農薬:防除学習帖
トマト病害虫雑草防除のネタ帳 害虫防除 土壌線虫【防除学習帖】第197回2023年4月22日
現在、防除学習帖では、トマトの病害虫雑草の生態や防除法を紹介している。前回からトマトを加害する害虫の防除ネタを順次紹介しており、今回は、ティレンクス目に属する土壌線虫の生態と防除を紹介する。
1.トマトに発生する土壌センチュウ類
土壌センチュウ類は、土壌に生息する微小な線形動物で、体長1mm弱の細長いひも状で、触手や付属肢を持たない、体節構造もない基本的に無色透明の微小生物である。
農業生産となるのは植物寄生性の線虫で500種ぐらいいると言われ、作物に寄生して生育障害などを起こす。被害の出方(症状)から、ネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウ、シストセンチュウに分けられるがトマトに被害を起こすのはネコブセンチュウとネグサレセンチュウである。
2.土壌センチュウ類の被害
根の活力が著しく低下するため、株全体のしおれ、生育抑制を起こし、その結果、収量の減少を起こす。また、根への侵入の際につけられた傷口から土壌病原菌が侵入し、青枯病など土壌病害を併発させるといった被害も起こす。一世代に要する日数は夏季であれば30日程度であり、1作期に数世代を経過する。このため、増え始めると一気にセンチュウ密度が多くなるので、前作で少しでも被害があったら、次作ではセンチュウの防除をしっかりと行う必要がある。
3.土壌センチュウ類の防除
土壌センチュウ類は、土壌中や被害残渣にともなって生息しているため、植え付ける前の防除が不可欠である。その方法には、耕種的防除と農薬を使用する化学的防除の2種類があるので、これらを組み合わせて防除すると効率良く防除できるようになる。
(1)耕種的防除
①連作をさけ、土壌センチュウ類が好まない作物との輪作をする。
②被害を受けた根部などは丁寧に取り除いて圃場外に出して処分する。
③堆肥を投入して土壌の微生物層を豊かにすることで、センチュウの増殖を抑える。
④抵抗性品種の作付けを行う。
⑤対抗植物を活用する。(コブトリソウ:ネコブセンチュウ、マリーゴールド:ネコブセンチュウ)
⑥太陽熱消毒・土壌還元消毒の実施
(2)化学的防除
①殺センチュウ剤(粒状)の利用
所定量の粒剤を土壌に均一に散布してよく混和して使用する。これらは接触型といって、薬剤にセンチュウが触れることによって効果を現すので、センチュウが薬剤に確実に接触するように粒剤を土壌内で均一に処理することが最も重要だ。また、センチュウ密度が多いと薬剤に接触しない確率が高くなり効果が低くなる傾向にある。センチュウ密度が高く、被害がひどい場合は、一度、土壌消毒を実施し、耕種的防除法と併用する。(殺センチュウ粒剤の主な商品名:ネマトリン粒剤、ネマキック粒剤、バイデート粒剤、ラグビー粒剤等)
②土壌くん蒸剤の使用
土壌くん蒸剤は、10aあたりの注入液量が決まっていて、それを30cm千鳥間隔で2~3ml程度ずつ点注していくのが一般的だ。点注の方法は、土壌灌注器を使って1点1点人力で差し込んで行く方法や、乗用トラクターに装着したアタッチメントによって注入と被覆を同時にこなす自動灌注被覆機械もあるので、利用が可能な場合はできるだけ活用する。トマトの場合施設栽培が多くなると思うので、栽培規模にあった処理方法を選ぶようにする。
ガス被爆に備えて、防護服とガスマスクの装着が必須になるので、通常の作業よりも体への負荷が大きくなる。くん蒸剤は、ガス化した有効成分が効果を発揮するので、基本的に処理後に被覆をしてガスを充満させ、所定のくん蒸期間終了後に被覆を取って必ずガス抜きをする。ガス抜きが不十分な場合、薬害を生じる恐れがあるので注意が必要である。
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