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農薬:防除学習帖

みどり戦略に対応した防除戦略(14) トマト植付前防除のための土壌処理剤【防除学習帖】 第220回2023年10月14日

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令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にKPIをクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上で、みどりの食料システム法のKPIをクリアできる方法がないかを探ろうとしている。

前回から、農薬の使用量も多く、出荷量も多いトマトを題材にして、どんなリスク換算量の低減方策があるのか探っており、まずは、トマトの防除タイミング(場面)ごとにリスク換算量を減らす方策にどんなものがあるか検証している。
検証する防除タイミングは、①苗の本圃への植付前、②育苗後半~植付時、③生育期の3つであり、今回は、植付前の防除で土壌消毒に次いで大きな役割を果たす土壌処理剤(粒剤、粉剤)について検証する。

1.主な土壌処理剤の10aあたりリスク換算量

トマトに使用する土壌処理剤は、土壌線虫剤の粒剤タイプ、水和剤タイプのものがある。
いずれも、土壌に全面に均一に散布して、よく混和(耕耘)することが処理方法の基本だ。
これらの薬剤は、土壌にいる病原菌や害虫に有効成分が直接触れるように、いかに均一に処理できるかが防除の成否の鍵である。
これら土壌処理剤の10aあたりのリスク換算量を下表に試算した。

主要土壌消毒剤の10aあたりリスク換算量試算

2.みどりの食料システム法対応の検討

トマトで使用する土壌処理剤は、ほぼ土壌線虫対象の殺虫剤である。その処理法は全面土壌混和処理であり、前述のように土壌線虫が有効成分に接触するよう、良く混和して土壌中に均一に有効成分を分散させることが効果を安定させるカギである。

(1) 薬剤の処理量を減らす
これは一番わかりやすい方法である。登録内容は、土壌処理Hは15~20キログラム/10a、土壌処理Oは20~50キログラム、土壌処理Kは20~30キログラムなので、今まで最大量を使用していた場合に処理量を最小に減らせば、土壌処理Hはマイナス25%、土壌処理0はマイナス60%、土壌処理Kはマイナス33%となる。

ただし、処理量を減らす場合は、土壌線虫密度に注意する必要がある。土壌線虫密度が多いと最小薬量では抑えきれないケースがあるからで、前回記述した土壌消毒剤とのセットで使用するような場合であれば、土壌消毒剤処理直後の場合のみ最小量にするといった工夫が必要である。

(2)リスク換算量の少ない土壌処理剤に変更する
土壌処理剤は有効成分含量が数%と小さく、リスク換算量も比較的少なく、大きな影響はない。あえて言えば、土壌処理Kの最大量を使用していた生産者が土壌処理Oの最大量使用に切り替えるだけで、マイナス86%となる。

また、リスク換算量がゼロの生物農薬である土壌処理Pに切り替えれば、今まで使用していた土壌処理剤のリスク換算量を一気にゼロにできる。ただし、化学農薬よりも効果が不安定な場合もあるので、線虫密度や処理条件を十分に確認して使用する必要がある。

(3)リスク換算量の無い土壌消毒法に切り替える
リスク換算量がゼロである太陽熱消毒、土壌還元消毒、蒸気消毒などに切り替えることでリスク換算量をゼロにできる。ミドリ対応のみを考えれば、一番リスク換算量削減効果がある方法であるが、日照不十分により防除効果が不足したり、燃料代が嵩み生産費が多くなったりといった別のリスクもある。

(4)土壌処理剤と土壌消毒法(土壌消毒剤、リスクゼロの土壌消毒法)をローテーションで使用する
土壌処理粒剤は、線虫の密度が低い時の効果は高いが、発生が多くなると取りこぼしが発生し、効果不足と密度が増加を起こす場合がある。このように一旦増殖した線虫を減らすには、土壌消毒法を処理して、一旦土壌中の線虫の量をリセットしてやる必要がある。この土壌消毒法によるリセットは、土壌処理粒剤を数年間使用して万が一線虫の密度が増え過ぎた場合に限り、土壌消毒法を1回処理してリスクを減らすようにするとよい。
例えば、土壌線虫粒剤の使用を2年続けたら、土壌消毒剤を1回使用して線虫密度を低下させるといった具合である。それによって線虫密度が下がるので土壌線虫粒剤の効果が復活する。

この例では、土壌消毒剤を3年間使用する場合に比べ、土壌線虫粒剤(成分1.5% リスク係数1)の20キログラム/10aを2年間使用して3年目に土壌消毒剤を1回使用するローテーション体系を検討すると、前者のリスク換算量18,390gに対し、後者は6,730gと、3年間トータルのリスク換算量を実に63%も減らすことができる。

以上、あくまで土壌処理剤のみで削減する場合のケースを検証してみた。水稲と同様に防除効果を優先するのは大前提であり、代替剤が無いものについてはそのまま残し、変更が可能な場合のみ薬剤の変更や散布方法の変更を検討する必要がある。

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