農薬:防除学習帖
トマト病害虫雑草防除のネタ帳 害虫防除 ハモグリバエ【防除学習帖】第196回2023年4月15日
現在、防除学習帖では、トマトの病害虫雑草の生態や防除法を紹介している。前回からトマトを加害する害虫の防除ネタを順次紹介しており、今回は、ハエ目ハモグリバエ科に属する害虫の生態と防除を紹介する。
1.トマトに発生するハモグリバエ科害虫
トマトへの被害を起こすハモグリバエ科害虫は、トマトハモグリバエ、ナスハモグリバエ、マメハモグリバエの計3種である。体長が非常に小さくてほぼ同じ大きさであり、区別するポイントも外頭頂剛毛基部の色など顕微鏡によらないと判然としない部位にあるので、肉眼で見分けることは難しい。
2.トマトに発生するハモグリバエ科害虫の生態と被害
日本国内では,1990年にマメハモグリバエ、1999年にはトマトハモグリバエの発生が確認された。どちらも成虫の体長は2 mm程度で、雌成虫は、発達した産卵管で葉面に穴をあけ、穴ごとに1卵ずつ産卵し、その際に出る汁をなめる。雌は1日に何回も摂食・産卵行動をとるため、多発圃場では葉面上の小斑点が無数にみられるようになる。
雄成虫は産卵管が無く、葉に穴をあけることができないので、雌のつくった穴で汁液をなめる。
被害は、羽化した幼虫が葉をトンネル状に加害して、絵を描いたようになるため、別名絵描き虫とも呼ばれる。食害されたトマトの葉は、活力を低下させ、トマトの生育に影響を及ぼす。
3.防除法
ハモグリバエ類は、羽化した幼虫が被害を及ぼすため、ハモグリバエをトマトに近づけさせないことが重要である。侵入されたとしても、産卵させないように予防的散布を徹底するとともに、害虫密度を下げる効果のある耕種的防除を組み合わせる。
(1)耕種的防除
ハモグリバエ類は、発見したらできるだけ早く駆除する必要がある。
農薬による予防防除が基本になるが、以下に示す耕種的防除を組み合わせるとより効果的である。
ア.施設の側窓や出入り口に0.4mm目以下の防虫ネットを張る。
ハモグリバエの侵入を防ぐため、ハウスの開口部を防虫ネットで塞ぐようにする。
ただし、目が細かいと換気機能が低下するので、施設内の温度上昇には十分に注意する。
また、黄色の粘着シートを使用することで捕殺効果によってある程度の密度低下が期待できる
イ.その他
紫外線カットフィルムによる忌避効果や太陽熱消毒によるハウス内蒸し込みなどの方法があるので、適宜試して頂きたい。被害葉は見つけ次第速やかに取り除くこと。
(2)薬剤防除
ハモグリバエに効果のある作物別登録農薬一覧は別紙のとおり。
ハモグリバエに安定した効果のある薬剤は、オルトラン・ジェイエースなどの有機リン系、IGRのトリガード液剤(シロマジン)、スピノシン系のスピノエースやアベルメクチン系のアファームなどである。
有機リン系やカーバメート系、ネオニコチノイド系には、地域によっては抵抗性が発達し効果が期待できない場合もあるので、抵抗性の発達状況を指導機関等に確認するとともに、系統の異なる薬剤をローテーションで使用するなど、抵抗性発達対策を確実に行ってほしい。
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