリン錠剤の場合30×30センチに1錠の割合で錠剤を埋めてビニール被覆する。
いずれも、所定の時間(1週間程度)終了後、被覆をはがして消毒済の用土を使用する。クロルピクリンは、被覆期間終了後のガス抜き作業は不要であることが多いが、臭気が残っているような場合は必ずガス抜きを行ってから使用する。また、処理期間中に臭気が出ることがあるので、処理場所での換気を心掛け、周辺に関係者以外が立ち入らないように処置を必ず行う。このあたりの注意事項は製品ラベルでよく確認すること。
(2)種子処理剤の使用
種子に薬剤をまぶしては種することで、は種後の苗に病原菌が感染するのを防ぐ。種子処理の方法によって、水和剤(粉状)のものを規定量まぶす方法とフロアブル(液状)のものを種子にまぶす方法がある。いずれの方法も、種子全体にまんべんなく薬剤が付着するように処理することが重要である。詳細な使用方法については、製品のラベルをよく読んで指示通りに実施すること。
(3)土壌処理剤の使用
土壌処理剤は、粉剤を育苗土壌に直接混和して使用するか、希釈液を所定量かん注して使用する。それぞれに適切な使用時期があるので、製品ラベルの使用方法をよく読んで使用する。
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