農薬:防除学習帖
トマトの防除暦5【防除学習帖】第139回2022年2月25日
現在、本稿ではトマトを題材に防除暦の作成に取り組んでいる。病害虫雑草は、地域やほ場単位で発生する種類、程度、時期等が異なっていることを考慮し、できるだけ共通する病害虫や問題病害虫を、栽培開始から発生する順に取り上げながら、活用できる防除法や利用する場合の留意点を紹介している。
前回までに、トマトに発生する土壌病害虫の種類と生態、耕種的防除法、土壌消毒剤によるくん蒸処理について紹介したので、今回は土壌消毒剤の活用法をひも解いてみる。
1.薬剤防除
トマトの土壌病害に使用する薬剤を振り返ると、大きく分けて、クロルピクリンやD-Dなどの液状の製剤を土中に注入して被覆するタイプ、ダゾメット微粒剤などの土壌に混和して被覆するタイプ、ホスチアゼート粒剤などを土壌に均一に混和して被覆はしないタイプの3タイプがある。
それぞれのタイプごとに対象病害虫や使い方、使用上の注意に違いがあるので、効率よく使うにはその特性をよく把握しておく必要がある。
いずれも詳細は製品のラベルを良く読んで、特性や使い方をよく把握した上で正しく使ってほしい。
(1)液状製剤注入被覆タイプ(続き)
大部分は前回No.138で紹介したが、これとは別に有効成分はクロルピクリンだが、製剤の性状や使い方を工夫して、ガスに暴露することがほとんどない使いやすい製剤であるクロピク錠剤とクロピクテープという製品がある。
クロピク錠剤は円盤状の基材にクロルピクリンを含浸させたもので、タブレットタイプの製剤を面積あたりの必要個数を埋め込んで、その後に被覆して使用する。
クロピクテープは、水溶解性のチューブにクロルピクリンを封入した製剤で、それを1平方mあたり2.2mの畝の中に埋め込んで被覆する。基本的に被覆に必要な期間が過ぎればガス抜き無しで植え付けができる。
張ったビニールを、はがさずにマルチ替わりにできるので、被覆をはがし、ガス抜きをする手間が省けるので作業効率が良い。また、被覆はがしの際に、汚染土が消毒済の畝に誤って入ってしまうといった失敗も防げる。ただし、注入器を使用して処理する場合に比べ、ガスの拡散度合が狭いので、根が浅い作物や用土消毒など用途が限られるのが欠点だ。
(2)土壌混和・被覆有りタイプ
このタイプの消毒剤は、ダゾメットを主成分とするガスタード微粒剤とバスアミド微粒剤という成分がある。これらは製品名が異なるだけで、有効成分は同じなので、どちらを使っても効果は同じである。入手しやすい方を使用すれば良い。
このダゾメットは、使用上の注意が多くある。
1つ目が、土壌水分に成分が反応してメチルイソシアネートという消毒成分が発生するので、ある程度水分がある(土を握って、手を開いたとき、いくつかの土塊に分かれてほろっと崩れるくらい)必要がある。あまりにも乾燥している場合は、処理前に散水して土壌水分を高めておく必要がある。
2つ目が、ガス抜きを丁寧に行わなければならないことである。ガス抜きが不十分であると、薬害が発生し、ひどい場合は、作付けた作物が枯れてしまう。ガス抜き耕耘は丁寧に行い、土壌にガスの臭いが残っているような場合には、ハツカダイコンの種による発芽テストを行うなどガス抜き具合を確認し、完全にガスが抜けたのを確認してから作付けする。その他、注意事項を製品ラベルで丁寧に確認して行うようにしてほしい。
しかし、この製剤は、防毒マスクなどを着用することなく、土壌全面に粒剤を均一散布して耕耘・被覆するだけで処理ができるので、土壌消毒剤の中では、処理が簡便であるというメリットがある。
効果面では、害虫に効果が低く、特にネコブセンチュウには効果が不十分なことがあるので注意が必要である。
(3)土壌混和・被覆無しタイプ
ネコブセンチュウ(バイデートのみネグサレセンチュウ)防除に使用できる粒剤を表に示した。
これらは、所定量を土壌に均一散布し、良く耕耘して均一に土壌中に分散させる。
これらは、接触型といって、薬剤にセンチュウが触れることによって効果を現すので、均一な処理が最も重要だ。
また、センチュウ密度が多いと効果が低くなるので、被害がひどいような場合は、土壌消毒剤との併用か、輪作など他の方法との併用が望ましい。そのような注意事項は、製品ラベルに書かれているので、良く把握して効率よく使用してほしい。
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