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農薬:防除学習帖

トマトの防除暦10【防除学習帖】第144回2022年4月1日

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現在、本稿ではトマトを題材に防除暦の作成に取り組んでいる。病害虫雑草は、地域やほ場単位で発生する種類、程度、時期等が異なっていることを考慮し、できるだけ共通する病害虫や問題病害虫を、栽培開始から発生する順に取り上げながら、活用できる防除法や利用する場合の留意点を紹介している。
今回から、定植以降発生する病害虫の防除についてひも解いていており、今回は、トマト菌核病を紹介する。

1.病原と生態
トマト菌核病は、「Sclerotinia sclerotiorum」という糸状菌(子のう菌類)によって起こる病害で、主に茎に発生し、葉や果実にも発生する。はじめ暗緑色水浸状の病斑を形成して茎の上下に拡がり、湿度が高いと病斑の表面に灰白色綿状のふわふわした菌糸が生じる。病斑はやがて軟化して萎れて腐敗(腐敗臭は無い)して、その上にねずみの糞のような菌核を発生する。これが、次作での発生源になる。低温(15~20℃)を好み、多湿な環境が重なると多発生する。主に土壌表面に残っている菌核からキノコ状の子のう盤と呼ばれるものが発生し、そこから子のう胞子を飛ばして空気伝染する。多犯性の菌で、多くの野菜や花き類に発生する。

2.防除法
(1)耕種的防除
多湿が要因となって発病が多くなるので、できるだけ湿度を下げた栽培を心がけるのが第一で、第一次伝染源となる菌核をほ場に残さないように心掛ける。
① 密植を避け、葉や茎が密集しないように間隔を空けて風通しを良くしたり、送風や換気を行い、湿度が上がらないように工夫する。
② 敷きワラ、マルチを行って、土壌表面につくる子のう盤からの胞子の飛散を防ぐ。
③ 第一次伝染源となる菌核を撲滅するために、病斑のついた作物残渣は圃場外に出して適切に処分する。可能ならば焼却処分するとよい。
④ 好気性の菌なので、水没すると死滅する。可能ならば湛水処理や太陽熱消毒を行うこと発生を大幅に減らすことができる。

(2)化学的防除
菌核病に登録のある防除薬剤は、表のとおりであるが、多くが灰色かび病に登録のある薬剤の多くが菌核病にも効果を発揮することが多い。
また、灰色かび病ほど多くは無いが、多くの胞子をとばすので、病勢が拡大したあとでは、たとえ治療効果のある薬剤でも十分な効果を発揮できない場合がある。
このため、予防効果のある薬剤の定期散布を基本とし、病害が発生したら、発生初期のまだ病害が少ないうちに治療効果のある薬剤を使用して徹底防除を行うようにする。
うどんこ病と同様菌核病も空気伝染するので、マルチなど胞子の飛散防止対策など耕種的防除を組み合わせると農薬の効果も高まる。

菌核病防除剤には、予防効果の高い農薬の単成分の製品が少なく、多くが治療効果もある成分との混合剤であるものが多い。商品名では、ヒットラン水和剤、ブロードワン顆粒水和剤、ファンベル顆粒水和剤、ジマンレックス水和剤、ダイアメリットDFといった製品を期間防除に位置付けると耐性菌発生のリスクを最小限にしながら防除ができる。
今のところ、菌核病には耐性菌による被害報告は無いが、同一治療剤の連続散布を避け、系統の異なる農薬を輪番で使うように心掛ける。

また、菌核病の第一次伝染源は、植物残渣などと共にほ場に残っている菌核である。ほ場から菌核を手作業で完全に取り除くことは実際にはかなり難しいが、土壌消毒であれば、菌核を撲滅させることができる。有効な土壌消毒法は、蒸気消毒、熱水消毒、太陽熱消毒、土壌還元消毒、土壌消毒(クロルピクリン、ソイリーン、ガスタード微粒剤など)の使用などであるので、他の病害虫との同時を狙って、適宜実施すると良い。

トマト菌核病防除剤と同時防除可能な病害

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