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農薬:現場で役立つ農薬の基礎知識2022

【現場で役立つ農薬の基礎知識2022】秋冬野菜の病害虫防除 予測できぬ天候 予防散布など早め対策を2022年8月17日

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今年の梅雨は、集中豪雨ばりのドカ雨が何度か降ったかと思うと、あっという間に梅雨明けしてしまう異例な梅雨だった。そもそも近年の梅雨は毎年異例続きで、いわゆる梅雨らしいシトシト雨が長く続くものではなくなったようだ。こうなると、病害虫の発生様相にも毎年変化し、発生状況に合わせて防除対策を組み立てるのが本当に難しくなっている。
また、これからは台風のシーズンを迎え、風雨によって農作物が傷つき、傷から侵入する病害の発生や雨媒伝染性の病害の拡散を心配しなければならない。
このような被害を最小にするためには、台風やゲリラ豪雨前の予防散布が欠かせない。
なぜなら、雨伝染性の病害などは病原菌の侵入・進展が速いので、台風などでできた傷口や土壌病原菌を含むドロ跳ねを浴びた後はできるだけ早く処置する必要があるが、台風通過後の処置では間に合わないことも多いからだ。なので、台風の襲来が予想されるときは、予防散布して、事前に作物を守ることが被害を最小限に抑えるコツである。
また、9月以降は、オオタバコガやハスモンヨトウなどの大型チョウ目害虫の活動が活発になるので、これらにも早めの対策をしておきたい。
このような、秋冬野菜栽培における主要病害虫の防除ポイントを以下に整理したので参考にしてほしい。
なお、文中や病害虫防除剤の適用農薬一覧で適用薬剤を紹介しているが、紙面の関係上、薬剤を選ぶ際のヒントを示しているだけで、希釈倍率などの実際の使用場面で必要なラベル情報は省いてあるので、実際の使用にあたっては製品のラベルをよく読んで正しく使用してほしい。

※この記事は2022年に掲載した内容です。最新記事はこちらをご覧ください。
最新版はこちら

秋冬野菜の病害虫防除

早期発見、早期防除が基本 予防中心に適期防除を

秋冬野菜に限らず、病害虫の発生が少なく、害虫も小さい幼虫の時期の方が効率的に被害を抑えることができる。このような時期を逃さず防除するのが"適期防除"だ。
適期防除の例をあげると、小さい害虫にしか効かない農薬の場合は害虫が小さい時が"適期"であり、病害が発生する前に散布しなければ効かない農薬の場合は病害の発生前が"適期"であって、適期を過ぎるといくら優れた農薬でも十分な効果は期待できない。
人間の病気同様に、病害虫も早期発見、早期防除が基本だ。
ほ場をよく観察し、病害虫の発生状況を確認するのは基本であるが、毎年発生する病害虫であれば、防除暦などが示す防除時期に確実に散布するようにしてほしい。また、発生が例年と異なる場合には、病害虫防除所の発生予察情報を参考にしたりして、早めの対処を心がけ、予防散布を確実に行うようにしてほしい。

秋冬野菜の主要病害虫と防除対策

◆オオタバコガ

オオタバコガは、盛夏から初秋にかけて被害が大きくなり、ナス科やウリ科、アブラナ科、レタスその他多くの野菜や花きを食い荒らす非常にやっかいな害虫である。オオタバコガは、とにかく発生の初期を見逃さずに確実に防除することが重要だ。そして、発生期間を通じて次から次へと発生してくるので、発生が始まったら発生期間を通じて定期的な薬剤散布が必要だ。特に果菜類では、幼虫が果実に食い入る前に確実に防除できるよう、発生初期からの定期防除が不可欠だ。

効果のある薬剤としては、グレーシア乳剤やフェニックス顆粒水和剤、アファーム乳剤、スピノエース顆粒水和剤、トルネードフロアブル、プレオフロアブル、プレバソン顆粒水和剤の評判がよい。特にグレーシア乳剤は、速効性に優れ、効果が高いと注目されている。

オオタバコガの発生が気候変動などの理由により読めない場合は、セル苗かん注処理法が効果的なようだ。この方法は、育苗期に薬液をかん注処理するだけで、本ぽに移植してからも苗がまだ小さい時期の防除作業が省略でき、初期の被害や苗による持ち込みを防ぐことができる。

キャベツやレタスなどの苗を植え付けてから1カ月近くも効果を発揮するので、生育初期の被害を回避することができる。先に紹介した薬剤のうち、ジアミド系薬剤はセル苗移植ができるので一度試してみると良い。(薬剤系列は一覧表を参照)

主なオオタバコガ防除薬剤一覧

◆ハスモンヨトウ

年に5、6回も発生し、施設内なら越冬もできるので、冬でも発生することもある。多食性で、ありとあらゆる作物を食い荒らす大変厄介な害虫である。時期的には、8~10月の被害が特に大きいので、これからの季節は最重点で防除に取り組んでほしい。

この害虫の厄介なところは、6回ほど脱皮して蛹・成虫となる際に、齢期が進むにつれて薬剤が効きにくくなることである。特に最終の6齢幼虫だと防除が難しくなる上、食害量も多くなるので大きくなる前にしっかりとした防除が必要である。

このため、薬剤がよく効く「幼虫が小さい時期」からの徹底防除が重要で、発生初期からの発生期間を通じた定期的な防除が必要となってくる。

指導機関などの資料で防除薬剤としての評価が高いのは、フェニックス顆粒水和剤、プレオフロアブル、プレバソン顆粒水和剤、グレーシア乳剤の4剤であり、古くからの薬剤では、アファーム乳剤、オルトラン水和剤、コテツフロアブル、ジェイエース水溶剤、ランネート45DF、ロムダンフロアブルなども高評価である。

主なハスモンヨトウ防除薬剤一覧

◆べと病

葉に、黄色~淡褐色(ハクサイ)や淡黄緑色(キャベツ)、淡黄褐色(ブロッコリー)の葉脈に囲まれた不整形病斑をつくり、秋~冬の多湿時に発生が多くなる。

病原菌はべん毛菌類と呼ばれる湿度を好むカビで、感染から発病までの期間が短く、気付いた時には既にかなりの範囲で病気が広がっていることが多い。そのため、ジメジメした時期など発生が多くなる時期には、丁寧に観察し、病斑が見つかったら速やかに防除するようにしたい。

また、どの病害もそうだが、病斑を見つけてから防除するよりも、病気が発生する前の予防的散布が最も効果が安定するので、毎年発生するようなほ場では、発生前から定期的な予防散布を行う方が効率的である。

散布の際には、葉の裏にもしっかりと薬剤が届くよう丁寧に散布し、特に降雨など湿度が増す恐れがある場合などは、早め早めに薬剤散布を行うことを心がける。

薬剤防除は、予防効果に優れ残効も長い保護殺菌剤(ジマンダイセン、ダコニール、ペンコゼブなど)をローテーション散布の基本として、少しでも病勢が進むようなら速やかに治療効果が期待できる薬剤(プロポーズ顆粒水和剤やレーバスフロアブル、アミスターオプティフロアブルやリドミルゴールドMZなど)を使用して、病勢を止めるようにするとよい。

ただし、治療効果が期待できる薬剤は、耐性菌発生のリスクがあるので、防除時期の前に地域の指導機関に確認するようにしてほしい。

主なべと病防除薬剤一覧

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