農薬:防除学習帖
トマトの防除暦14【防除学習帖】第148回2022年4月29日
現在、本稿ではトマトを題材に防除暦の作成に取り組んでいる。病害虫雑草は、地域やほ場単位で発生する種類、程度、時期等が異なっていることを考慮し、できるだけ共通する病害虫や問題病害虫を、栽培開始から発生する順に取り上げながら、活用できる防除法や利用する場合の留意点を紹介している。
現在、定植以降発生する病害虫の防除についてひも解いていており、今回は、アザミウマ類の防除を紹介する。
1.トマトに発生するアザミウマ類と生態
トマトに発生するアザミウマ類は以下のとおりで、いずれも微小で見つけにくく、繁殖力が旺盛で短い期間で多くの世代を繰り返す。加えて、いずれもTSWV(トマト黄化病ウイルス)を媒介するので、発生前から予防的に防除することが望ましい害虫である。
2.防除法
(1)耕種的防除
アザミウマは増殖が速いため、発見したらできるだけ早く駆除する必要がある。
農薬による予防防除が基本になるが、以下に示す耕種的防除を組み合わせるとより効果的である。
ア.施設の側窓や出入り口に0.4mm目以下の防虫ネットを張る。
アザミウマの侵入を防ぐためにハウスの開口部を防虫ネットで塞ぐようにする。ただし、目が細かいと換気機能が低下するので、施設内の温度上昇には十分に注意する。また、アザミウマは、一旦ハウス周辺の雑草で増殖した後に侵入してくるので、ほ場周辺の雑草はきれいに除草しておくとアザミウマの密度を下げる効果がある。また、収穫後の作物残渣などが残っているとそれが発生源になることがあるので、前作の残渣はできるだけきれいに取り除く。
イ.紫外線除去フィルムの使用
アザミウマ類は、紫外線除去フィルム下では発生密度が低下することが知られているので活用する。ただし、ナスでは同フィルムの使用により着色不良を起こすので注意が必要である。
ウ.寒冷紗
寒冷紗で被覆すると侵入阻止効果があるので、利用が可能な場合は活用する。
エ.色の利用
アザミウマ類は、青色に誘引される性質があるので、青色の粘着シートを使用することで捕殺効果が期待できる(ただし発生初期)。
(2)薬剤防除
アザアミウマ類に効果のある有効成分および作物別登録農薬一覧は別紙のとおり。
アザミウマ類は、増殖が速いので、一旦発生すると急速に被害が大きくなる。このため、発生初期での徹底防除が重要であり、できれば、耕種的防除と組み合わせ、発生前からの定期的薬剤散布を行うようにする。
薬剤は、育苗期後半に苗箱灌注処理剤を使用して本圃への持ち込みを防ぐとともに、定植前か定植時の株元粒剤散布によって生育期前半の防除を確実に行い、密度を徹底して低下させると良い。
茎葉散布では、アザミウマの違いによって薬剤の効果が異なるので発生しているアザミウマが何かによって戦略が異なる。
ミナミキイロアザミウマは、薬剤に対して強いので、散布ムラが無いように丁寧に、発生盛期には、1週間間隔で2~3回繰り返し散布する。
ネギアザミウマは、発生が多くなると効果が劣るので、発生初期を逃さず丁寧に散布する。
ミカンキイロアザミウマは、ネオニコチノイド系の薬剤の効果が低いのでマクロライド系など他の系統の薬剤を使用する。
ヒラズハナアザミウマは、どの登録農薬もよく効くが、薬剤がかかりにくい花の奥深くに潜んでいるので、浸透移行のある薬剤を開花期に丁寧に散布するとよい。
また、アザミウマ類も薬剤抵抗性の発達が早く、既に多くの害虫に抵抗性の発達事例があるので、抵抗性の発達状況は使用する前に指導機関等に確認するようにしてほしい。優れた農薬を長く使用できるようにするためにも、系統の異なる薬剤をローテーションで使用するなど、抵抗性発達対策を確実に行ってほしい。
「アザミウマ類に効果のある有効成分と特性一覧」
「トマト アザミウマ類防除薬剤一覧」
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