農薬:防除学習帖
トマトの防除暦15【防除学習帖】第149回2022年5月13日
現在、本稿ではトマトを題材に防除暦の作成に取り組んでいる。病害虫雑草は、地域やほ場単位で発生する種類、程度、時期等が異なっていることを考慮し、できるだけ共通する病害虫や問題病害虫を、栽培開始から発生する順に取り上げながら、活用できる防除法や利用する場合の留意点を紹介している。
現在、定植以降発生する病害虫の防除についてひも解いていており、今回は、ハモグリバエ類の防除を紹介する。
1.トマトに発生するハモグリバエ類と生態
トマトに発生するハモグリバエ類は、マメハモグリバエ、トマトハモグリバエ、ナスハモグリバエの3種である。いずれも、Liriomyza属に属し、若干色彩が異なるが、姿、形や被害様式がよく似ており、見分けるのは困難である。ただ、マメハモグリバエとトマトハモグリバエの2種は、アメリカ大陸原産でトマト以外にも多くの作物を加害し、薬剤抵抗性を発達させたものも多いため、農薬の効かない個体が多いというのが特徴である。
日本国内では,1990年にマメハモグリバエ、1999年にはトマトハモグリバエの発生が確認された。どちらも成虫の体長は2 mm程度で、雌成虫は、発達した産卵管で葉面に穴をあけ、穴ごとに1卵ずつ産卵し、その際に出る汁をなめる。雌は1日に何回も摂食・産卵行動をとるため、多発圃場では葉面上の小斑点が無数にみられるようになる。
雄成虫は産卵管が無く、葉に穴をあけることができないので、雌のつくった穴で汁液をなめる。
被害は、羽化した幼虫が葉をトンネル状に加害して、絵を描いたようになるため、別名絵描き虫とも呼ばれる。食害されたトマトの葉は、活力を低下させ、トマトの生育に影響を及ぼす。
2.防除法
ハモグリバエ類は、羽化した幼虫が被害を及ぼすため、ハモグリバエをトマトに近づけさせないことが重要である。侵入されたとしても、産卵させないように予防的散布を徹底するとともに、害虫密度を下げる効果のある耕種的防除を組み合わせる。
(1)耕種的防除
ハモグリバエ類は、発見したらできるだけ早く駆除する必要がある。
農薬による予防防除が基本になるが、以下に示す耕種的防除を組み合わせるとより効果的である。
ア.施設の側窓や出入り口に0.4mm目以下の防虫ネットを張る。
ハモグリバエの侵入を防ぐため、ハウスの開口部を防虫ネットで塞ぐようにする。
ただし、目が細かいと換気機能が低下するので、施設内の温度上昇には十分に注意する。
また、黄色の粘着シートを使用することで捕殺効果によってある程度の密度低下が期待できる
イ.その他の耕種的防除
紫外線カットフィルムによる忌避効果や太陽熱消毒によるハウス内蒸し込みなどの方法があるので、適宜試していただきたい。被害葉は見つけ次第速やかに取り除くこと。
(2)薬剤防除
ハモグリバエに効果のある作物別登録農薬一覧は別紙のとおり。
ハモグリバエに安定した効果のある薬剤は、パダンなどのネライストキシン系やオルトラン・ジェイエースなどの有機リン系、IGRのトリガード液剤(シロマジン)、スピノシン系のスピノエースやマクロライド系のアファームなどである。
有機リン系やカーバメート系の効果は低いものが多く、特にネオニコチノイド系は、いずれにも抵抗性が発達し効果が期待できないものが多い。
抵抗性が発達しやすいと考えられるので、抵抗性の発達状況を指導機関等に確認するとともに、系統の異なる薬剤をローテーションで使用するなど、抵抗性発達対策を確実に行ってほしい。
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