農薬:防除学習帖
トマトの防除暦6【防除学習帖】第140回2022年3月4日
現在、本稿ではトマトを題材に防除暦の作成に取り組んでいる。病害虫雑草は、地域やほ場単位で発生する種類、程度、時期等が異なっていることを考慮し、できるだけ共通する病害虫や問題病害虫を、栽培開始から発生する順に取り上げながら、活用できる防除法や利用する場合の留意点を紹介している。
今回から、定植以降発生する病害虫の防除についてひも解いていくこととし、まず第1はトマトの黄化葉巻病を紹介する。
1.病原と生態
トマト黄化葉巻病は、タバココナジラミが媒介するTYLCV(Tomato yellow leaf curl virus)が引き起こす病害である。
病原のウイルスは、細胞を持たず、遺伝子である核酸を芯にしてタンパク質の衣でくるまれた、ナノレベルの微細な病原体である。遺伝子だけの存在であるので、生物と物質の間のような存在で、トマトの生きた細胞の力を借りないと増殖できない。1996年に日本に侵入して大発生し、トマト栽培に多大な被害を及ぼした。
感染すると、はじめ新葉が退色しながら葉が巻いていき、しだいに葉脈の間が黄色に変色してちぢれる。やがて葉はちりめん状になり、節間が短くなり、株萎縮を起こす。このため、生育が停滞し、多数の萎縮したわき芽が出て叢生状態になり、開花以上や不稔を起こし、トマトの品質・収量に多大な影響を及ぼす。
媒介虫のタバココナジラミは、幼虫、成虫ともにウイルスの伝搬能力を持っており、ウイルスが体内に入った1日後くらいから死ぬまでウイルスを媒介し続ける。また、一般的なウイルスの伝染方法である種子伝染や土壌伝染、管理作業がもとで伝染する汁液伝染はしないので、この病害を防ぐためには、タバココナジラミの発生を防ぐことにつきる。
2.防除法
トマト黄化葉巻病は、一旦発生すると治療する薬剤が無いので、発病株を見つけたら、速やかに丁寧に引き抜き、ほ場外に出して許されている地域であれば焼却などして適切に処理する。
まずは、防虫網などによるタバココナジラミのほ場内への侵入を徹底的に阻止するとともに、抵抗性品種の導入や薬剤による徹底防除を行う。
(1)早期発見・早期除去
前述したようにウイルスは一旦発生すると防除する手段が無い。このため、早期発見に努め、病株を発見したら被害が出た作物の茎や葉はできるだけ早く丁寧に除去して適切に処分する。焼却が可能であれば、焼却する。
(2)抵抗性品種の活用
抵抗性品種を利用できるのであれば積極的に活用する。ただし、抵抗性品種の抵抗性だけでは抑えきれないことが多いので、必ず他の防除法を組み合わせるようにする。
(3)防虫ネットの設置
媒介虫のタバココナジラミを施設内に入れないようにするために、できるだけ網目の細かい防虫ネットを設置する。換気口や出入口などの開口部から侵入することが多いので、特に入口は二重扉にするなど侵入防止対策を徹底する。
(4)蒸しこみ処理
熱を使用した消毒法に太陽熱消毒がある。土壌を水浸しにして、ハウスを締め切って、太陽光によって温度上昇させることで、十分な日照があれば高い効果が得られる。
ただし、夏場の日照が少ないところなどでは温度上昇が不十分な場合もあり、特に土壌中のウイルス防除に関して温度が不足することが多い。
この方法に蒸しこみ処理法がある。ウイルス被害にあった残渣を媒介虫がいれば害虫も一緒にハウス内に積上げ、ハウスを密閉する方法である。この方法であれば、作物残渣の間の空隙の空気温度も上昇するため、被害残渣を高熱にさらすことができる。
日照によって到達する温度に差が出るが、ウイルスの不活化温度にまで到達させることができれば、被害残渣中のウイルスを不活化できる。十分な日照があり、密閉が可能なハウスであれば一度試してみると良い(ただし、ハウス内の設備が高温により障害を受ける場合がありので熱に弱い素材を使っているような場合は避けた方が良い)。
(5)乾熱消毒
種子消毒法には、温湯消毒と乾熱消毒とがある。一般に野菜の種子は60℃を超える温湯にさらされると、発芽率が大きく低下する。このため、ウイルスを不活化する温度にするためには、温湯消毒は使用できない。その代わり、水を介さず、空気の温度を上昇させて行う乾熱消毒であれば、発芽率を大きく落とすことなく、ウイルスの不活化温度まで上昇させることができる。ただし、野菜や病原ウイルスの種類によっては、発芽率や不活化温度が異なる場合があるので、発芽率を落とさず、ウイルスを不活化させる温度を見極める必要がある。
(6)薬剤防除
タバココナジラミに効果のある薬剤を使用し、ウイルスを体内に保毒したタバココナジラミがトマトに寄生し吸汁することを防ぐため、コナジラミの発生時期前かごく初期に予防的散布を心掛ける。
特にタバココナジラミの発生シーズンは、薬剤系統の異なる薬剤でローテーションを実施しながら、薬剤の防除効果の切れ目が無いように定期的な防除を徹底する。その際には、適宜散布回数制限の無い薬剤も使用する。
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