農薬:防除学習帖
みどり戦略に対応した防除戦略(25) 摘果期の病害防除【防除学習帖】 第231回2024年1月6日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にKPIをクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上で、みどりの食料システム法のKPIをクリアできる方法がないかを探ろうとしている。
現在、散布回数の多い果樹を検討するためナシを題材に検討を進めている。果樹も水稲と同様に防除暦が整っている作物ではあるが、暦の内容が地域によって異なるため、一律的なリスク低減方策を示しにくい作物であることから、栽培ステージごとに一般的なリスク換算量低減方法の検討を試みようとしている。
今回は、摘果期の病害防除について検証してみる。
1.摘果期の病害防除
この時期に発生する主な病害は、黒星病、赤星病、芯腐れ症、疫病、輪紋病、炭疽病であるが、基本的に黒星病、赤星病対策を中心に実施する。輪紋病対策は、SDHI含有剤剤やQoI含有剤など、同時防除が狙える薬剤も多いので、発生状況に応じて薬剤を選択する。疫病などその他の病害については、発生状況に応じて薬剤を追加する。
2.摘果期の病害防除の実際
以下にモデル防除暦を示したが、この時期に発生する病害は、栽培後期の発生状況や収量・品質に大きく影響するので、過度にリスク換算量を気にすることなく、防除暦に従って、しっかりとした防除を行うことを念頭に置いた方が良い。
3.リスク換算量削減方策
この時期も黒星病や赤星病の果実観戦を防ぐために重要な時期であるため、基本的に防除効果を落とさないように、効果最優先で薬剤を選ぶようにする。
その上で、あえてリスク換算量を減らすなら次のような方法が考えられる。
(1)薬剤防除
① 作用性の異なる薬剤の中からリスク換算量の少ないものを選んでローテーションで使用する。
② 希釈倍数が複数ある場合は薄い方でも十分に効果があると判断される場合に限り選択する。
③ 1剤で複数の病害に効果のある薬剤を基本防除に組み入れる。
(2)耕種的防除防除
摘果作業で、病害の感染が疑われる幼果を確実に取り除くようにする。
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